入学式一日前の出会い
桜が咲き誇る頃に卒業し、散る頃には入学する。
そうして新たな学び舎へ来るのだ。
「ここが新しい学校……きれい」
地元よりも頑張って都市部の学校に来てよかった。
ここで学んで医学部に入るんだ!
「ん? キミは~新入生か!?」
「え?」
振り返ると制服を着崩して、髪をだらしなく下げた女がいた。
瞬間の見た目はダサい人。
「ねぇねぇ! キミは新入生でしょ!」
「そ、そうですが……先輩ですか?」
「そーそー。キミの先輩にあたるのだよ!」
こ、こんな人が先輩……。
も、もっとたくましい人で頼りがいのある人たちばかりと思っていたのに。
「ところでキミ。入学式は明日だぞ?」
「えッ!?」
「携帯で日付見てみ?」
そう言われてすぐに確認する。
三月三十一日だった。
やってしまった……。
完全に間違えてしまった。
「結構ドジなのな! ぷっくく!」
くッ。
こんな先輩に笑われるなんて。
「でも先輩も来ているじゃないですか!?」
「ウチは部活と勉強があるからな。そりゃあ、学校に来るさね」
うッ……ごもっとも。
「まぁ、なんだ。こういう機会もあんまないだろうしウチの部活を見ていきなよ。これで一人確保できるし。しッしッしィ~」
「願望聞こえてますよ~」
「まぁ、とりあえず入りたまへ~!」
無理矢理、先輩に入れられる。
部活か……。
一体この先輩はどんな部活しているんだ……?
科学部? 文芸……いや、同人誌とか書いていそう。とにかく想像つかない気味悪い部活だろう。
「さぁ着いたぞ。入りたまへ!」
「えっ……ここって」
「音楽室だぞ? あ、もしかして変な部活考えていただろ。科学部や同人同好会あたりか?」
「うッ……」
「まぁいい。よく言われるからな」
まさか、吹奏楽部もしくは声楽部だったとは……。
一体どんな……。
先輩が取り出したのはフルート。
構える姿は森の中の魔女? を連想させるのには十分でそこから漏れ聞こえる音色も小川が静かに流れる様に耳に届いてきた。
「ふぅ……どうだ?」
「す、すごいです!」
「吹演部ってやってるんだよねぇ」
「それならもっと身だしなみに気をつけたらいいんじゃないんですか?」
「え~。かったるいし、まだ学校休みだし! 部活はまだウチだけなんだよ。チラッ」
「入るのは、自分で考えます」
「入ってもいいんだょ~!」
これが先輩との本当の出会い。だとはつゆ知らず。
明日の入学式を迎えるのだった。




