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03 種の棲み分けと勢力圏の拡大1

私が大学の研究室にいる間は特に問題は無い。

私が眷族の3人を連れ歩いても学生達の視線には好奇心が有るだけで嫌悪感とかは感じない。

大学上層部と魔法学部の教授練は状況を知っているので同じ感じだ。

他の連中は嫌悪したり妬んだり羨ましがったり興味を持ったり無関心だったり色々だ。

嫌悪したり妬んだり羨ましがったりが強い連中は私の魔素生命には繋がれない。

必然的に元妻の魔素生命に繋がるか新たに存在が確認された未公表の幼体の真祖の魔素生命に繋がる事になる。

この幼体の真祖は親と周りが隠していたため今回の政府発表で炙り出された感じだ。

まだ幼体のため自分を守る事が出来ず危険なので公にされていない。

親の一人が天谷師匠の弟子で自分の子供が何かおかしいと師匠に相談して発覚したのだ。

師匠は新人類がどんなものか私からの情報で知っていて保護の必要があると判断して秘匿していた。

親は師匠からの説明を受けて自分の子供の魔素生命に繋がって新人類になった。

天谷師匠の弟子を中心に秘かに仲間を増やしてきたが政府発表後に天谷師匠を通して秘かに日本政府と交渉して子供が成体になるまでは公にしない事と安全保障を取り付けた。

天谷師匠夫妻と家族は既に彼ら側の新人類に成っていて彼らを守護している。

私は天谷師匠夫妻に会っても元妻側に付いたんだなと思うだけで彼らには気が付いていなかった。

新人類になった事は何となく分かっても自分以外の新人類としか分からない。


日本政府は選択肢が増えて子孫が生き残る可能性が増えたと判断していた。

世界中で一神教の宗教原理主義絡みの新人類が台頭して勢力を拡大し始めてそれが国の枠を破る勢いで、何かきな臭い感じが漂って来たからだ。


分岐前の人類は現生人類の魔素生命と繋がっていたので群れとしては大きすぎて纏まりは悪いものの群れであり群れの仲間との意識が有って抑制がそれなりに効いていた。

文化的な抜け道が有ってシナみたいな例外はあったものの殺人は禁忌となっていて枷として働いていた。

新人類の発生はこの枷を外したため新人類の異種間闘争が始まりかねない状況だ。

エルサレムの様な聖地奪還を目指す群れは好きにさせておけば日本人には関係ない。

だがシナの様に世界は自分たちのものだと言いだしそうな文化圏の新人類は何をしだすか分からない。

異種間では敵か味方かではなく敵か敵で無いかでしかない、味方は同種しかいないのが基本だ。

日本人は国の魔素生命と繋がる事により異種間でも味方に成る事を今の所は選択している。

しかし調査によるとシナと一神教系の新人類の一部はこれらを積極的に排除しようとしている。

彼らは古代魔法人の様に繋げられる魔素生命には何でも繋がって動物も仲間にして群れを拡大するのとは別の方向に向かっているのだ。

異種を排除する事自体は別に構わないが、同種以外の種は奴隷だとするシナに現れた様な新人類が優勢に成った場合は衝突は必至だ。

こちらが敵対しなくても相手が積極的に敵対してくる状況だ。

そして残念ながらシナの状況はそうなりつつある様にしか見えない。


政府発表後に幾人かの日本人が海外の新人類と接触して新人類に成ろうとしたが拒否あるいは失敗して日本に戻っている。

接触した新人類はキリスト教系で比較的穏健だったのだがまず現生人類の魔素生命以外の魔素生命との繋がりを断つ事を要求されてここで日本人の殆どが脱落して、次に新人類の魔素生命と繋がるのだが繋がろうとしても繋がれなかったのだ。

どうもメンタリティーが違い過ぎて群れに馴染めずに繋がれなかった様だ。

以前、海外から日本の魔素生命と繋がろうとして繋がれなかったのと同じ現象だ。

問題なのはこの海外で新人類に成れなかった日本人が再度日本の魔素生命と繋がろうとしても繋がれなかった事だ。

彼らは日本人として日本の魔素生命と繋がっていても日本人の群れとは馴染めなくなっていたのだ。

それが理由で海外で新人類に成ろうとした訳だがそれも駄目で日本国籍を持つだけの現生人類に成ってしまった。

群れに馴染めない事は新しい群れを創る理由にはなっても別の群れに馴染める理由にはならない。

日本の魔素生命に馴染めない日本国籍者は元々少数ながら存在する。

彼らは日本では新人類には成れないだろう。

選択肢としては海外に出て馴染める新人類を探すか、このままでいるかだ。

上手くすればシーラカンスの様に生き残る事になる………のか?








日本人はほぼ元妻側と私の新人類に分かれた。

日本人の成体の8割がたは元妻側となり1.5割は私側、後の0.5割はその他とされた。

まぁ、入れ替わり自由なのでこの先がどう成るかは分からない。

今の所は私の思惑通りの進み方だ。

私は新人類の真祖に成って妻と別れてから色々考えたのだ。

このまま同じ様な群れに分かれても同族争いみたいに成るだけで先は見えている。

最悪はシナの様に成って混乱するだけだ。

そこで多様性を保つ多数を纏める群れと目的を明確にした少数を纏める群れを分けて互いを干渉しない様に出来ないか考えて日本政府と交渉した。

日本政府の目的は国民を新人類の魔素生命に繋がらせる事により現生人の魔素生命から離脱させる事で他国や他の新人類から日本を守る事だ。

私の群れは地球圏からの避難先の確保と生活圏の宇宙への拡大を目的とする事とした。

地球上の日本圏の確保はもう一つの群れの担当だ。


既にUSAやロシアに余裕は無くなっていて国際宇宙ステーションは日本しか使っていなかった。

日本は定期的にロケット打ち上げ等の欺瞞工作をして宇宙計画の進行度合いを誤魔化していた。

欺瞞ではない本当の移住検証用宇宙コロニーも設置して実験を繰り返しデータを取っていた。

他国は監視衛星を打ち上げて地上を監視してはいたが現状で宇宙に乗り出していたのは日本だけだった。

これらを実行しているのは元妻側で外からは人口の8割を握った彼女たちが優勢に見えているのでこれが本命に見えるであろう。

実の所、日本もゲートとバリアとシェルター等の魔法を開発していなかったら欺瞞レベルの事も達成できなかったに違いない。


日本政府の目的は避難先の確保で宇宙コロニーと水中基地はその産物だ。

魔法を使う事を前提に造ってあるので他国には使い難い仕様にはなっているけど使えない事はない。

何れは友好国にも一部開放する予定で開発を進めて造っていたからな。

他国の魔法の開発状況を秘かに調査してそこまではしなくて良さそうだとなった事で表向きは規模が縮小となって実証試験を細々と遣っているだけとなったが裏では私の宇宙計画に利用していた。

私は共同研究の成果として関係者の了解の下で自分のアイテムボックスに宇宙コロニー等の開発の諸々の成果を入れて置いた。

保管場所に困って分解して廃却しようとしていた分も確保して置いたが帳簿上は廃却済だ。

アイテムボックスに入れて保管して置けば良いものを組織としては在庫調整の度に面倒なので廃却に決めてしまった物がたくさんありこれも確保した。

この様に表向きは廃却処分にして私と私の協力者が必要な物を確保する形になった。

法律上は分からないけど横流ししている訳では無く私に忌避感が無いから問題なしと判断している。


私は新人類の真祖に成ってから凡そ3年間1人でコツコツと宇宙での勢力圏の拡大を行ってきた。

宇宙仕様のバリアとシェルターを使った宇宙での遊泳は飛ぶ魔法が使えれば問題なく出来る。

そもそも飛ぶ魔法は上向きの擬似重力で浮かせて無重力であるかの様にして移動方向への擬似重力で移動して飛ぼうと思い付いて修練して身に付けたものだ。

身体能力が低かったため危ない思いをしたり、身体能力の向上を図ったり、身体能力の足りない部分を魔法の技術で補ったりして大変苦労して身に付けたのだ。

それに比べれば無重力下では移動方向に擬似重力で動くだけなので簡単なのは当然である。

宇宙で困るのは慣れるまで上下の感覚が無くなって混乱するぐらいだな。

初めの頃は自衛隊と共に宇宙仕様のバリアとシェルターの検証も兼ねて練習したものだ。


まず月を目指す月までは38万㎞、宇宙仕様のシェルターを展開して宇宙に出て月に向かって魔法で移動だ。

速度はいくらでも上げれそうな感じ、4時間ほどで月に到着してアイテムボックスから以前開発した簡易基地を出して月の裏側に設置して転移して一旦家に戻る。

後は暇を見つけては月に転移して基地をアイテムボックスから出して設置していくだけ。

細かな調整とかは私では無理なので設置だけで後は来る予定の人に任せる。

これらの簡易基地と基地は水中基地と称して宇宙開拓用に開発したもので機密性は満足している筈だが検証が必要だ。

それで簡易基地の方は元々少人数用の半球状で強度的にはまず問題は起こらない筈なので予定通り私が空気を入れて検証した。

因みに水中基地と兼用なので出入り口は下面に有り月面に直に設置すると使用不能なため出入りには転移かシェルターを使う。

次に火星を目指す火星までは大接近で約6000万㎞、月までと同じ様にとはいかなくて宇宙コロニーを適当に配置しながら大接近の時に火星に行ける様にした。

そして大接近の時に火星に渡って月と同じ様に基地を設置する。

1人だけでは流石に全ては出来ないので沃土に計画を相談して動いて貰った。

私と沃土は裏で秘かに協力者を募って個々に協力を取り付けていて政府の発表後に本格的に動ける様にしていた。

協力者の個々には全体計画は伝えずに個々に別々の計画として動いて貰っているので全体計画が発覚する事は無かった。

全体計画を伝えたのは防衛省の一部の幹部だけだ。







そうして政府発表が終り新人類への移行もほぼ完了した頃から本格的に月計画と火星計画が始まった。

生活圏の宇宙への拡大は私がした様にコツコツと進めるしかないが人が増えたので急速に進んだ。

月と火星の開拓も人が増えるに従って急速に進んだ。

一旦軌道に乗り始めたら月と火星間だけで進めることが出来る様に成ったから地球に居たら何も分からないだろう。

そうやって5年経た頃に太陽系の惑星の衛星軌道には拠点となる宇宙コロニーを設置して転移ポイントを確保した。

金星も細々とではあるが開拓が始まった。

ただ開拓が本格化するに伴い人手が足りなくなってきて行き詰まり感が漂ってきた。

私側の新人類だけでは人手が足らず月も火星も生活拠点としては貧弱な状態で機能が充分では無かった。

太陽系中にばら撒いた宇宙コロニーも拠点としては充分に機能していない。

計画は次の段階に進める事になった。


日本勢力圏の更なる発展を目指して成体となったもう一人の新人類の真祖の顔見せも兼ねて秘かに新人類の代表どうしで現状確認の会合を開く事になった。

この5年間、私は宇宙計画に専念していたので地球の事は表面上の事しか関わっていない。

元妻側には情報を流していないのであちらは宇宙計画については上手く行っているとの伝聞情報しか知らない筈だ。

もう一人の新人類の真祖は成体になったばかりで顔見せだけ、仕切っているのは天谷師匠とその周辺だ。

真祖すべてが揃って会合を持ったのは初めてで元妻と摩耶と名乗った娘は私を見た時にビクッと反応していた。


「天谷師匠、お久しぶりです。最後に会ってから5年近く経ちましたね」


「おう、久しぶり。もうそのぐらいか。そうだな、お嬢が9歳ぐらいだったからそのぐらいだ」


「女の子だったんですねぇ。この先大変そうだ。中近東やアフリカだと幼体の新人類は男は殺されて女は取り合いみたいですね」


「何を勘違いしているのか力の象徴みたいに思われているんだ。幼体なら好きに出来るし異種だから何をしても枷が外れていて気にならない。酷いものだ」


「可能性を潰すようなものなんですが。日本政府は保護しようとしているんでしょう?」


「日本は東南アジアと南米で何人か保護している。インドだと生神様扱いで信者が集まるんだがな」


「他の地域はどのような感じですか?」


「旧先進諸国では保護される傾向が強い、東南アジアはインドの様に祭り上げる人達もいれば迫害する人達もいる。信仰する宗教とかも関係する」


「一神教の原理主義絡みが厄介そうなんですよ。後はシナですね。まぁ、シナのあれも宗教みたいなものか」


「現状の力関係では成体であった者が有利、時間が経てば長く生きる幼体であった者が有利かな競争者が死んだ後で色々出来るからね」


「地球上で争っていればそうなりますね。だから宇宙に出る事にしたんですから」


「シナの争っている片方なんだけど半島出の子孫みたいなんだ。揉まれて消えそうに見えたんだけどねぇ」


「半島から出て行って縁が切れて安心していたのに……満州は3人に増えたみたいですがやっぱり人が多いからですかね」


「インドなんか乱立しているからね。でも神様が降臨した様に受け止めているからかな混沌としているけど不思議に調和を保っている。信仰者同士の個人的な争いはあるけど全体の争いにはなっていない。下々は争っても神々はそうでもない感じだな。混乱はしているけどシナみたいに殺し合うよりはマシだ」


「私もインドに行けば神様扱いですかね?」


「行かなくても神様扱いなんじゃないかな。アスラとかかもしれないけど」


「ま、そんな話は良いか。異世界計画の方は進展は有りますか?」


「進展は無いね。向こうから来た人が何人か跳ばされた様だけど。戻ってこないから。予想と違って転移魔法では戻れないのか。個人の意志で戻らないのか。はたまた戻れない状況なのか」


「師匠が跳ばされれば分かるんですけどね」


「私はこちらの世界に属しているから跳ばされ難いんだよ。シイャンもこちらが長いから難しそうだよな。離れたくはないしね。こちらに戻れなかったら困る。誰か適当な人が跳ばされないかなぁ」


天谷師匠が異世界から戻って以来、多種多様の異世界人がこちらの世界に跳ばされてきている。

まぁ、以前は異世界人の存在も知らず気付かず記録に残っていないだけの話だ。

魔素乱流期の魔法が使えない状況では人としての能力が保てない種も多いので異世界人の個体が少し来ても以前の地球人では異世界人を人とは認識していない筈だ。

日本政府はこれらの異世界人を保護していて国有地の森林の一部を立ち入り禁止にして封鎖し、居住地にしている。

今の所、国民には存在は明かしているけど詳しい情報は開示していない、妖怪みたいな姿形のものもいるため当面は公開する予定がない。

異世界人にも状況を説明していて彼らは理解しているので居住地から出ることなく暮らしている。

私は『異世界と上手く繋がれないかなぁ』と考えて転移魔法を彼らに教授する様に師匠に話し、跳ばされてあちらに戻るようなことが有ったら可能であれば転移してこちらに戻れないか交渉して貰っていた。

元々運任せで神頼みみたいなものなのであてにしていたわけではない。

ただこちらに来た異世界人が跳ばされて戻っている可能性が有るので戻った人が転移魔法でこちらに来れないか試しているだけだ。

異世界に行く手段が確立すれば選択肢が一つ増えて上手く行ったら儲けものなのだ。

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