表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/29

地上へ②

「すみません、何かあったんですか?」


 正門前に到着し、僕は手近にいた女性騎士に話しを聴いてみた。


「はっ! 地上入り口付近に闇獣の群れを確認し、今対処にあたっているところであります!」


 忙しそうにしながらも一般人の質問に応えてくれる、真面目で気持ちのいい騎士の態度は、使命感を帯びて頑張ってる感じが清々しく実に爽やかだ。


「ありがとうございました。どうぞ任務にもど…………」


 状況も分かったので、忙しい騎士の邪魔はいけないと思い、礼を言ってその場を離れようとしたが、


「緊急ッッ……緊急ーーッッッ!! 地上入り口より、大型闇獣が侵入しました! これより、正門を閉じ闇獣殲滅戦が開始されます! 非戦闘員は速やかに正門より退避、避難を始めて下さい!!」


突如響き渡る警告と、ゴゴゴッッ!っと巨大な正門が降りてくる音に遮られてしまった。


 ……っていうか、またか!

 今日は厄日か、はたまた大殺界か!!


「じ、自分はこれで失礼しますっ! 貴方も急いで避難を……」


 避難? いやいや、これ以上の遅延は流石にできない。

 じゃないと、"あいつ等"に黙って出立した意味がなくなってしまう。


「き、聞いていますか!? 早く避難を…………って、えっ?」


 見れば、まだ正門は閉じる途中……ならば!


「我が魔力よ……奮え、猛りて駆け巡れ」


 加速魔法の詠唱を聞いて驚く女性騎士の声を最後に、僕は全速で閉まっていく門に駆け出した。

 避難する一般人。

 訓練通りに誘導したり、配置に着いたりする騎士達。


 ……全てが止まっていて、自分だけが動いている。


 そんな感覚の中、集中を保ったまま人混みを縫うように駆ける。

 正門まで後少し……。

 しかし、人混みが切れたその先で、すでに降りる寸前の門が見えて……、


(走っていたら間に合わない)


直感した僕は即判断する。


 ……一か八かッッッ、南無三!!!


 そう心の中で叫びながら、僕は駆ける勢いをそのままに低く、低く正門に飛び込んだ!


「つうあぁぁぁぁっッッッ!!!!!」


 飛び込みからのヘッドスライディング!!

 走る勢いをそのままに、身体に地面の摩擦を感じながら滑る。


 ……だが、まだ足りない!


「おおおおりゃあぁぁぁッッッ!!!!!!」


 スライディングの勢いが無くなる瞬間に気合いの一回転……の着地と同時に両足のバネを使っての飛び込みっっ…………!!

 低く、速く、鋭く、まるで水面を跳ねる小石のように、僕は正門の隙間を通過した。


 「…………ふう、なんとか間に合った」


 背中に正門の降りきった重い音を感じながら、ホッと一息。


 ……だが、休んでいる暇はない。


 ここからはもう、安住の地から一歩外に出たようなものだ。

 それを示すかのように急に空気が冷たくなり、明かりも光度の低い魔石が所々に配置されているだけなので薄暗く先はほとんど見えない。

 そんな中、


ゥォォォォォォ……………………


遠く、地上へと続く道の先から闇獣の遠吠えが聞こえてくる。

 恐らく、わざわざ地下に侵入してくるのだから肉食系の個体なのだろう……


「剣は預けて来たから、使える武器は……5つか。あっ、そう言えば小剣も預けているんだっけ!? ……んーーまあ、何とかなるだろう」


……ならば、可哀想だが生かしておけない。

 すでに侵入を許している事から騎士達に被害は出ているだろう。そのため騎士達も自らの手で闇獣を討ちたいはずだが、それには更なる被害が出るのは避けられないはずだ。

 ……そう考えると、流石に被害拡大を黙って見てはいられない。


「せめて『聖騎士』がいればなぁ。でも、今日はお祭りだから駆け付けるにも時間が掛かるだろうし……まあ、あいつらならカッ飛んで来そうだけど……」


 できれば連中には会いたくないなぁ……。

 だから、


「はあ、仕方ない。こういう言い方は嫌いだし、性分じゃないけど……」


悪いけど、一方的に終わらせてしまおう…………。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ