《年の節目の大騒ぎ》
今年も終わりますね
大晦日
それは古き年と別れ、新しき年を迎える節目の日。
そんな日に彼、桐月アルマは何故か迫る弾幕から全力で逃げていた。
「避けるなアルマァァァァ!!」
「避けるわアホガァァァァ!!」
叫びながら弾幕を放っているのは幻真。どこからどう見ても怒っている。
それは何故か?
まあ、それは数秒前のこと。
朝起きて、アルマが幻真に会って早々あることを言ったのだ。
「よう幻真くん! 君はいつになったら子供ができるんだい!!」
ニヤニヤとしながらおちょくるアルマに幻真は先の事件のこともあり、怒ったのだ!
そして、現在に戻る。
「そんな怒るなよ! 君らもそろそろいい頃合いだろうが!!」
「うるせぇ!! お前に言われる筋合いはねぇよ!!」
「ギャアアアアア」と言う断末魔と共にアルマは幻真の弾幕に直撃し、爆発した。
それを遠くから見守るさとりと終作がお茶を啜りながら朗らかな表情をしていた。そして、二人はほぼ同時にこう思った。
(ああ...平和だなぁ...)
△▼△
一方その頃。
地霊殿では大晦日ということもあり、宴会の準備が行われていた。
「にしても...あいつらまだやってるの?」
外から聞こえる爆発音に桜はため息をする。
「幻真くんも相当怒ってたし、当分戻ってこないんじゃないかしら?」
「こっちは準備を手伝って欲しいって言うのに...」
慣れた包丁捌きで目の前の食材を切り分けながら豊姫は答えた。
その後ろから未来が切り分けた食材を鍋などに移し、調理を始めた。
「私はあの魔王と関わりがないけど。いっつもああなの?」
「磔から聞いた話だと自由というか正直というか...」
「はっきり言ってバカ」
「今...アルマをバカって言った...?」
ビクッとその場にいた三人は体を震わせた。
三人の後ろで包丁を持ったエプロン姿のパルスィが彼女らを睨んでいた。はっきり言って怖い。
「い、いいいいえ?! そ、そんなこと言ってないわよ!! ね、ねえ豊姫? 未来!?」
「そ、そうよ? 私たちがアルマくんをバカになんてしないわ!」
「そ、そうよ! だ、だからその包丁を下ろして!?」
「......もし、またアルマをバカにするようなことを言っていたら、あなた達を調理するわよ?」
『は、はい...』
脅迫というか、忠告というか、そんなことを言ったパルスィはまた料理を始めた。
三人もどこかビクビクしながら作業を再開した。
△▼△
「これはここか?」
「あっちだろ」
「いやそもそもそれいらない」
会場設営をしているのは儚月と竜神と黄泉であった。
「なんでだよ! カラオケはいるだろうが!」
「そうだぞ儚月! 宴会といえば歌うだろ!!」
「知らないよ!! なんか二人して作ってると思ったら何カラオケって!?」
そう。何故か黄泉と竜神は二人してコソコソとカラオケ機器を作っていた。
「歌いたいだろ! なぁ黄泉!?」
「いや俺は別に」
「なんでだよ!?」
そんなくだらない言い合いを少し離れたところでテーブルやら食器やらの準備をしていた仙我は苦笑いをしながら三人の様子を見ていた。
「黄泉達は何をやってるんだろうね...」
「わ、わかんない」
同じく準備をしていた涙亜は引き笑いしていた。
「仙我と涙亜ちゃんも歌いたいだろう!?」
『どっちでもいい』
「味方はいないのか!?」
そんなこんなで宴の準備は進んでいく...
△▼△
「はぁぁ...イテェ...」
「お前なぁ...死なない体とは言え調子乗りすぎじゃないか?」
幻真にボコボコにされた俺をベントが呆れたように見ていた。
「まさかここまでやられると思わなんだ」
全くそこまで怒ることないだろうに。
大体、幻真も子供を作ってもいい頃だろ。
きっと妖夢もお待ちしてるかも知れんよ? まあ僕は優しいからもう何も言わないが。
「しかし、お前は思ったことをすぐ口にするなぁ」
「正直って大切だと思うのよ僕」
「口は災いの元って知らないのかい?」
「関係ないね! それがどう転ぼうと俺が面白ければいい!!」
近くにいたグランヒルデは俺の言葉にベントと同様に呆れていた。
「そういやあ、客人が来てたぞ」
「客人?」
「幻真の友人だとか言ってたが」
「ああ、なんとなくわかった」
ボロボロになった体を無理矢理起こし、終作とさとり様がいる方に視線を移すと、やはりそこには一人増えていた。
「おうアルマ! 死にそうだな!」
「お前は変わらねぇな時龍...」
「あ。あと火御利も来てるぞ。パルスィちゃんのところに真っ先に向かったけど」
本当にあの二人は仲良いな。
そうだ。パルスィに会うついでに火御利に顔でも見せようか。
「それと時龍。幻真に早く子供作るように促してくれよ」
「なんで君は幻真の子供を作らせようとしてるんだい...」
「面白そうだから」
「アルマ...前より性格悪くなった?」
何を言う。元々だ。
△▼△
その頃、厨房では。
「パルスィ久しぶりね!!」
「火御利! ええ、久しぶり!」
不機嫌なパルスィであったが、そこに火御利が現れると、とても嬉しそうな笑顔を見せて彼女の手を掴んで再会を喜んでいた。
「あら、火御利じゃない。どうしてここに?」
「気づいたら時龍とここにいて、アルマとパルスィの世界だってわかったから急いで来ちゃった」
「え...あいつも来たの?」
「大丈夫。変な事したら叩きのめしましょ!」
「私も手伝うわよ?」
ニコニコと怖い事を言っている火御利と桜に同じくニコニコとした笑顔で頷くパルスィの三人。
そんな三人に豊姫と未来はどこか恐怖を覚えていた。
と、タイミングがいいのか悪いのか。アルマ達が厨房に顔を出した。
「おう火御利! 元気そうだな!」
「逆にあなたは死にそうねアルマ」
「アルマが死にそう...?」
「冗談だから落ち着いてねパルスィ」
「なぁんだ。ならよかった」
きっとアルマ以外の人間は驚いているだろう。
アルマ以外の人物がパルスィをなだめているのだ。彼女の性格をよく知る人物なら驚くであろう。
ゆういつ異世界の強者達で仲がいいのが彼女なのだ。おかしくもないことだろう。たぶん。
「パ、パルスィと火御利って仲良いのね」
「本当になぁ。俺は嬉しいよ。あそこまで嬉しそうなパルスィは俺といるとき以外は見れないからさ」
「さり気ない惚気はやめてくれない?」
「そう言えば、桜は相手見つけーーーー」
言い切る前に桜がアルマを殴り飛ばした。
パルスィ以外は思っただろう。そろそろ自重しろよ、と。
そして、桜はパルスィの持っていた包丁で刺されそうになっているのを火御利が必死に抑えていた。
たまたまその場を通りかかった終作とさとりは思った。
(ああ...平和だなぁ...)
いや、平和ではない。
△▼△
さて、宴会場予定の隅っこでは。
「にしても霊斗はいつの間にきてたんだ?」
「わりと最初からいたぞ?」
「なんだよ! じゃあ助けてくれよ!」
「俺は俺でやることがあったんだよ」
「そうだぜ磔。霊斗くんもやることあったんだよ」
「うぉ!?」
さり気なく三人の話に割り込んでいたアルマに剛は驚いて体を仰け反らした。
「なんだアルマか。いつからいたんだ?」
「わりと最初から」
「嘘つけ」
「うん」
「ったく...それでその顔どうした」
「殴られた」
アルマの顔は右半分がひどく腫れ、もはや拳の跡が付いていた。
どれだけ強く殴られたと言うのか。
「お前、どうせ変なこと言ったんだろ」
「何を言う! 俺は桜に相手見つけないの? って聞いただけだ!」
「それがアウトなんだっつーの!!」
磔からのツッコミに目を逸らすアルマ。
その光景に霊斗と剛は笑っていた。
「本当にお前は魔王らしくないな」
「逆に魔王らしい魔王ってなんだって話」
「傍若無人」
「最低最悪」
「わがまま」
「もういいや」
相変わらずの偏った魔王の印象に呆れたアルマは部屋を後にした。
△▼△
部屋を出て外に行くと幻真がいた。
「よう幻真」
「お前あんだけボコボコにしてきた相手によく何事もなかったように話せるな」
「どうせ回復するし」
「だとしてもさぁ」
「些細なことで友人を軽蔑するほど心狭くねぇよ」
「お前はそういうやつだったな」
顔を合わせると二人して笑った。
そうこうしていると地霊殿からパルスィと火御利が現れた。
「二人とももう宴会始めるって」
「早く行こうアルマ」
「はいはい。行くぞ幻真」
「おう」
△▼△
「もうすぐ年明けますよぉ!」
「年明けますよぉ!」
「それまで宴会ダァ!」
「ダァ!」
『かんぱぁい!』
『かんぱぁい!』
アルマとパルスィの乾杯の挨拶から大晦日の宴会が始まった。
みんなで酒を飲んだり、料理を食べたりと楽しんでいた。
そんな中、黄泉と竜神、儚月は着々と準備を進めていた。
「さぁ! 歌うかぁ!!」
「まじで歌うの!?」
「当たり前だ儚月! 何のためにカラオケ機器を黄泉に作らせたと思ってる!」
「俺が作りたかった」
「そうだったの!?」
コントのような会話に背後からさとりが近づいていくと黄泉の肩をポンと叩いた。
「あら、人間が何故いるのでしょうか?」
「げっ!? バレた!? 逃げるぞお前ら!」
「なんで!?」
「殺されるからだよ!!」
『俺らも!?』
「ついでに殺します」
『酷くない!?』
さとりに大層嫌われている黄泉はとばっちりを食らった竜神と儚月は彼女から全力で逃げることとなった。
そんな時、この男が現れた。
「おっ! さとりちゃ〜ん! 何してるの?」
「しゅ、終作! ヘルプ!!」
竜神が助けを求めるも、終作は既にさとりからの心話をしており、手遅れであった。
「オッケーさとりちゃん! 二人でやろうか!」
「ええ、やりましょうか」
『だめだこの人!!』
こうして三人は二人に追われるのであった。
「何やってんだろうあいつら...」
「わからないでぇす!」
「......涙亜ちゃんテンション高くない?」
「ぜぇんぜん普通ですよぉ〜!!」
「お酒飲んだ?」
「はぁい!」
「誰だ未成年にお酒飲ませたのは!!」
酔っ払ってしまった涙亜に仙我は飲ませた人物に叫んだ。それを影からコソッと覗くのは時龍であった。
「ま、間違えてお酒飲ませたとは言えない...」
実は涙亜が勢いよく食べていくので喉を詰まらせてしまい、時龍は焦って近くにあった飲み物を渡したのだが、それが運悪くお酒であった。
「あははは!」
「涙亜ちゃぁぁん!! お水飲んで!!」
「ごめんよ仙我くん...!!」
パタパタと動き回る涙亜に水を飲ませようとする仙我。それに影から謝罪の念を送る時龍のシュールな光景は年が開けるまで続いた。
「あら、意外と飲めるのね」
「まあ嗜む程度には...」
「私は強いわよぉ」
『いや、酔っ払ってる』
グランヒルデと未来、そして豊姫の三人はゆったりと飲んでいた。
「しかし、もう少し静かに飲めないのかね」
「無礼講って事で許してあげましょ?」
「そう無礼講!」
「あなたは少しお酒を控えなさい」
「やぁだぁ! まだ飲むの〜!」
『はぁ...』
駄々をこねる子供のように豊姫は言った。
そしてほぼ同時にグランヒルデと未来はため息をしたのだった。
「あなたって本当にお酒強いのね」
「そうでもないぞ」
「後ろの空ビンを無くしてから言ってほしかったわ」
こっちでは霊斗と桜、磔が酒盛りをしていた。
「そう言えば、お前アルマに相手は見つけないのかって聞かれたんだって?」
「そうだけど? 何よ磔あなたも殴られたいの?」
「い、いやそう言うわけじゃないって!」
「まあまあ。単純に心配してるだけだって」
「どうだか」
ヤケ酒のようにコップのお酒を飲み干す桜。どこか微妙に空気が悪い三人であった。
「剛くんよ〜。なんか色恋沙汰はないの〜?」
「はぁ? 何だよ急に」
突然にアルマが剛に恋バナをしようとするが、彼はどうでも良さげである。
「俺は世界を救うので手一杯で、そんな余裕はなかったよ」
「ふぅん。じゃあ、幻真は最近どうよ」
「俺は特に変わらない。いつも通り一緒に修行やらをしてるだけさ」
「つまんな!!」
幻真の恋バナに直球な感想を伝えると彼も当然怒る。
「お前だって似たようなもんだろうが!!」
「俺とパルパルはもはやそれ以上だから。なぁパルパル」
「そうねアルアル」
「相変わらず、あなた達は仲睦まじくて羨ましいわ」
「いや、もはや異常じゃないか?」
『君らに理解されなくていいですよ〜!!』
剛の反応に二人は息ピッタリとした返答をする。
これには三人も苦笑である。
「そういえば火御利はまだ相手いないの?」
「あ、私にも聞くのね」
「一応」
「なにそれ。まあ私はまだいいわよ。気楽でいたいし」
「うん。それも一つの考えだね」
火御利の意見ににこやかに答えるアルマ。その後ろで優しい笑顔で頷くパルスィ。その横で机を思いっきり叩いて立ち上がる幻真。
「おい待てアルマ! 何で火御利の時は意見を尊重して俺の時は押し付けてんだよ!!」
「ウルセェ!! パルパルの親友は丁重に扱うのが常識なんだよ!!」
「知るかぁ!! もう一回ぶっ飛ばしてやるよ!!」
「いいぜ! かかってこいよ!!」
アルマと幻真の間に火花が散るとそれを止めに桜と磔が割り込んだ。
「落ち着けって幻真!」
「そうよ幻真! 私も参加させなさい!」
「お前は何を言ってるんだ!?」
「うるさい! アルマをぶっ飛ばすの!!」
酒のせいか頬を赤く染め、目が虚ろになっていた桜。磔は気づいた。こいつ酔っていると。
どうにか止めれないかと頭を抱えた磔にさらに厄介なことが起きる。
「涙亜ちゃん!? 君は何をしようとしてるのかな!?」
「あっついのでぇ! この部屋を涼しくします!!」
涙亜の手にはアイシクルソードが握られていた。
「それは危ない! 普通に危ない!」
「あははははは!」
「なんで酔っ払ってるの!?」
「誰かがお酒を飲ませたんだよ!」
「だぁぁ! このままだと大変な事にーーーーって!?」
磔が目にしたのは全身から全魔力を解き放とうとしている桜と、赤と金のオーラと額からは炎を出した幻真、ツノに七色の炎を灯した虹色の目をしたアルマの三人であった。
気づいた時にはもう時すでに遅く三人は同時に最大出力の大技を放った。
『消えろ!!』
その日、初日の出と共に地底から巨大な爆発が起き、大地震が幻想郷中に起きたらしいが原因は未だ不明らしい。
うむ。来年もよろしく。
コメディはいつも適当に終わる




