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見えない少女と対人最強  作者: 詩野ユキ
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7

  ハルトがリアをどうにか引き止めたあと、二人はハルトの部屋に帰って来ていたのだが、あれからリアとは一言も話すこともなく、部屋は沈黙した空気に包まれていた。

 .......うーん。カッコつけて俺のそばにいろとか言ったせいでどうやってリアに接しればいいかわからん。

 しかしそんなハルトの様子を察したのか、リアが口を開いた。

「ところでハルト、お前はこれからどうするつもりなんだ?」

「え、あああ。そ、そうだね。」

 ってやべえ。この後どうするかなんて全く考えてなかった!どうしよう。ここで正直にリアの呪いを直すために頑張りたいと思います、なんて言ったらこの自己犠牲少女はおそらく自分にはそんな権利はありません、とか言って納得しないだろうからな。ここはリアの納得のいくナイスな言い訳を考えなくては!

 そしてハルトはわざとらしくこほんと咳払いをすると、すっと立ち上がり高らかに宣言した。

「海賊王に俺はなる!」

「.......」

 あれおかしいな、完璧な返答だと思ったのだが。

 チラッと目線を下の方に向けてみると、そこには絶対零度の眼差しでこちらを見つめるリアの様子があった。

「.......はい、すみません。嘘です。本当は隣の街にいってみようと思っています。」

「隣の街?」

 なぜに?と首をかしげるリア。

「いや、ちょっとね。いい儲け話があるってきたからそれを確かめに行こうかと。リアだってお金があって困ることはないだろ?たくさんご飯食べれるしな、な?」

 とハルトは早口でまくし立てているが、もちろん本当の目的は別にある。それは影と呼ばれる生物、いや正確には生物らしいものの確認のためであった。

 それはハルトがリアと出会う前のこと、ハルトは一人で街をぶらぶら歩いていた。そして道行くところで所々にある飲食店に視線を向けていたところ、ふと道端を歩く二人の男の話が聞こえてきた。「なあ、知ってるか?影のことを。」「影?なんだそれ?」「影は人でもなく、まして生物ですらない。そいつは顔を持たない。まるで日に照らされてゆらゆら揺らめく影のようである。影はただ願いをかなえるためだけに存在する。」「なんだそれ?お前の妄想か?」「違うわ!最近、巷で耳にするんだけどその影っていうのはどんな願いをかなえてくれるらしいんだ。そして願いをかなえると霧のように消滅するらしい。それが最近隣の国で発見されたとかしないとか。」「へえ、そりゃすごい。まあ、それが本当だったらの話だがな。」はそして二人は冗談交じりに話しながら通りすぎていった。

「……」

 ハルトは歩みを進めていた足をとめ、店のガラスに映った自分を見つめる。

 普通、二人のその話をきいてそのことを信じようとするものはほとんどいないだろう。しかし、ハルトは違った。ハルトはその話を馬鹿な妄想だとは思わなかった、いや思えなかった。なぜなら、ハルト自身その存在に見覚えがあったからだ。

 まさか、おれが現実の世界で死んだときに出会ったあいつは……まあ、だとしても今考えても仕方がないな。

 そして、その時はそれをどうすることもできないので、ハルトはそれ以上考えることをやめていたのだが、今日ハルトは再び影という存在を再認識することとなった。そしてハルトは考えた、もし影の存在が本当ならばリアの呪いを治すことができるのではないかと。そして、ハルトのリア呪い解除計画が秘密裏に進行していたのだが、

「お金儲けのためね。まあ、理由がなんであれ私はあなたの監視をするけどね。」

 リアはハルトが本当は別の理由があることにまるで気付いているかのように、きりっとした眼差しでハルトを一瞥した。

 ……大丈夫。ばれてないよね?

 そして、ハルトは一抹の不安を抱きながらも、隣の国へ行くことが決まった。


 予定が決まってからというもの二人は早かった。すぐに準備をすると、その翌日にはこの街を離れることなった。

「ああ、ついにこの街ともお別れだな。」

 ハルトはううっとわざとらしく泣きまねをして腕で顔を隠していると、リアが馬鹿でも見るような目でハルトを見ていたので、ハルトはなんだよ、ちょっとくらいふざけてもいいだろと文句をたれ、今度はまじめに街のほうに向きびしっと敬礼をした。

「では、出発といきますか。」

 リアも街にちらっと視線を向けると、すっと目を細め一瞬和やかな表情になる。が、すぐにキリッとした顔になった。

「そうだな。」


 二人は隣の国に向けて出発した。隣の国は砂漠の中にあるとのことだったが、そこまでの道のりは緑が生い茂った森林を通るしかなかった。もちろん、そこは街の外なのでモンスターもいる。油断していたらあっさり命を落としてしまうのだ。そのため、ハルトとリアは急ぎながらも慎重に進んでいっていた。

「なあ、ハルトお前モンスターなんだろ?モンスター同士で仲良くコミュニケーションとかできないのか?」

 リアがわずかな期待を胸に、ハルトに聞くも

「無理だ。」

 ハルトはノータイムでばさっり切り捨てた。

「つかえないなぁ。」

 こいつ……!

「お前なぁ!」

 そして、ハルトがリアに反論せしと声を荒げた瞬間、ざざっと近くの草むらが揺らぐ音がした。

「「!?」」

 ハルトとリアは瞬時に警戒態勢をとると、音がしたほうに体を向ける。

「……」

 なんだ一体、モンスターか?

 一瞬にして、静寂に包まれ、わずかに吹くそよ風が草木をゆする音がのみが聞こえる。ごくりとハルトが自分の唾を飲み込む音がはっきりと聞こえる。すると次の瞬間小さな影が草むらから飛び出してきた。

「……うさぎかよ。びっくりするわ。」

「……ふう。」

 草むらから現れたのはただの小さなウサギだった。二人は安堵のため息を漏らし、再び歩みを進めようとする。だがこの瞬間、目にとらえられないほどの速さで、先ほど先ほどの草むらから大きな影が飛び出してきた。完全に油断していた二人は反応することができない。そいつは一瞬で二人の背後に回ると、間髪入れるず二人に突っ込んできた。

「くっ!?」

 ハルトは何とか振り向き、相手の姿を視界に捉える。しかし、相手の速さは想像より早い。ハルトが攻撃をくわえようとするよりも早くハルトに一撃を加えた。

「……っ。」

「大丈夫かハルト!?」

 ガクッと膝をつくハルト。そいつは一瞬でハルトの肩の肉をもっていったようで、ハルトの肩は黒く濁った赤色に染まっていた。

 どうしてこんなモンスターがこんなところに!?

 ハルトの肩の肉を一瞬にして抉り取ったモンスターの正体、それは三本の頭を持ち、地獄の番人の異名をもつモンスター、ケルベロスであった。

「ケルベロスだと!?」

 リアが驚きで目を見開く、するとケルベロスはそんなリアをあざ笑うかのように二人の周りを高速で駆け回り始めた。ちっと舌打ちをし完全に逃げ場を失ったリアは、ハルトを背にケルベロスに注意を向ける。

「おい、ハルト動けるか?」

「あ、ああ、なんとか。」

「今から私が地面に向かって魔法をうつ、ハルトはそれと同時にこの包囲網から脱出してくれ」

「おい、お前はどうする気だ?」

「私は大丈夫だ。魔法をうったあと同時に防御魔法をはる。たぶんその時にあいつが私に攻撃してくるだろうから、ハルトは脱出したと同時にケルベロスをたたいてくれ。」

「ほんとに大丈夫かその作戦?」

「大丈夫!私を信じろ!」

 胸に手を当てて自信満々に宣言しするリア。

 大丈夫かよ、とハルトは内心不安に思いながらも覚悟をきめた。そしてリアがいくぞと声を荒げようとしたその瞬間、一筋の光が二人の視界を横切った。

「「!?」」

 二人は新たな敵かと視線を光の終点に向けようとすると、どさっと何かが倒れる音がする。二人は慌てて視線を元に戻すと。そこには二人を囲んでいたケルベロスは真っ二つに割れた死体が転がっていた。

 一体何がおこったんだ?

 ハルトがあまりの衝撃に茫然としていると、どうやらこの犯人と思われる人物がこちらに声をかけてきた。

「やあ、大丈夫だったかい?」

 全身真っ白い服と白いマントをつけ、腰にこれまた真っ白の剣をぶら下げた金髪のイケメンがそこにいた。





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