04 種の棲み分けと勢力圏の拡大2
運任せの異世界計画は進展が無いよと言う事で新人類の勢力争いの話に戻る。
「まあ、すべてが上手く行くわけはないか。美里は如何なの上手く行っているかい?」
「日本から時計回りでチベットかブータン辺りまではまぁ何とかなってるわ。満州が少し厄介かな。漢族の難民に南側の奴らが混じっていてまだ嫌がらせが続いているわ」
「でも現生人類なら新人類にして取り込めばよいし、新人類なら敵だから見分けられる。住民は既に自らの眷族として新人類にして取り込んでいるんだろう?対処できるじゃないか」
「だから嫌がらせと言っているのよ。本格的な侵攻では無くて散発的にテロリストを送り込む感じで油断を誘っているのかな?何も遣らないと示しが付かないのも有るかも知れないわね」
「何れ侵攻するぞって意思表示か。そう言えば沖縄にも時々送ってきていたな。最近の話は知らないけど」
「周辺国はどこも同じ目に遭っているわ。だから日本が周辺国を纏め易いのだけれど満州程ではないわね」
「まぁ、そういう奴らだよな。まだ最盛期の強い頃のつもりのままなんだろう。他には?」
「満州の朝鮮族は同族出身の新人類のマスターの影響かみんな出て行ったみたいね。民族の希望の星みたいよ。孤児で漢族に拾われて成体になってから分岐したみたいで、出自は覚えている様だけど本人は漢族のつもりでいて朝鮮族を良いように使っている感じね」
「半島出身者はそれでも満足なんだろう。でもしぶといよな。今頃は磨り潰されていると思っていたが。調子に乗って隣の半島から出て行った時はもう戻ってくるなと思ったもんだが戻ってくる可能性が出来たって事か」
「満州しだいね。半島人が出て行った半島を抑えて遼東半島から瀋陽までは奪還したけれどその先は緩衝地帯として残したしね」
半島人はシナの覇権を握る為に遼東半島に侵攻して、満州の支配勢力は北京を支配する軍閥と半島人をぶつけて3勢力で均衡を保とうと図った様だけど半島人に勢いがついて一気に北京近くまで侵攻した。
侵攻初期の半島政府は半島から動く気配は無かったがまず搾取されていた下層階級が半島から逃げ出し搾取する側に成ろうと遼東半島に向かい始めた。
次に搾取対象を求めて上層階級も現地に移り始めて最終的には半島政府は勢いに乗って拠点を瀋陽へと移して半島の半島人は減って入れ替わる様に遼寧省から難民が移った。
「シナの覇権は目の前だ」とか半島人のメディアが煽っていた。
半島人は勢いに乗って我先にと雪崩れ込むようにしてシナに向かったのだ。
そして10年ほど前に満州は策略により一気に半島を支配下に置き、半島人の殆どを半島から追い出した。
日本政府は流れてきた難民は済州島に送還した。
満州政府は海を挟んだ済州島までは占領せず、遼寧省は遼東半島から瀋陽辺りまで奪還した。
そして半島人は朝鮮半島を失い次いで遼東半島から拠点の瀋陽からも追い出されて元からの土地は済州島と僅かな島のみとなった。
一時は勢いで遼寧省とそこから北京に至る土地の一部を支配したがそこまでだった。
こうして半島人は北京にも天津にも到達出来ずに当初の勢いを失って半島出身者も朝鮮族と称されるようになり現在に至る。
半島に僅かに残っていた半島人も同族出の新人類の真祖がシナに現れると半島から出て行った。
半島人は勢いの有った時にシナの占領地域で調子に乗って色々やらかしていて恨みを買っている。
半島出身者は「日本が支援していればー」「日本に追い込まれてー」とかほざいているらしい。
どうやら自らの所業について日本に責任転嫁をしている模様だ。
日本は関わりたくないから何もしなかったのに!
「ロシアの新人類は3人確認されていて西側は2人いて何とかなっているけれど東側は大陸の人口が希薄な上に出身が樺太なの。海を渡って勢力を拡げないといけなくて他の2人からは随分出遅れた訳ね。その出遅れた1人とは接触してサポート中だけれど少数民族出身だからか西側の2人とは別れそうなの。民族的にはアイヌに近い様ね」
「ロシアは日本と違って新人類への切り替えは促さなかったからな。モンゴルは促していたよね」
「あそこは1人だけだったし揉めなかったのよ。ロシアは政府の干渉を嫌って西側の2人が競い合って東側は御座なりに成って今に至る感じね」
「ロシア政府は何もする様子はないの?」
「西側の2人の周辺が足を引っ張りあって動けない様ね。ロシア政府は新人類同士の争いには関わらない様に取り決めたみたいね。モスクワの政治家もどちらかの新人類に成っている訳だしそうなるわよ。シナみたいに内戦に成っていないだけましなのよ」
「でもそれってモンゴル人や満州人に東側はあげますって言っている様なものでは?だってまだ現生人類のままシベリアとかにいるんだよね。新人類が取り込んだら自分の勢力に組み込めるって事だろう?」
「そう、それで私たちは直接乗り込むのは嫌だから樺太出身の新人類のマスターをサポートしているのだけれど。島は何とか押さえてウラジオストックを大陸の拠点として国境沿いに勢力を拡げて現在はバイカル湖を抑えた所ね。何とかなりそうで一息ついている所かな。大陸の北側は少しづつ押さえて西側へは行ける所まで勢力圏を拡げるつもりよ」
「ふ~んそうなんだ」
色々聞いてみるとロシアは国内の経済圏も西はヨーロッパと東は日本と結びつきが強くなっていて分かれている事とロシア政府が国内の新人類の勢力争いには関わらない事で西と東に分断されつつ有る様だ。
日本は東側の新人類の勢力が弱くなる事が好ましくないと考えていてサポートしている。
でもなんか西側の新人類勢力からの反発とかが無さ過ぎて何か変な感じだ。
このまま東側の新人類の勢力圏を拡げても良いのか?
「それにしてもかなり大陸の奥まで行っている様な気がするけど?」
「西側の2人の御蔭ね。舐められている間に拡げれるだけ拡げるわよ。まだ現生人類の人達の所に行ってこちらに繋がれと言うだけなんだけどね。新人類の方が優位にあるから逆らえないのよ。新人類同士だとそんなに簡単にはいかないけれどね」
なんか日本の影響圏か勢力圏にそのまま組み入れそうな勢いだ。
少し不味くないか?
東西に分裂気味とは言えロシア政府が黙っているとは思えないんだけど。
「日本の影響圏にこのまま組み入れそうな勢いだけどその2人もそろそろ気が付くんじゃないの?」
「とっくに気が付いているわよ。政府の中枢を握っているから大丈夫だと思っているんじゃない?まだまだ甘く見て舐めている訳よ。それと2人とも西側を重視しして維持するのに手一杯な感じで東側にまで手を伸ばし難いのもあるみたいね」
「ウクライナ当たりの新人類勢力の影響かな?」
「そんな感じね。今後はどうなるか分からないけど、東側がロシアから独立するような動きが無い限り現状は維持出来そうよ。今の所、独立まではする気が無い様ね」
「そうなんだ。でも何もしてこない訳ではないだろう?国の威信もあるわけだし」
「軍の上官なんかが送り込まれて来るけど新人類のマスターが行けば平伏して組み入れて御仕舞よ」
「そうなの?そんなに簡単に平伏するものなのか?」
「新人類のマスターが出て行けば唯の新人類なんてそんなものよ」
「私は国会でそんな風に扱われた事は無かったが?まだ新人類になっていない議員もいた」
「それはあなたがニコニコして威圧しなかったからよ。黙れと一言でもあったらそこで沈黙したと思うわ。そうなれば面白かったと思うけどね」
「いやだって思惑通りに進んでいたからニコニコして誤魔化すしかないだろう?だけど威圧するのも良かったかもしれないな。結果は似た様なものだったかもしれない。でも私の威圧は平伏してしまう程のものなのか?」
「新人類なら少しは抵抗できるけれどそれでも少人数なら無理ね。優位差がそこまで有るのよ。私達と他の人々とはそこまでの差が有るのよ」
「ん~機会が有ったら試してみるかな。でも幼体の新人類の真祖は殺されたり……幼体だからか。シナでは成体でも殺されていただろう?」
「数が居れば何とかなるのよ。猛獣を相手にするのと一緒よ。でももう現生人類は新人類になれなかった人と幼体以外は残ってはいないからそろそろ新人類の分岐も頭打ちでしょうね。あなたの言っていた人類の可能性を潰す行為も減るわ」
「日本は幼体の真祖を何人保護しているの?」
「日本が保護しているのは今の所は10人ね。成体までは保護して出来れば日本の魔素生命と繋がって貰って駄目なら出身地域に戻します。新人類のマスターなら生き残る可能性はあるでしょう」
「種も違えば仲間にもならない奴にそれ以上はする必要が無い。それで駄目ならここにいてもどこかに飲み込まれるだけだ」
少し冷たい様だけど新人類同士の関係の基本は競争関係で敵か敵で無いかしか区別は無い、味方に成るには意識的にそのような関係を築かなくてはいけない、昔の様に同じ魔素生命に繋がってはいないのだ。
「それから満州は3人とあなたは言っていたけどそれは少し前の話で今は5人確認しているわ。それで日本とは少し違う形だけど共存しているのよ」
「日本は国の魔素生命で間接的に繋がって仲間と成っているけどそれとは違うの?」
「国の魔素生命とも繋がっているけど新人類のマスターだけが繋がる式神みたいなのを作って結びつきを強化しているの。台湾もそれをまねて今は新人類のマスター2人で勢力を分けているわね。シナがあれだから争っている余裕は無いって事ね。他の周辺国も似たような感じに成って来ているわ」
「それはいい方法だ。20年以上前だけど研究した事が有る。日本も新人類が増える予定だから検討した方が良い。新人類も勢力が小さい間は不安定に成るし少しでも安定するなら試す価値はある。出身地に戻すと言っていた話もこの方法で繋がれるなら戻さなくても良いかも知れない」
「私も検討の価値ありだと思うけれど式神の条件をどうするのかと式神を誰が創るのかが問題なの」
「式神を創るのはシイャン師匠にでも頼めば良いけど条件は良く考えて持ち寄って再検討かな。急ぐ必要はない。半年後にでもまた集まれば良いからその時決めよう」
「それで良いわ。次の会合までに各々条件案を決めて条件の擦り合わせをしましょう」
「師匠、そちらはそれで良いですか?」
「神使専用の式神を創るから付与する条件を次の会合の時に提示すれば良いんだな」
「創るかどうかはまだ検討段階ですけど魔素生命への付与条件だけでも次の会合で決めましょう」
どうやら師匠達は新人類の分岐点を神使と呼んでいるらしい、少し宗教臭いな。
「了解だ。それで宇宙の方は如何成っている。上手く行っているとの情報はあるけど何を遣っているのかは入ってこない。計画も宇宙に生活圏を拡げる事位しか聞いていない。資源とかは入って来ているから上手く行っていそうだとは分かるけどな」
話の流れは私がこの会合で次の段階に進めようとしていた宇宙計画となった。
「う~ん。ここだけなら良いか。ここだけの話ですよ。良いですかまだ公表は時期尚早だと思うので。宜しくお願いしますね」
「了解した。それでどんな感じなの」
「太陽系は押さえました。拠点となる宇宙コロニーを太陽系中にばら蒔き済みです。そろそろそちらを引き込もうかと相談していたところですね。魔法で何とかしていますが人手が全然足りてませんから」
「もうそこまで進んでいるんだ。それでどんな人材が必要なの?」
「魔法が使えるのは前提条件として組織的に動かせるとしたら初期は自衛隊から出す事になると思うけど大丈夫かな?美里の方は魔法の底上げは予定通りに進んでいるのか?」
「自衛隊の方は何とかするわ。魔法の底上げは予定通りと言いたい所だけど予定では8割だけど実際は6割ね。私達から上の年代が今で充分だと思っていて私達の親の世代より上の世代は年を取り始めて今更そんな苦労はしたくないと言った感じね。いつ死んでおかしくない訳だからそんなものよね」
「6割なら何とかなるのかな。長期的には問題は無さそうだ。世界情勢が許すかどうかだね。宇宙に逃げ出してしまうなら問題は無さそうだけど。日本圏はこのまま地球の拠点として確保して置きたいからね」
「こちらもそのつもり。あと公表ってどのレベルのつもり?日本だけそれとも世界中の話?世界に向けては流石に時期尚早ね。日本国内もまだ無理かな。面倒だけど人選して絞り込んで秘密裡に進めるしかないわね」
「まぁ、そうだろうな。取り敢えずは月の開拓だ。今は月の裏側から地下に向けて居住区を拡大しようとしている。表向きは避難場所の確保だね。宇宙コロニーの開発は手を抜かないでよ。拠点としてばら蒔いているしこれからもばら蒔くんだから運用ノウハウは大事だ。宇宙艇の開発も宜しくね」
「宇宙艇の開発は急ぐの?規模はどのくらい必要なの?」
「できるだけ早くとしか言えない。規模は私達では判らない。必要とするのは主に君達だからね。今の所は個々の魔法使いに頼って宇宙コロニーや転移陣をばら蒔くだけだから良いけど拠点開発となるとそうもいかない。何れは君達も加わる訳だから宇宙艇は必要だ」
「主に私達の為の宇宙艇な訳ね。了解したわ」
「もしくは私達の様に一般人の魔法技術のレベルを宇宙艇が必要がない程引き上げるかだけど」
「それは無理、そんな労力が有ったら宇宙艇を開発するわ。魔法だけでそこまで出来るようにしようとしたら今の日本社会が成り立たない。役割分担で成り立っているんだからそれは維持しないと」
「そうだね。私達も君達が日本社会を維持しているから宇宙開拓に特化して進める事が出来る。役割分担だ」
「日本での公表は何時頃にすれば良いの?」
「それは君達が中心になって進めて良い。月の開拓状況と世界情勢によっては事後承諾で構わない。私は地球に居るとは限らないからね。友好国への公表も君と師匠に任せるから経過だけは連絡して」
「月の開拓はどうすれば良いの?」
「月の開拓にどの程度の人間を投入するかだけどまずは自衛隊の工作隊ぐらいで様子見かな。月に行くのも転移するだけだし地下に居れば開発中の地下街と変わらない、重力も飛ぶ魔法の応用で擬似重力を下向きに働かせて調整すれば問題なしだ。準備が出来たら連絡を入れてくれれば直ぐに手配するから宜しく」
「了解よ。細かい事は担当部署で擦り合わせて貰いましょう」
「こちらの窓口は自衛隊の宇宙部の開拓課だったかな。開拓自体は表向きは民間の企業が秘密裡に遣っているから国家予算はついていない。関連商社に資源を降ろして資源ロンダリングしてから市場に流して資金を得ている」
「そこら辺りは分かっている筈よ。時々足を引っ張るのが好きな連中が何かしようとするのを私の名前で止めている報告書が上がってくるから」
「宜しくね。書類上は問題ない筈だけど役人は面倒だからね。特に昔から居座っている奴らは問題がなくても何回も嫌がらせにあら捜しをするんだ。仕事を進めるための権限を自分の権限と勘違いする奴が多いだろう?大学にも居るからなぁ」
「そういうのも使い方によって役に立つのよ。まあそんな話はどうでも良いわ。用意が出来たら進めるから宜しくね」
「ああ進めて構わない。進捗状況を把握する必要があるから定期的に会合を開こう」
取り敢えず私が進める必要のあった宇宙計画についてはここまでだ。
後は定期的に開く会合で計画の進行状況に合わせて対処する事としよう。
「宇宙関係の話はこんなところかな?他には何かあったかな?」
「新人類の存続に関する事なんだけど息子は順調に大きくなっているわ。新人類の第2世代は順調に育成中ってところね。あなたは如何なの」
「美織と美香に聞いているんだろう?まだ生まれたのは1人で今年から順番に増やそうか私以外が計画している所だ。この先は分からないけど今は地球で育てたいから色々計画しているよ。未だにマスコミが嗅ぎまわっているから月とか火星で育てる訳には行かないし」
「新人類の頂点にいるのを良い事に若い娘を6人も囲って好き勝手しているって書かれているわよ」
「6人に囲われているんだよ。『種の繁栄のために』とか6人とも言っていてね。黙っているとまだ増えそうなんだよ。映美なんて遺伝子的にもう少しバラツキが有った方が良いとか言い出してね………」
「娘達に話を聞きながら一緒に笑っているわよ」
「宇宙の方に目が行かない様に操作している訳ではないよね」
「何もしていないわよ。でも都合が良いとは思っているわ」
「そうなんだよ。だから私も適当にあしらっているんだけどさ」
日本のマスコミは下世話な話が好きなので機密を隠す時には凄く役に立つ。
私が見つからない時は新しく若い娘を囲って隠れ家に潜んでいるとか詮索している。
月や火星に行っても大学で研究していてもマスコミ関係者は私に会えないのになぜか若い娘を囲って隠れている事にされている。
海外の新人類の真祖のハーレムを例に持ち出して私も同じだと妄想記事を垂れ流している。
紙面では嘘かどうか読者には分からないから碌に調べずに好き勝手しているのだ。
ネットでは男の真祖のくせに子供が少なすぎるとかこれでは新人類間の競争に負けるとか………
御蔭で誰もが面白がるだけで信用していないから仮に宇宙開拓の現状がマスコミに洩れても殆どの人は信用しないだろう。
誰もノンフィクションとは思わずにフィクションと思うだろう。




