6話 サナと…
「……サナ……サナ起きなさい……」
誰かの声が聞こえてくる……聞きを覚えが合って優しく包みこまれるような暖かい声……
「……お父さん?」
ニッコリと微笑むその笑顔に私まで笑顔になる。
「……ごめんな」
そう言って急に遠のいて行くお父さんを追いかけようとするが体が動かない。
「お父さん……!……お父さん!待って!」
「……ハッ!」
見渡すと辺りは日が差し込み明るくなりかけていた。
こんな夢あの頃以来だ。
「朝から不快だわ……」
それもこれもすべてこの男のせい……この男がお父さんに似てるから夢も見る……。
「なぜ、家に上げてしまったのかしら……」
サナは自分の選択に後悔していた。でも、今更出ていけなんて言えない……。
「起きる前に出ていこう……」
身支度をし、朝ご飯の準備をした。今日は、パンとココアだ。
「……仕方ないからあいつの分まで作ってあげるわ」
流石に家に上げてしまったからにはご飯も用意してあげなきゃいけないわね。同じご飯でいいはず。
サナは根は真面目なのでそこまでしなきゃないけないという謎の使命感にかられた。
「……勝手に食べればいいのよ」
刀を持っていつもの支度はもう出来た。後は出るだけだ。
「…んっ」
「起きそうね……」
つかさが起きそうな事を確認して早足で家を出ていく。今日は外が寒い。厚着をしてて正解だった。
ヨハンに負けてからずっと日課になっている草原での動物狩りにでる。動物狩りと言っても殺す訳ではなくほとんど寸止めだ。動物たちの野生的な動きはかなりのトレーニングになる。
「ようやく着いたわね」
大分拓けたこの自然豊かな草原がサナのトレーニング相手の住処となる場所だ。
「今日は寒いからいないかもしれないわね……」
今日は剣術の練習はできないなと思ったその時だった。後ろからの鋭い視線にサナは刀を向けた。
草むらがザワザワと動きそこから獣が飛び出してきた。
「くっ……!」
力負けて後ろにのけぞってしまう。それもそのはずだ。相手の大きさは2メートルを超える大型のライオンだ。
体制を立て直し相手の出方を伺う……野生との戦いは本能的な攻撃をいかに読み取るかそれが大事になってくる。ヨハンの攻撃も野生的な攻撃で読み取ることができずに負けてしまったのだ。
「ガウッ!」
先に攻撃を仕掛けたのはライオンの方だった。即座に首元の急所を大きな牙で狙いに来ている。それを刀で受け止めた。
「くっ……!このままでは先程と同じになるわね……ならば!」
サナは一瞬のスキを突きライオンの牙から刀を滑らせて抜きカウンターを仕掛ける体制に入った。
壱ノ太刀 陽炎────
その太刀はライオンの体を滑るようにして喉元をえぐりにかかる……!
喉元に届く──そんなぎりぎりの距離
「ピタッ……」
サナは刀を寸前で止めた。
「……今日は私の勝ちね」
「ガルルッ……」
ライオンはとても悔しそうな声だった。だが、サナに喉元を撫でられると途端にの喉をゴロゴロ鳴らし頭をすりすりと擦り付け始める。
「もー……くすぐったいじゃない」
サナはダメよーといいながらも笑顔だった。街の誰にも見せないようなとびきりの……そう、唯一心から笑顔になれる場所がここだった。
その後も何本かライオンと戦うと夕暮れが訪れた。
「……今日も1日ありがとね」
「ガウッ!」
ライオンとお別れの挨拶をして、自分の家への帰路にたつ。
「帰ったらあいつが居るのね……ほんと、お父さんに似てて嫌ね……思い出しちゃう……いい思い出も……悪い思い出も……」
複雑な気持ちがぐるぐると頭を回る。気持ちを落ち着けようと深呼吸をする。
「よし……落ち着いた」
気持ちを立て直して進む。草原を抜け、街につく頃にはもうあたり暗くなっていた。
早く帰ろうそう思った時だった。
「……なんでこんな所で寝てるのよ……」
サナが見たのは、道の隅で寝ているつかさだった。
「もう、ほんと世話が焼けるわね……」
やれやれと思いながらもつかさを担ぎ、家に連れて帰る。
「普通、女がこんなことしないわよ……」
苦笑しながら家に着き布団に寝せた。
「……お休みなさい」
こうして、サナの1日は終わりを迎えるのだった。