謎の少女2
「はぐっ、はむ、んっ、、、。」
口いっぱいに食べ物を詰め込み、リスのようなほっぺをしている謎の少女。
「おい、なんで俺がお前に飯をおごらねばならんのだ。」
「そへはあなはがわふいやつはほうはたしはめるためよ。」
「口の中のものを飲み込め。」
「それはあなたが悪い奴じゃないかどうかたしかめるためよ。」
「悪い奴ってなあ、俺は何度もいうがただの人間だと言っているだろう。」
そう、少女はあの戦闘以来ハルトの事を人型のモンスターか何かと勘違いしており、自分はハルトの監視役だとい言ってずっとついてきているのだ。ハルトは何度も振り切ろうとしてみたものの、この少女の実力は只者ではなく、最後にはどうしても振り切ることができなかった。
まあ、こいつが俺の邪魔をするって訳ではないからよしとするか。
「よし、飯を食べたらギルドに行くぞ。お前は俺をモンスターだと勘違いしているようだが俺は人間だ。仕事をしないと生活できないからな。それと聞き忘れてたがお前の名前はなんだ?」
「リアよ。わかったわ。」
少女はせわしなく食べ物をかきこみ返事をした。
冒険者ギルドについてから二人はいろんな依頼を見ていた。するとリアは何か面白いものでも見つけたようで、わくわくした様子でハルトを呼んだ。
「なあハルトこれはどうだ。」
リア目をキラキラと輝かせハルトに依頼の紙をみせつける。
「えーとなになに、手先が器用で繊細な方に必見!猫のブラッシング。」
……こいつ。
「お前、最初は大人っぽいって思ってたけど意外と子供なんだな。」
「な、なっ!!!!」
沸騰したヤカンのようにぴゅーっと音がなりそうなほど、リアの顔は赤くなる。
「私は子供じゃない!大人だ!」
しかし、ハルトはリアの弁解に全く聞く耳を持っておらず、依頼を選ぶ。
「むうぅ!!」
「おっ、これなんかいいじゃん。コブリンの親玉ゴブリンキングの討伐。」
コブリンとは一見新米冒険者でも勝てるような雑魚モンスターだがゴブリンキングは話が違う。沢山のゴブリンを引き連れ、自身はそのゴブリンの何十倍もの戦闘力をもっているのだ。そんじょそこらの冒険者では相手にもならないだろう。
「なあ、リア。どうっ……あ。」
話を無視されたリアがリンゴのように顔を赤らめ、ギリっとハルトを睨んでいた。そして、すうっと息を吸うと
「私の話を聞けええええ!!!!!!」
……からかいすぎたな。
ハルトとリアは洞窟の前に来ていた。
「ゴブリンキングは夜行性、基本昼間は洞窟の中にいる。だから昼間のうちに倒すぞ。外に出られたら厄介だからな。」
「……。」
「どうした?」
何も言わないリアにハルトがリアの様子を伺う。
「……私は子供だから何もわからないな。」
……こいつ!めんどくせえ!
リアは未だにギルドでのことを引きずっているようだった。
「わかった。俺が悪かった。お前は大人だよ。」
するとリアは満足そうにほほを緩ませる。
「それでいい。」
……まったく。
ハルトは内心、こいつやっぱり子供だ!と思いつつもそっと心の奥にしまっておいた。
そしてハルトとリアは洞窟の中へと進んでいった。洞窟は一本の道が続いており、足元が見えないほどに暗かった。
「長いな。」
しばらく進むと道が二つに分かれているところにつながった。
これはどっちに行くべきだ。両方終わりが見ないほど奥まで続いているように見える。
ハルトが悩んでいるとリアがびしっと指を刺す。
「右よ。」
「なんでだ?」
「感よ。」
感かよ。
「……まあどっちみち選びようもないしな。よし右に行こう。」
しかし、代り映えのしない景色ってのもつまらないな。
隣を歩くリアも同じ気持ちのようでけだるそうにしていた。そしてまたしばらくするとまた二手に分かれる道につながった。
「またか。リアどっちがいい。」
「右よ。」
「また右か?」
「右がいいのよ」
こいつはなにか右にいかなければならない星でも背負っているのだろうか。
そしてまた、しばらく同じような道を歩いているとまたもや分かれ道につながった。
「また分かれ道だと?」
これはなにかおかしい気がするぞ。
「リアどう思う?」
「同じような分かれ道。それにゴブリンがいるはずの洞窟で一回もゴブリンに遭遇しない。」
そう、それだ。俺たちは今ゴブリンの住処とも呼べる洞窟に来ている、それなのにゴブリン一体とも出くわしてしないのは何かがおかしい。
そして分かれ道の周辺をしらべてみるとあるものが目に入ってきた。それは二人の人間の足跡。そしてその足跡はハルトとリアのものだった。
ざざっ
後ろを振り向くとそこには沢山のゴブリンを引き連れた、通常のゴブリンの何倍もの大きさをしたゴブリンキングが待ち構えていた。
「ハルトどうやらこれは……」
「ああ。」
どうやら俺たちはゴブリンたちにはめられていたらしい。
おそらく奴らはハルトとリアが洞窟に入っていた瞬間に、二人の存在に気付いていたのだろう。二人が洞窟奥に入っていくと数人のゴブリンが洞窟の入り口をふさいだ。普通なら気付くかもしれないがここは暗い洞窟のなか、多少の変化があっても気づくことはできない。そしてゴブリンたちは相手をなぶり殺しにできる準備を着々と進めていたというわけだった。
ブルァァァ
ゴブリンキングが雄たけびをあげる。それに続いてゴブリンたちが一斉にとびかかってきた。しかしそんな単純な攻撃にやられるハルトとリアではない。ゴブリンの攻撃を華麗にかわすとすべて一撃で倒した。
「まあ、所詮ゴブリンだな。いくら数が増えようと関係ないな。」
だがゴブリンキングはその様子にひるむことなくゴブリンを送り続ける。
馬鹿の一つ覚えが。何度来ようと同じだ。
再びゴブリンを一撃を倒し、ゴブリンキングに突撃しようとするハルト。しかし、今回は同じようにいかなかった。踏み出そうとした瞬間倒したはずのゴブリンたちの死体が突然爆発したのだ。
「「!?」」
予期していない爆発に反応できないハルトとリア、リアがとっさに魔法で守るものの二人はダメージを負った。
「なんだ今のは?」
「わからない。」
ゴブリンに爆発する能力でもあるのか?
しかし原因は能力ではなかった。ゴブリンはただの雑魚モンスター能力など持つはずがない。ではそんなゴブリンがなぜ死んだ後に爆発したのか、それは……衝撃により爆発する、爆発ポーションによるものだった。
爆発ポーション!?なぜそんなものをこいつらが持っている?
まずポーションとはある程度、薬草学に精通した人間が作れるものである。そして爆発ポーションはそのポーションのはるか上位品であり、並大抵の人間では作ることの出来ないハイレベルアイテムである。ゴブリンたちはその爆発ポーションを身に着けハルトたちに突っ込んできたのである。
ゴブリンによる特攻か。そして、それを指示しているのはキングゴブリン。どうやらこのキングゴブリンはただのキングゴブリンとはなにか違うらしい。
ゴブリンたちの特攻は止まらない。ハルトが考える暇を与えないように次々と向かって来た。
こいつ!!
ゴブリンたちによる命を懸けた怒涛の爆発、さすがのハルトも危機感を覚えていた。
俺ではこいつらを倒せても爆発のダメージを避けられない。さてどうしたものか。
そんな時、リアが静かにハルトの前に立った。
「おい、急にどうした。」
「これは借しよ。」
リアが何か唱える。次の瞬間、目の前に迫ってきていたゴブリンたちはとてつもない爆風に吹き飛ばされる、そしてゴブリンキングの頭上で爆発した。爆発の衝撃で土煙があがる。ゴブリンたちは跡形もなく吹き飛んだように思われた。しかし、煙をかき分け、緑の巨大な塊が突っ込んできた。それはキングゴブリンだった。しかし、ここはハルトが冷静に対処。突進してきたキングゴブリンを流すと、その勢いを利用して壁にたたきつけた。ドオォォンと轟音が洞窟内に響き渡る。ハルトの力とキングゴブリン自身の勢いが合わさった攻撃にキングゴブリンはあっけなく死んだ。
「ふう。どうにか片付いたな。」
ハルトがリアを見ると
「ブイ。」
リアはびしっと手でVをつくった。
「こどっ……いや、よくやった。」
ふっ……しかし、今回の依頼は何か引っかかったな。ゴブリンはあまり知性がないことで有名だ。そしてそれはキングゴブリンも然り。だが今回の奴らはどう考えても普通のゴブリンたちより知的だった。これはモンスターに異変が起きているということか?まあ、どっちみちすぐには結論はでない。今日はおとなしく帰るとしよう。
「リア、さっきの礼だ。飯をおごってやる。」
すると、リアは目を輝かせ
「私をご飯で簡単に喜ぶ女だとおもうなよ。だが今日は少し疲れた早く帰ろう。」
……単純。
ハルトとリアは街に戻った。
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