7話 努力の果て
俺は外で寝ていたはずだった。なのになぜなんだ?
ここは見覚えのある部屋……そう、サナの部屋だ。もしかして俺はリ〇ロ見たいな死に戻りの能力があるのか?
昨日見たはずのココアと食パンだ。まるで変わりがない。
「……おはよう、なんて顔してるの?さっさと食べれば?」
「おっ、おう……」
展開が昨日とは違う今日はサナがいる。ということは死に戻りではないのか?
「昨日はなんであんな所にいたの?」
「えっ?なんでそれを知って……」
「私が見つけたからよ。あなたを……あんな危ないところに置いておくわけにもいかないからね」
まさか、サナがここまで俺を運んでくれているとは思わなかった。その線で全然考えてなかったな。
「ありがとう。素直を助かったよ」
全く珍しくも何ともない言葉だが、サナにとってはとても珍しい言葉のようだ。少し照れているのがわかる。なんだそんな顔もちゃんと出来る女の子じゃないか……。
「私にそんな言葉をかけるなんてあなたってほんと分かってるわね……」
「変わってなんかないぞ。ていうかそうやって笑顔ならかわいいぞ」
「ッ……!バカッ!!」
さっきまでは少しだけ赤くなっていた顔が今は耳まで真っ赤になっていた。ちゃんとその表情を見せればみんなも誤解しないと思うんだけどなぁ。
学校の手続きもまだ時間がかかるみたいだし、どうするか。そう言えばサナはいつも何をしているんだろう?
「この後、私は修行しに行くけど……着いてきてみる?」
「いいのか?じゃあ、ありがたくそうさせてもらう」
サナからそんなことを言われるとは思わなかった。そんなにありがとうと言われたのが嬉しかったのかもしれない。まだ、顔が少し赤いままだ。
「行くなら準備して、もう出るから」
「あぁ……」
サナはいつもの日本刀のような刀をもって出ていこうとしている。つかさは特に持ち物がなかったのでいつものスーツの格好だけでサナについて行く。
「……あなたはガードラスタに行くって言ってたわよね?でも、何も覚えてなくて行くより少しでも覚えて行った方がいいわよ。だから私が教えてあげるわ」
「ありがとう。助かるよ」
ありがとうなんてそんなにたくさん言われたの初めてよ──
「ん?何か言ったか?」
「……何も言ってないわ」
確かに何か言ったんだけどな……女の子にそれ以上突っ込むのはダメだよな。また、若干顔が赤くなってるんだけどなぁ。
「着いたわよ。ここが私の修行の場所」
「ここが修行の場所か……何も無いけどどうするんだ?」
「もう時期分かるわよ」
ガサガサッ!
草むらざわついている。そこに何かいるのか?目をよく凝らしていると急にバッっとかなり大型のライオンが飛びかかってきた!
「うわっ!なんだのこのライオン!?デカすぎるだろ!?」
「私の後ろに居て」
ライオンはサナに飛びかかり腕を食いちぎりにかかってきた。だが、サナはそれを読んでカウンターをとる形になっている。なんで、先の動きが分かるような動き方が出来るんだ?
……気がつくの決着は一瞬でついていた。
サナの戦い方は、水の流れるごとく可憐で……そして美しくかっこよかった。
この戦い方そしてその礼儀正しさ……こんなことが出来る子がなぜみんなから批判されるかがわからない。外枠に囚われすぎてわかっていないだけじゃないか。彼女という子を……
「すごく綺麗で美しかった。どうやったらそんなことができるんだ?」
「……みんなに認められるようにがんばろうとしたらこうなったの。でも、認めてくれなかった……」
なんで、そんな悲しそうな顔で笑うんだ……。そこまでして強くなったのに認められないなんて……理不尽すぎる。
「なんで、あなたはそんな悔しそうな顔しているの……?」
「こんなに頑張って認めてもらおうとしているのに……それを全部中身も見ずに決めつけて……そんなの悔しいに決まっているじゃないか!!サナの努力を無駄だという奴らが許せない!!この戦い方……技を見れば誰だってわかるはずなのにッ……!!!!」
そうだ。そんなことがあるわけが無い。努力が認められないなんてあってはいけないんだ。
「……あなたってほんと不思議な人ね」
サナは今まで見たことない優しい微笑みでこちらを見ていた。太陽のように暖かみのあるそんな表情だった。