リア
ハルトとリアは冒険者ギルドに戻ってきていた。
「よしリア、これが今回の報酬だ。半分渡すぞ。」
「へ?」
依頼の達成報酬を受け取り、リアに半分を渡そうとするとリアが驚いた様子でハルトを見ていた。
「何を驚いているんだ?」
「私がもらっていいのか?」
「当たり前だろ。お前も一緒に戦ったんだから。」
「……」
しかし、いまだ困惑した様子のリア。
「いいから、受け取れ。」
ハルトは無理やりリアに報酬を渡した。
「よし、じゃあ飯に行くとでもするか。」
するとリアは急に表情を変え、喜々とした反応で
「うん!」
……食いしん坊か。
「ふぅ。食った食った。」
「……」
腹八分目、ご満悦といったようすのハルト。リアも同じくで幸せでとろけそうなだった。二人は店をでて夜風を浴びながら、ゆらゆら歩いていた。
「そうだ。リア、お前この後どうするんだ?俺は自分の宿があるからそこに帰るが。」
リアはハルトのことをモンスターだと信じ込み、自称監視役として勝手についてきているわけだが、さすが年端もいかない男女が夜も一緒というわけにはいかないだろう。
「……」
急に無言になり下を見るリア。
「どうした。」
「えっと……」
すると俯いたリア顔がほんのり赤く染まり、なんとも言えない空気がながれる。
なんだこの空気感は!
ハルトが慣れない空気にたじろいでいると、リアがばっと顔を上げ
「一緒に泊まる!」
「……は?」
とんでもない発言をしてきた。
「いやいやいや、ちょっとまて。お前わかってんのか。俺たちはまだ20も満たない清き男子と女子だ。それが、同じ屋根のしたで一晩明かすってことだぞ!?」
すると、ますますリアの顔が赤くなり、
「わかってるわ!私は監視なの!いいからとっとと案内しなさい!」
「はい。」
ハルトは人生最大の山場をむかえることとなった。
「……こ、ここが僕の、のお家です。」
あまりの状況に言葉遣いがおかしくなるハルト。しかし、そんなハルトを気に留めることもなく、リアはづかづかと足を踏み入れた。
「私がこのベッドを使うからあなたはそこのソファで寝てね。」
どうやらすでにリアから恥じらいは消えているようであった。そして、その様子に感化されたのかハルトの緊張も解けリアの傲慢な態度に反抗する。
「おい、ふざけるな。ここは俺の家だ、お前こそ、そこのソファで寝ろ。」
「じゃあ、私はシャワーを浴びてくるから。勝手に私のものに触ったらただじゃおかないわよ。」
しかし、リアは全く聞き耳を持たずいった様子でさっそうに行ってしまった。
「触んねぇよ!てか話を聞けぇぇぇぇ!!!」
「くそう。なんで俺がこんなところで……」
その後、もちろんハルトの主張が通るはずもなく、ハルトはソファで寝ることとなった。またリアは寝ているとき何かしたら殺すと、ドスの聞いたこえで威圧していたため、ハルトただ無言でソファに朝まで寝ることとなった。
朝になると二人はとりあえず街にでていた。
はぁ……初めて女の子が自分の家に来たと思ったのになんだこれは。この期待外れ感わぁぁぁ!!!
「……なに?」
ハルトのがっかりした様子に釘をさすように視線を向けるリア。
「いえ、何もありません。」
「そう。で、今日は何をするの。」
「うーん。そうだな正直お金は昨日の依頼でそれなりに間に合ってるからな。」
「きゃっ」
そんな時、ハルトが今日のやることを考えていると、後ろから来ていた男性がリアにぶつかり、リアはその拍子で転んでしまった。しかしその男性はまるでぶつかったことなどなかったかの様子でなに食わぬ顔で歩いていく。
「おい、てめぇ。ぶつかったんだから一言謝るぐらいしろよ。」
男の態度にムカついたハルトが男を引き留める。しかし、それでも男は状況が理解できていないのか。ハルトの言葉に顔をしかめていた。
「俺の言葉が分からないのか!?てめぇいい加減にっ……」
「ハルト、いいから。」
しかしリアは立ち上がるとハルトを止め、先に歩き始めてしまった。
おいおい、なんだよ。お前のことなんだぞ。
「てめぇ、次はないからな。」
ハルトはその男に釘をさすと、リアを追いかけた。
「なあ、お前なぁ。あれはどう考えても相手が悪かったんだからお前は怒ってもいいんだぞ?」
「怒る?私が?何を言っているんだお前は?そんなことあるわけがないだろう。それに私には人を怒る資格などない。」
リアの鬼気迫る様子にハルトはそれ以上何も言うことができなかった。
その後ハルトとリアは街を巡った。その時、リアがもう何も気にしていない様子だったのでハルトは考えることをやめた。町の広場でのんびりしたり、小川のそばで涼んだり、出店で食べ歩きをしたりと二人は今日を満喫した。
「ふぅ。」
二人はハルトに家に戻るべくゆっくりと歩いていた。今までひたすら鍛錬づくしだったハルトは完全にリラックスしていた。それはリアも同じであった。しかし、そんな時、街の路地のほうから悲鳴のような断末魔がきこえた。二人はその声に気付き、路地裏を覗いてみると、そこでは三人の巨漢が一人の男を恐喝していた。
「あ、あいつは。」
「……」
なんと恐喝の対象となっている男は、先ほどリアとぶつかった男性であった。その男は三人の巨漢に囲まれ完全に委縮しており、この後の展開は誰しもが予想できた。
「まあ、自業自得だな。あいつの行いの悪さが祟ったんだな。」
しかし、次の瞬間リアが男たちめがけてとびだした。
「おい!リア!別に助ける必要もないだろ!」
しかし、リアは止まらない。
くそっ。どんだけお人好しなんだよ!
リアは一瞬で男たちの目の前に現れると、三人の巨漢をあっという間に倒してしまった。
「はえ?」
突然、巨漢たちがたおれるという状況に混乱しているのか、男は茫然としている。
「おい、お前。ぼさっとしてないで礼ぐらい言え。」
遅れてきたハルトが男に促す。
「え、え、え、え?」
しかし、男の煮え切らない態度にハルトが激高する。
「てめぇ、いい加減にしろよ!!!昼間迷惑かけた上に、助けてもらったんだぞ!何か言うことがあるだろう!!!!!」
「……な、なにを?」
「っっっ!!!」
怒りが頂点に達したハルトが殴りかかろうとする。しかしその拳は男にあたることはなかった。
「おい。リア止めるなよ。この糞野郎は一発殴られるべきだ。」
リアが魔法を使い、ハルトの動きをとめたのだ。
「うわあああああ!!!??」
男はハルトの鬼の形相をみてさっそうと逃げ出そうとする。それを見たハルトが捕まえようとするも
「てめっ
しかし、そんなハルトを再びリアが遮った。
「ハルト、やめろ。別にいい。」
「なんでだよ!お前お人好しすぎるだろ!」
「違う。それにあの男は別に屑野郎じゃないし、殴られるべきでもない。」
「なにを言って……」
リアが朝の時と同じように鬼気迫る様子でハルトをみる。
「……」
「……」
そしてリアがこの思い沈黙をやぶり、口を開く。
「私は過去に大罪を犯した。そしてそのとき一生消えない足枷を私は背負った。いや背負わなければならなかった。」
「どういうことだ?」
「……私が背負った足枷、それは、この世界の全ての人間から見えなくなる。」
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