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黒いバッグ Ⅲ

 琴美はすぐさま下校した。下校している間じゅう、琴美はこれから自分が死ぬのか、だとしたらそれはいつなのか、どうしたらそれを避けられるのかということを考えていた。


 琴美は家に帰ると、琴美は洗面台の前に立った。そして手を洗うために蛇口をひねった。


 すると蛇口から赤い液体がほとばしり出た。琴美は慌てて蛇口を閉めた。すると余計に赤い液体が出てくる勢いが強まった。琴美は反対に閉めてしまったのかと思って反対に回した。しかし液体はさらに勢いを増した。


 赤い液体からは金臭い、嗅ぎなれたにおいがした。それは血だった。血は洗面台にたまっていく。どういうわけか流れていかない。排水口が詰まっているのか。


 血は洗面台からあふれ出て、床に流れ出ていった。流れ出ていった血は床に血だまりを作る。血だまりの上になおも赤い液体が流れ出ていき、床は血で満たされる。血の水位がどんどんと上がっていく。いつしか、くるぶしがつかるほどの深さになっていた。


 血だまりの水面に何かが浮かんでいた。それは黒く、小さかった。琴美ははじめ、それがゴミか何かだと思った。


 そのごみだと思われていたものがびくびくと動き出した。それはヒルのようなものだった。よく見ると、それは一つだけではなく、いくつも浮かんでいた。


 琴美は足元を見た。足元にも、いくらかのそれがいた。琴美が見ていると、血だまりの中から、さらに浮かび上がってきた。


 それが琴美のむき出しの足に触れた。それはぶよぶよとした感触だった。それが琴美の足にくっついた。琴美は悲鳴を上げた。手で足首のあたりについたそれを払いのけた。それからまた別のやつがいくつも、いくつもくっついてきた。琴美はがむしゃらに手を振ってそれをはがした。すると右手にそれがくっついた。琴美は右手についたそれを左手でつまみ、はがした。


 それから足を見ると、ヒルのようなものが、足じゅうにくっついていた。さらに、ズボンの中にも、いくらかぶよぶよとした、小粒のものが入り込んでいる感触がした。


 琴美はドアに向き直り、ドアノブをがむしゃらに揺らした。しかしドアは開かない。琴美はドアをたたいた。


「開けて!誰か、開けて!開けてったらああぁぁぁぁ!」


 琴美は癇癪を起し、叫び声をあげた。琴美の目には涙が浮かんでいた。手が痛くなるのも構わず、力いっぱい戸をたたいた。


 ヒルのようなものが体の中にまで入り込んでいるのが、肌に伝わる感触で分かった。背中のあたりでうぞうぞと動き回っているのが特に気持ち悪かった。


 首筋のあたりで、何かに刺されたような痛みを感じた。慌てて手をそこにやると、ぶよっとしたものに触れた。琴美はそれをはがし、血の中に捨てた。それでも痛みが治まらず、琴美は首筋に手を触れた。すると首筋がひどく濡れているのに気が付いた。琴美は手を見た。手は血で濡れていた。


 体中のいたるところで、刺されたような痛みを感じた。琴美は壁に体を寄せ、のたうち回った。壁と体でヒルのようなものを挟み込んで、つぶした。けれども痛みは治まらない。


 琴美はくらっとするような感覚を頭に感じた。視界が真っ白な光に包まれた。琴美はしゃがみ込んだ。ひどくけだるくて、不吉な危機感を覚えた。何も考えられなかった。いつしか、琴美の思考は停止していた。


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