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東方魔人黙示録〜番外編〜  作者: 怠惰のあるま
10年後の地霊殿
32/39

橋姫の誕生日

今日は何の日?

嫉妬の日!!

てなわけでパルスィの誕生日話

どうぞ(=゜ω゜)ノ



まだ日が昇らぬ暗がりの中、地底の奥底で暗躍するように動く影が二つ。

二つの影は地上へと続く道を警戒しながら慎重に歩いていく。あと地上までもう少しというところで二つの影の前に立ちはだかる者が現れた。


「こんな朝早く何処に行く気だリティア、イラ」


気まずそうな表情を見せる半妖の少女 水橋リティアと妖魔の少年 桐月イラ。

言い訳をするようにリティアは目の前に立つ者に訴える。


「お、お父さん...これには事情があって...!」

「姉さんは悪くないよ! 俺が行こうって言ったんだ。だから父さん、怒るなら俺だけにして!」

「イラ...」


姉を庇うイラを見て父と呼ばれた者は困ったように頭を掻いた。


「別に怒らないが...理由だけ聞かせてくれないか?」

「......お母さんにプレゼントを上げようと思って。それで珍しい物を上げようと思ったの」

「それで俺がこっそり地上に行こうって提案したんだ...ごめんなさい父さん」


反省をする二人に対し、二人の父親は首を捻っていた。


「......待て。なぜ母さんにプレゼント?」

『今日が誕生日だから』


父親は絶句した。いや、絶句と言うよりも焦りに近い。なぜなら、彼は自分の妻の誕生日をすっかり忘れていたからだ。


「今日...パルスィの誕生日だっけ!?」

「う、うん...」

「もしかして...父さん忘れたの...?」

「完全に忘れてた...!!」


妻の誕生日を忘れてたことに頭を抱える父親を息子と娘はジトッと見つめた。


『最低...』

「こうなったら...イラ、リティア。俺も地上に行くぞ」

『え...?』

「このままじゃ...パルスィを悲しませることとなる...それは絶対にダメだ! 俺もプレゼントを探す!!」


愛する妻のためにプレゼントを探すことに意気込む父親...魔王 桐月アルマ。

そんな情けない自分の父親を見て二人は同じ事を思っていた。

絶対にロクでも無いことになる...と。








△▼△








「というわけだ。協力してくれ」


やぁ、みんな。俺だ。アルマだ。

何をしているかって? 冒頭でちゃんと語っただろう? パルスィのプレゼントを探してるんだ...が! 俺ってばプレゼントのセンスが絶望的でな。無駄に凄いの探すとロクでも無いものをプレゼントする結果となる。

だったら安直に花をプレゼントしようと思い立ったがどんな花を渡せばいいかわからんから助言を得るべくこうやって幽香の家に足を運んだわけだ。


「百歩譲って協力するとして...なんで私のところに来るの?」

「幽香ならプレゼントに向いた花を知っているかと思ってさ」

「......花をプレゼントするの?」

「そのつもりだ。ダメかな?」

「いいえ...いいと思うわ。ただ、あなたにしてはいいセンスだと思って」


やっぱり俺はプレゼント選びのセンスがなかったようだ。残念。


「う〜ん...ただ綺麗な花をプレゼントじゃ味気ないわよね」

「気持ちがこもってればいいと思うけどな」

「そう思ってるからセンスないのよ」


ごもっともな意見です。

いやでもさ。必死に選んだプレゼントでも気持ちが一切こもっていないとしたら、渡される方も嬉しく無いだろ? 例えるならプレゼントに現金を渡す感じ。ほら、こもってない。

まあ...だからと言って気持ちを込めて雑草をあげればいいってわけじゃない。それは別の意味で気持ちがこもってない。この両立が出来てこそのプレゼントだと思うよ俺。出来てないからセンスが悪いのだがな。


「それだったら花言葉で選んだら?」

「花言葉...?」

「そっ! バラだったら愛だとか気持ちを伝えられる花言葉はいっぱいあるのよ?」


花言葉...いいじゃないか。うんそうしよう。


「ところで...花言葉教えて?」

「いいわよ。どんなのがいいの?」

「うーん...そうだ! こんなのはどうだ?」










△▼△









私は今怒っている。

どうして? と言われたらしょうもないことかもしれない。

子供達とアルマが無断で地上に出かけたからだ。子供達はまだいいわ。地上に行ったことがないのだから興味が湧くのは悪いことではない。けど、アルマは別。


「約束...忘れたの...?」

「そ、そんなわけないだろ...? 悪いとは思ったが...理由があって...」

「浮気...?」

「それは絶対ない」


まあ浮気はこいつには無縁か。変に真面目な部分があるし、一途だし。


「はぁぁ...それで地上には何をしに行ったの?」

「お母さんのプレゼント探し...」

「え?」


私へのプレゼント? あ、そっか。今日は私の橋姫としての誕生日か。すっかり忘れていたわ。自分の誕生日なんて興味がなかったから。

ああ、でもあの森にいた頃はアルマや幽香達が祝ってくれたっけ。懐かしい。


「じゃあ、三人でプレゼントを探しに行ってたの?」

「俺とリティアは一緒だったけどお父さんは幽香お姉さんのところに行ってた」

「へぇ...?」


ジッとアルマを睨むと困った表情をしていた。相変わらず顔に出やすい。


「イラ...勘違いされる言い方しないでくれ...」

「じゃあ何をしに行ってたの?」

「幽香にいろいろ教えてもらってたんだよ。俺ってばセンスないし」


あ、自覚あったんだ。本当にプレゼントのセンスないのよね。本当に祝ってくれてるの? って思えてくるぐらいのセンスのなさ。気持ちはとてもこもってたから嬉しかったけど。


「と、とにかく! まああれだ...その...」

「お母さんお誕生日おめでとう!」

「おめでとう!」

「お前ら父さんまだ喋ってるだろ!?」

『意気地なし』

「うぐっ!?」


いい成長かは分からないけど元気に育ってくれて嬉しい。最近、アルマがバカにされることが多くなったけど。

それにしても......なんというか。親子ね。貰っておいてなんだけど、センスが少しアレね。


「木の実ね...」

「うん! 地底にはないから!」

「珍しいでしょ!」

「そ、そうね。ありがとうリティア、イラ」


そうだった...地上に全然行かせたことないからこの子達にとっては木の実ですら珍しいんだ...。

ま、まあ珍しいものをプレゼントにしようとするセンスはいい方なのかな? いい方だと思いたいな...。


「それでアルマは何をくれるの?」

「なんか軽く諦めた表情すんのやめろ。俺はただの花だよ」

「......意外。割と今回はセンスあるわね」

「それ...幽香にも言われたよ...とにかく誕生日おめでとうパルスィ」


そう言って照れくさそうに彼が差し出したのは一輪の白い彼岸花。なぜ一輪?


「悪い...幽香に咲いている場所を聞いたんだが一輪しか咲いてなくて...」

「ううん。十分嬉しいわ。ありがとうアルマ」


それにしても白い彼岸花か。あまり見たことなかったけど綺麗な花。あ、そういえば。


「花言葉は?」

「やっぱ気になる?」

「あ、ちゃんと知ってるんだ」

「そりゃあ...花言葉で選んだから」

「ふ〜ん。それで花言葉は?」


恥ずかしいのか頬を赤く染めていた。

赤くなるほど恥ずかしい花言葉なら違うのにすれば良かったじゃない。

少し面白かったから催促するとボソッと聞こえにくい声で呟いた。


「思うは...あなた一人...」


それを聞いた私は少し顔が火照るのを感じた。幸いなのはリティアとイラには聞こえていないということ。


「お父さん聞こえないよ」

「もっと大きい声で言って!」

「だ、大丈夫よ。私は聞こえたから...」

「え〜! なんて言ったの?」

「ひ、秘密よ...ね?」

「あ、ああ...」


少しだけ気まずそうな二人にイラとリティアは気づかないのであった。



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