1話 死と始まり
人々が暮らしているこの世界で今日もビジネス街を歩いている男がいた。
「今日も1日あの会社で働かなきゃいけねー のかよ…」
スーツ姿の男は毎日が憂鬱だった。仕事の才能はあるが、なんせ会社がブラック企業だ。やる気が無くなるのも当たり前…
その上、1番親しい仲である幼馴染が事故で亡くなってしまった。
「もう、こんな世界にいたくないな…あいつ
のいない世界なんてなにも面白くない…」
そうこの世界にはもう咲はいない…
〜一年前〜
咲はいつも突然だなぁ…今回も突然天体観測をしようと言い出して、しかも今日いくと言い出した。
理由を聞いてみれば 、
「今日は星が綺麗な日だから!」
と言ってもう準備もして俺の家にやってきた。仕方ないなぁ…と言って天体観測に向かった。
しかし、この判断がのちのちつかさが後悔することになるとは思ってもいなかった。
「つかさー早くー!」
「そんなにいそぐなよー!咲ー!」
「競走なんだから走らないと!」
「競走って言い出したのは咲のほうだろ?俺 はするっていってないぞー!」
「あははー!早く早くー」
二人は1番星の良く見えると言われている丘を目指していた。そこは本当に綺麗にみえるそうだ。
「やっと着いたね!もうすぐ暗くなるからす
ぐにみえるようになるね!」
着いたのは丘の頂上辺りを見回す事の出来る場所だ。
「ここは危ないから見たらすぐ帰るんだぞ」
咲は「わかってるよー」と生返事だったので分からせるように言おうとしたが先に言葉を発せられてしまってその言葉に反応してしまう。
「つかさ!みて!星が見えだしたよ!とって も綺麗だよ!」
見るとそこには無数の星が輝いていたその星たちはさながら宝石のように眩かった。
咲は手を伸ばし届かないかなー?という感じに星に手を伸ばている。
その姿につかさはクスッと笑った。
「あー!今、子供っぽいって思って笑ったで しょ?」
「思ってないよ」
「嘘だー!絶対思ってた!」
口をぷくーと膨らませている姿をみて、またつかさは笑った。
「さて帰るか」
「そうだね…星とっても綺麗だったし満足だ よ!」
咲の満足そうな顔を見ていると来て良かったなという気持ちになる。
丘を降り暗い夜道を歩き出した。咲はまた「競走だー!」と言っていたのでそこは全力で止めた流石に夜は危なすぎる。
冗談だよと言っていたがほんとに冗談だったのだろうか?
「また今度一緒にいこうね」
笑顔でそう言う彼女に返事をしようとしたまさにその瞬間だった…
ものすごいスピードを出した車が二人に向かってきた。
逃げ場は二人にはどこにもなかった……
「危ない!」
ドン!!!
鈍い音が響き渡った……
それからつかさが目を覚ましたのは一週間後の事だった……
咲はもういなかった……
つかさが目覚める二日前に息を引き取ったらしい。
「なんで…なんで俺を庇ったんだよ!」
二人をはねた人物は既に捕まったらしい。
だが、つかさにはそんなことどうでもよかった咲がこの世にはいない…その現実に耐えられなかった。
何度も何度も自分が死ねば良かったのにと恨み自分を傷つけ時には自殺も試みただが、死ぬことはできなかった。まるで咲が生きろと言っているかのように…
「分かったよ、そこでお前の所に行かせてくれないならお前の分まで生きてやるよ…」
その後、現実から立ち直るのに実に一年かかった。そして今に至る。
「あれから1年かよ早いな、うじうじ言って たらまた前に戻っちまう。でも、やっぱりあいつがいて笑ってくれれば良かったな…」
そんなことを考えながら1日を過ごした。
……
「…て…おき…起きて!」
誰かの呼ぶ声がする…だが、誰だかわからない。
「誰だ?」
目の前にいるのは耳に特徴があり、金色で長い髪をしたの美少女。見たことを声を聞いたこともない人だ。
「お前はいったい…」
そう言うと、その少女は悲しむような顔で話し出した。
「あなたは大切な人を失ったんですね?私と同じく……だったら、大切な人にもう1度会いたいと思いませんか?」
突然の出来事につかさは口をあけ、驚いている。
「急にそんなこと言ったら誰だって驚きますよね。驚かせてすみません。」
少女は申し訳なさそうに頭を下げた。
もう1度、咲に会える?それは本当?半信半疑だったがそれでも、会えるなら可能性のあるほうにかけてみたい。
「その顔会いたいという顔ですね。ただし条件があります。私の世界に来てくださ
い!!」
「私の世界?なんだよそれ?異世界ってことか?」
「この世界ではそういうことになりますね」
「咲に会えるならどこだって行ってやる!どんな世界だって!」
咲に会いたいその一心だけの答えだった。他には何もなかった。
「ふふっ、良い返事です!では、私は待っていますからね!ちゃんと準備をしてきてください!」
そして意識は薄れていった…
ジリリリリリリ!!!
「…ん?なんだよ夢かよ…準備して会社に行かないと…」
時計を止め、スーツに着替え会社に行く準備
はバッチリだ。
「行きたくねーけど、行くしかねーな」
家を出て会社に行こうとしたが、外の景色をみて驚愕するしかなかった…
「どこだよ!?ここは!?」
回りは見たことのない景色ばかり西洋の建物のようなものばかりだった。
「まさか、本当に異世界?……」
しばらく立ちすくむしかなかった……