死ねない理由
目が覚めると暗闇の中にいた。どうやら寝ていたらしい。
(なんで寝てたんだっけか・・・)
少し記憶を辿ると最後の光景は明瞭に思い出せる。
たしか、俺を助ける為に可能性の低い秘術を使うとかの話の途中唐突に部屋が光ったのだ。
(俺は死んだのかな)
暗闇の中だったのでそう思ったのだが、星の光を頼りに周りを見ると左隣からはアルルの吐息。
右隣からはギルバードの寝言が聞こえてきた。
(俺も、ギルバードもアルルも全員生きているか..)
ということは秘術は成功したのだろうか。
成功率が低いという話の中に呪い云々の言葉もあったが自分ではあまり変わったつもりがない。
そう思いどこか異常がないか探していると首元になにかがつけられているのがわかった。
(鎖...?いや、指輪がついているな)
綺麗で不思議な指輪だった。明るい金色のリングにはめ込まれた赤色の宝石は、それ自体が微かな光を放っていた。そして小さな光からは何かの大きな力を感じる。
指輪や宝石が別段好きなわけではないが、何故か一目見て気に入ってしまった。
もしかして呪いというのは指輪依存症とかフェチになるものなんだろうか。そんな病があるとは到底おもえないが。
こんなくだらない事を考えしまう程度には俺の体は摩耗しているようだ。知識もないし、今は呪いのことは考えても仕方がないと割り切ることにする。
(なんで、死ぬかもしれないのに俺を助けたんだろう)
それが本当にわからなかった。自分の命が大事じゃあないのだろうか。
自分より子供が大事だと思っているのだろうか。わからない。俺が親になればわかるのだろうか。
少なくとも今の俺にいきなり子供が出来ても命をかけて守ろうとは思えそうにない。
もしこの体の本当の持ち主にお前が死ねば自分が体に戻れると言われれば命を捨てるのはできる。
それが道理だと思うから。
でも時間をかけて育てたならまだしも、一年やそこらで代わりが作れる赤ん坊に対して命をかける道理はないように思う。
考えても考えても答えは出ない。少し疲れてきた時、不意に左から声が聞こえた。
「メル...もう暖炉に飛び込んじゃダメですよ。すごく、すごく、熱いんだから。」
言いながら俺を優しく抱きしめてくる。アルルは顔をゆがめて泣きながら笑っていた。
俺はその顔を見て、体の中で冷たい何かがひび割れる音が、聞こえた。
アルルは静かにけれど力強く抱きしめてくる。その腕の温もりは、俺を失いたくないと、離したくないと、代わりなんてないと、言葉以上に強く伝えてくる。
「メル...ごめんなぁ、火は熱かったな、痛かったな、怖かったな、ごめんな、ごめんな、
パパはパパ失格だ...」
ギルバードも俺を泣きながら二度と離れないと強く優しく抱きしめてくる。
俺の頭の中にアルルの泣きながら笑っていた顔とギルバードの声が巡る
そうして疑問を持ってしまった
俺が死ぬことが自己満足なんじゃないかと
俺が死んでもこの体の持ち主が帰ってくるとは限らない
でも俺が死のうとすれば悲しむ人間はここに二人、確実にいるのだ
ならば俺は、どうすればいい
一度捨てた人生をやり直せばいいのか
俺には無理だ
よくわからない不安に怯えて命を断つくらい俺は弱い
それに加えて今の俺は借り物の体で、生きていていいとは到底思えない
なれば俺は、どうすればいい
思考は堂々巡りになっている
俺は...
ごめんな、という声がいつまでも聞こえる中、俺の意識は薄れていった
6話目です
ここまでついてきてくださった方にはありがとうございます。
読んでられねーよ駄文と去ってしまった方には楽しんでもらえなくてごめんなさい。
陰鬱な空気はこの話で一旦おしまいです!次話からはポンポン話をすすめてはっちゃけていこうかと!!
そして6話目にして大事な書き溜めさんがログアウトしました。ホントはもうちょっと分けて投稿しようかと思ってたんですケド、一話が短いからと思って・・・
ここからが定期更新できるかどうか私の文才が試されるぜ・・・!!
正直散々確認した書き溜めがこの駄文だからな自身はないぜ・・・!!
自己満足で書いてるだけのモノですが、やっぱり書くからには感想をもらいたいのが人情というものなのか・・・コメントを頂けるようにできるだけがんばっていこうと思います