3話 ソードシア学園
ソードシアに行く道の途中でずっとサナのことについて考えていた。あんなに学校を拒否するなんて想像もしていなかった。
彼女に向けられていた視線にも関係しているかもしれない。そう考えていた。
そうこうしている間にソードシア学園と書いてある看板の前までやってきた。
「ここがソードシア学園か……思っていたより随分とでかいな」
それもそのはずだ。ソードシア学園はこの街の3分の1を占めている。西洋風の作りで出来た建物に校庭は剣術の練習をするような場所まである。
「まずいな、どこに行けばいいか全くわからん……」
行き場所が分からずに迷っていると不意に後ろから声をかけられた。
「きみきみ、こんなところでなにしてるの?もしかして……新入生!?でも、変な服装をしてるね?」
目をキラキラと輝かせ近すぎるぐらい近ずいてきた。スーツ姿に興味があるようだ。吸い込まれそうなぐらい青い瞳に赤い髪の少年だった。
「あっ、いやそういう訳じゃないんだが……
ちょっと調べたいことがあってきたんだ。学校長に会わせてほしいんだ」
「なんだ……新入生じゃないのかぁ……分かったちょっと聞いてみるよ」
青年は残念そうな顔をしていたが話は聞いてくれるようだ。
「ありがとう。助かるよ」
「あぁいいよ、ちょっと待ってて」
青年はそういって走っていった。
「……それにしても広い土地だな。」
改めてその広さを実感していると、だんだん人が増えていることに気づいた。
どうやら授業が終わったらしい。通る生徒一人一人がつかさを見ては不思議そうにしている。
「確かに、こんな所に今まで見たことないようなやつがいたら気にもなるよな」
その不思議そうに見ている生徒たちの間から走ってやってくる人がいた。あの青年だ。
「良かったな、話は聞いてくれるって言ってるよ!案内するからついてきな」
「そうか、ありがとう。えーと……」
「あっ、自己紹介してなかったね。僕はヨハンだ。よろしくな!」
「俺は真中つかさだ。よろしく」
ヨハンの眩しいくらいの笑顔に咲がいればこれくらい笑顔になれたかもなと思った。
……
つかさは大きな扉の前に立っていた。どうやらここが学校長室のようだ。
コン、コン
「学校長、連れてまいりました」
「……入りたまえ」
「失礼致します……」
扉の向こうには二十代くらいに見えるキリッとした男がいた。
「君かね。私に用があるという人物は……」
「はい。真中つかさといいます。よろしくお願いします」
「私はルミナスだ……よろしく。それで用となんだね」
「この国に何か異変が起きているのか?」
張り詰めた空気を感じる……ルミナスから放たれるその異様なまでの気につかさは思わず息を飲んだ。
「お前はどこまで知っているんだ……?」
「くっ、詳しくよく知りません。教えてもらっただけなので……」
「信じていただけないでしょうが、ヘーゼルという神に教えていただきました。」
「!!……なんだと!あの女神ヘーゼルか!?」
ルミナスは驚きを隠せなかった。実はルミナスにもヘーゼルの声が聞けたのだ。ヘーゼルはこの国に救世主が訪れると言っていた。
「……なるほど。お前がこの国の救世主か……」
「さっきから異変やら、女神ヘーゼルやらどういうことですか?この国に何も起きてないでしょう?それに女神ヘーゼルも神話じゃ……」
ヨハンはそんなこと聞いたことないというような顔をしていた。
「んむ……ヨハンには話して良いかもしれんな……ヨハンよ他人に話すことは許さんぞつかさとやらお前もそうだ」
「……わかりました」
二人は息を合わせて言った。
「まず、この国には居ないはずの人物が存在し始めたのが始まりだ。それは主にこの三大学校のワシら学校長に襲いかかりにきた……最初はただの暗殺者かと思ったのだが……最後に襲ってきたのはなんと各々の親だった。
最後に残した言葉が『2年後に闇の世界へ誘う』ということだ。親はみな昔に亡くなってるんでな」
二人は息を飲んだ。
「つまり、死者の世界になる……そういうことですか?」
ルミナスは静かに頷いた。
「……これは戦うしかないのだ。その為にヘーゼルはお前を呼んだのだろう。頼むつかさよ。我々と一緒に戦ってくれ!」
「……わかりました。力になれるか分かりませんが……」
つかさは不安だった。戦闘などの経験は一度もなかった。だが、咲のためにはやるしかなかった。
「つかさ。お前には1年間学園に通って鍛えさせてもらうそれでもいいな?」
「はい……わかりました」
「よし、では適正検査をする」
つかさは大きな鏡の前に立たされた。
「この鏡は立ったものの適性を見抜きどの学園に合っているのか表してくれる。剣ならここソードシア学園、盾ならガードラスタ学園
剣と盾両方ならツインバレル学園だ。」
鏡を見つめると段々もモヤがかかり出した。
しかし、モヤが消えても何も写し出されることはなかった。
「うむ?おかしいな…もう1度立ってくれないか?」
言われるままに鏡の前に立つが先程と同様にモヤがかかり消えては何も写らなかった。
「やはり、イレギュラーだな……なら、お前はどの技術を学びたい?」
「ソードシア学園に来るなら僕が剣を教えるよ!」
ヨハンは力強くそう言った。
しかし、つかさの答えはもう決まっていた。
「ヨハン……ごめんな。ルミナスさん。俺は盾の技術を学びたいです……もう、誰かを失うのは懲りごりですから。守りたいものを守れる力がほしいです」
「そうか。では、ガードラスタにはそう伝えておこう」
「ありがとうございます」
……
「ヨハン、ありがとう」
「なーに、礼には及ばないよ」
もう辺りが夕暮れに染まり始めていた。
校門に生徒達が帰る姿がちらほらと見える。
そんな中複数人の生徒がこちらに向かってきた。
「ヨハン先輩!今日、私達と帰りませんか?」
どうやらヨハンの後輩達らしい。
「いいよ!帰ろうか!つかさ!君も一緒に帰らないか?」
「俺はいいよ。居候だからあんまり迷惑かけられないし」
「どこに居候してるんだい?」
「サナところ」
そう言うと、ヨハンの後輩達が『えっ』というような顔をした。
「やめておいた方がいいですよ。殺されますよ」
後輩の人がそういうと周りの後輩はひそひそとしている。
「どういうことだ?」
「……大罪人なんだ。彼女の父は」
ヨハンは悲しそうな顔をしてそう言った。
「それはサナは関係ないじゃないか!」
「確かに関係ない。でも、周りから見たら父か大罪人だから子も何かしでかすそう考えるんだ。僕は彼女に学園に来て欲しいが周りの目を気にして来ないんだ……」
「……人の心理か。複雑だな」
つかさは何も考えずに学園まで一緒にきてくれと言ったことを後悔していた。
何かあるのだろうと思っていたがそんなに大事だとは思いもしなかった。
そして決意する。
「俺だけでもサナの味方になってやる」