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23 日本とアラスカの関係は……

日米が開戦してから五年も経つと東アメリカでは国家が分裂して瓦解した現状を認める意見も次第に大きくなっていたのだがアメリカ合衆国の再興を目論む陸軍士官の始祖はそれを認める様子は無かった。

東アメリカでは国家が分裂して瓦解した現状を認めようが認めまいがそれが日本の所為で起きたとの意見は一致していたので「日本を許さない」との世論は収まる事は無かった。

日本の所為ではないと考える者達が独立して西側の国々となりその結果として国家が分裂して瓦解したのだからそうなるか。


東アメリカ国内は日本を敵とする事で結束が強くなるが西側の独立した国々との乖離は決定的だ。

現在、実際に揉めているのは自国と接している元同胞の国々なのだが彼等の頭の中では日本に唆されて独立した同胞との扱いだ。

そんな感じなので東側は正常に戻そうとアメリカ合衆国の再興を掲げて西側の人々を懐柔しようと画策しているのだが上手く行く筈も無い。

西側の独立した国々ではアメリカ合衆国の再興なんて誰も望んではいないのだ。

独立した始祖達は頭の上を押さえつけていた重しが取れて清々していた。

元の鞘に戻るなんて事は考えるのも嫌な話でそんな選択は存在しないのだ。

そもそも自らの意志で独立したと考える者達にとって独立が日本の分裂工作の所為との意見は侮辱に等しい。

まるで自分達が日本の工作員に踊らされた馬鹿かあるいは自国が日本の傀儡か保護国みたいではないか。

ハワイですら一時的な食料支援を求めただけで政治的にも軍事的にも独立しているのに。


そうして東アメリカと西側の独立した国々との溝は深まっていった。

東アメリカはそれも日本の裏工作の所為にするから益々溝が深まる一方の悪循環だ。

そうして東アメリカの「日本を許さない」との憎しみの声は高まる一方となった。


日本は東アメリカの非難に対して黙っていたら認めた事になるとの事で「切欠となった戦争を始めたのはアメリカ合衆国だよ」とか「分裂した主要因はアメリカ合衆国の国内問題で日本とは関係ないよ」とか「難民への対処を間違えたね」とか詳細を交えて反論していたがそれを認めたくない人達が東側に集まっているので事実をいくら積み重ねて説明しても挑発している様なものだ。

それを認めれるのならここまで国が分裂しなかった気もするな。


東アメリカ人は自分の在り様を一番だと考えていてそれを他者にも押し付けるきらいがあり、現状が思い通りにならない怒りの矛先を日本に向ける事で群れを纏めていた。

奴等は日本さえ言うことを聞いていれば目論み通り行ったのにと考えているのだ。

要は日本がアメリカ合衆国からの非難を認めて屈していればアメリカ合衆国は健在で上手く行っていたと。

そうして東アメリカは上手く行かない事を全て日本に押し付けるシナ並に日本を糾弾し続ける勢力となってしまった。

関係修復は……まず不可能だな。








日本と東アメリカの関係が悪化する最中、日本とアラスカの関係は比較的良好に進んでいた。

揉めているのは行方不明の子供達に関する件ぐらいで問題なのは同時期に行方不明になったとしても火星に送り込まれているとは限らない事だな。

生存しているかどうかは同じ魔素生命に繋がっていれば確認出来るのだがどこにいるかまでは分からない。

一縷の望みを託して子供が見つかればまだしも見つからないと人によってはこちらが隠していると思い込み反発するのだ。

火星で見つからなければ地球のどこかで保護されて育っているって事なんだが地球では探して見つからなかったから納得できないのだろう。

確かに手続き上のミス等は考えられるので居ないと断言は出来ないが意図的に隠す事はしていない。

ミスを補うために申告の有る限り何回でも照会する事にしているから未だに見つからなければ火星に居ないのはほぼ確定だ。


火星に送り込まれた子供達は全て把握している筈なのだが漏れが有るのか?

個人的に子供を隠す者が居ないかだが現在の火星では人は全て地下の居住区に住んでいて隠遁できるような場所はない。

地上はまだ人が普通に住める環境にはなくて魔法が使えない幼体の住める所ではない。

現在の火星では単独で幼体を隠しながら育てるのは不可能に近い。

だが地球でなら可能だ。

火星に送り込まれた子供達を全て把握したつもりでいるが調査の最中に子供を連れて地球に戻っていれば調査からは漏れる可能性は有った。

短い期間では子供と信頼関係は築けないだろうとして見過ごされてきたけど不可能かと言われるとほぼ不可能と経験的に言えるだけで例外は有るかもだ。

それで調査した結果、確かに例外は存在した。

女性が二人して自分達の子供と一緒に養子として育てていたのだ。

確かに問題の発覚時に地球に連れて行かれた子供達までは把握していなかった。


日本は紛争地域の周辺にビジネスマンの形で諜報員を送って情報を収集している。

これは種の分岐以前から行われており国家としてはまあ普通の事だ。

国が存在していれば普通にビジネス目的で入国して情報を収集するだけだな。

でもアフリカ大陸や南米大陸なんかは既に国が無い地域も多いのでその地域の有力な始祖勢力に繋ぎを付けて細々と商売をする形で情報を収集する事になる。

そう言った地域は準紛争地域と言った感じで始祖間の勢力争いがいつ始まるか分からない。

それで孤児とかも普通に徘徊しているので幼体の保護と称して日本に連れ帰る人が結構いるのだ。

その地の始祖達は如何しているのかと言うと眷族ならまだしも他種の幼体を育てる気は無いみたいだな。

種が違えば放置するのは当然で殺さないだけマシだろと言った風で孤児となっている。

それで当地から日本に連れて来ても特に問題になってはいないのだ。

日本政府はと言うとそれらの地域から幼体の保護の名目で連れ込まれた子供に関しては一通り審査して問題が無ければ容認していた。

幼体の保護を名目に出されると禁止も出来ず、戻そうにも国が存在しない地域から連れて来ているので強制送還との形も取れない訳で他に手は無い。

海外赴任したビジネスマンが現地の孤児を保護して養子にした形になるので法的には問題がない。

日本では幼体の保護は優先順位が高くて群れの存続を脅かす問題でも無い限り禁止はし難いのだ。

そう言った訳で地球の日本では日本人ではない幼児を連れていても珍しくは有るけどおかしくは無い状況となっている。

それらの元孤児も成体になった時点で日本の始祖の中の誰かの眷族になっていたから問題視する人は今迄いなかった。

日本では結果的に眷族が増えて良い事だよねと言った感じなのだ。

彼女達が明らかに日本人ではない幼児を連れていても珍しいと思う人はいてもおかしいと怪しむ人はいなかった訳だ。




彼女達が育てていたのはアラスカ人とは全く関係のない子供だったが、当然他にも居るだろうとなって再調査が始まった。


「それにしても面倒な事になったな。地球に調査に漏れた幼児が居るのは想定外だった」


「皆そんなに早く他種の幼体に信頼されるとは考えていませんでしたから。仕方がないですよ」


「何で早く信頼関係が築けたかは分かった?井上さん」


井上さんは、火星に幼体が送り込まれた当初からその幼体の保護の為に働いてきた人でアラスカ人が月に来てからはこの関係のアラスカ等との応対の責任者をしている。


「子供の御蔭みたいですよ。彼女達に同じ年頃の子供が居て子供達が先に仲良くなったみたいですねぇ」


子供達が仲良くなってその親とも直ぐに信頼関係が築けた様だ。

友達の仲介が有るから相手を信用する感じだな。


「子供達が仲良くなったってどんな風に?」


「さあ?知らない間に混ざって遊んでいたみたいですよ?当時は三歳か四歳って所でしょう?記憶が曖昧で分からないんですよ。覚えていますか?その頃のこと」


「確かに覚えてないな。子供達はともかく親は如何なの?」


「だから知らない間に混ざって遊んでいたんですよ。そのまま一緒に暮らし始めた感じですね」


「ん──何で警察に届け出なかったの?」


「可愛かったからだそうです。初めから迷子ではないと気付いていたそうで黙っていても大丈夫だと思ったそうです。それが騒ぎになってきたから地球に逃げ出した訳です」


「??何で迷子ではないと気付いたの?」


「だって現れたのは屋内ですから。子供部屋で知らない間に自分の子供達と混ざって遊んでいたそうです。地球と行き来する仕事の様で戸締りは習慣になっていて密室だったそうですよ」


こんな例は他にもあってそんなに珍しい話では無かった。

ただ大半の人は警察に届けていて地球に逃げたりはしていない……筈だけど。


「魔法の使える成体ならともかく幼体では密室には入れないか。それにしても何で警察に届け出ないかなぁ」


「だから可愛かったからだそうです。私が保護しないといけないとの意識が強く出て騒ぎになった時には子供を取り上げられると思って逃げたそうです。心理学者が言うには幼体は保護対象だから過敏な反応を示す人がいてもおかしくは無いそうです。子供が好きな人は似た様な反応を示すようですよ」


「それは他にも居る可能性が高いって事だよな。日本に居れば良いけど……太陽系外に逃げた可能性は無いのか?」


「太陽系外の開拓地はその辺りのチェックが厳しいんですよ。いつ地球から幼体が送り込まれるか分からないから厳しいんです。直ぐにバレます」


「そうか惑星開拓が進んでそろそろ地球から幼体が送り込まれてもおかしくはない状況か。如何するかなぁ」


植物によって幼体が送り込まれた頃の火星と惑星の開拓状況が同レベルになっていた。

惑星を開拓するのに不便なので転移を阻害する処置はしていない。

地球での戦乱等も関係しているので幼体が送り込まれるとは限らないがチェックを厳にしていた。


「そんなに心配する必要は無いと思いますよ。幼体の行方不明騒ぎの影響で幼児の間は親と繋がるのが普通になっていますから。繋がっていれば植物からの干渉は防げます」


幼体が火星に送り込まれて騒動になって以降、日本では親が幼児と使い魔の様に繋がるのは普通の事になっていた。

親が子供と繋がる事自体は特に問題は無いとの研究結果が十年前には出ていた。

火星でも騒動の後は親が幼児と繋がるのは普通の事になっていて迷子の件数は大幅に減った。

以前は子供を使い魔の様に扱うのかと反対していた人も大勢いたが今では完全に少数派だ。

この研究成果は騒動以降に幼体の保護に役立つよとの触れ込みで海外にも広めたので今では世界中で普通に行われている。

以前の様に植物によって大量の幼児が地球から送り出される事は無い筈だ。


「零ではないだろう?日本でも未だに反対で繋がっていない人もいるからなぁ。それに今の状況は以前より面倒な事になり兼ねないんだよ」


「何でですか?以前よりもマシな筈ですが?」


「成体に近い者が送り込まれる可能性が高くなるだろう?普通はそのぐらいの年齢だと親と繋がるのは拒否するからさ。だけど一度でも繋がった事が有れば繋がりを再開するのは容易なんだ。開拓地に送り込まれた後で繋がられたら面倒だろう?親が転移魔法を使えれば繋がりを利用して開拓地に転移出来るんだよ」


「ああ、それは厄介ですね」


「そうだろう?まあこの話は別件だ。行方不明者の調査の話に戻そう。太陽系外に逃げる可能性は無いとして地球の国外は如何よ?」


「そこまで逃げられたら打つ手はあまりないです。特に他の始祖の眷族になっていたら如何にもできませんね。ただ可能性は低いと思いますよ。現状で勢力圏が一番広いのは日本ですから他勢力より優位に在ると思います。子供の事を考えたら移るとは思えない」


「まあ、普通は子供守る為に逃げているのに子供の育成環境を悪くするのは無いと思う。ただパニックになると人は矛盾した行動でもとるからなぁ。東アメリカにだって逃げかねないよ」


「行方不明者の件で一番騒いでいるのは東アメリカですから流石にそれは無いと思いますよ。下手を打つと藪蛇となりますから。逃げ込むとしたら南米の始祖に取り入るぐらいですかね。あそこなら日本人もいるし馴染めるかもしれません」


「南米か……一応は調査しておいてよ」


「でもそれ以上は無理ですよ?行方不明者が全て火星に送り込まれた訳ではないのですから」


「ああ、わかっているよ。アラスカ人も分かっている筈だ」


「本当ですか?とてもそうは思えませんけど。明らかに時期の違う行方不明者を探しに来ている人がいて応対に困っていますよ?」


「確かに行方不明者がここに来れば見つかるみたいに思われても困るわな」


「最近は私達に犯罪者であるかの如く非難めいた口調で話す人が増えました。私達は子供達を保護したのであって誘拐した訳ではないので非難される謂れはないです」


「彼等からみたら五年間も黙って隠していた訳だからね。こちらが子供達を保護していたにしても気分が悪いだろうさ」


「群れの禁忌で話せなかっただけですよ?自分の群れを優先するのは当然の事です。それに別種の子供だからと放置も有り得たんですよ。地球のアフリカ等の地域だとそれが普通です」


「そんな事は向こうも承知しているさ。だから子供が見つかった事に感謝して友好的になっている人の方が多い。怒っている人は行き場の無い怒りをこちらにぶつけているだけさ。それで東アメリカに寝返られると困るのだけど中には居るだろうな」


「寝返る人はいると思います。こちらを非難する時に幼体の行方不明は日本の所為だと言う人がいますから」


「そうなると面倒だな」


「そうですね。火星は転移を妨害しているから良いとして月には直接乗り込まれるかもしれません」


「その辺りは日本はもうすぐ月を防衛基地としてしか利用しなくなるから対処可能だよ。日本の中継基地はガニメデにほぼ移管済みだしガニメデはまだ日本人しか使わないからね」


月はまだ地球から火星への中継基地として利用されているけど日本人の利用は以前ほどではない。

以前は太陽系外への中継基地でもあったけどそれはガニメデの方に移したからだ。

月は東アメリカが攻めて来てもおかしくは無い状況だからな。


仮にアラスカ人の何人かが東アメリカに寝返ったとしても直接乗り込めるのはアラスカの月基地であって日本の月基地ではない。

アラスカを敵に回すつもりが無い限りは出来ない方法だ。

仮にアラスカが東アメリカに寝返ったとしてもアラスカの月基地経由で攻めて来る分には充分に対処が可能だ。


再調査の結果、新たに見つかった子供は六人いたが何れもアラスカ人とは関係が無かった。

当然ことながら親の不満が解消する結果とはなっていない。

日本側はアラスカとの関係は良好なつもりでいるがさて状勢は如何動くかな。

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