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18 北米の再編

アメリカ合衆国ではメディアが日本への非難を流し続けている。

アメリカ政府の公式な声明などは何も無く、大統領が会見を開く事もしていない。

さてアメリカ合衆国がこの見え見えの謀略を続けるのか?


最近はアメリカ合衆国の動向を掴むために地球にいる時間が長くなっていた。

火星にいると地球側の緊迫感が掴めずに気分が緩むから日に一度は地球に顔を出していた。

そうこうする内にアメリカ合衆国の一人芝居の茶番劇が始まって、昨日はアメリカ政府に対して日本政府から遠回しに追求しないから手を引いたら?と言った意味の声明が出されて、アメリカ軍の動き次第では民間人は火星に避難開始だからと私は地球に待機状態となった。

それでアメリカ軍がどう動くか注視していたのだが……


「アメリカ軍に動きは?」


「今の所は変わらずね。軍は待機して指示待ちって所よ」


「昔のアメリカなら引く事はまずなかった。問題なのは実質的なTOPがそれを実感していた世代だって事だ。引くにしても言い負かされた感じで引くかなぁ?」


アメリカ軍を牛耳ってアメリカ合衆国を国として纏めている始祖は私より三歳年上のウエストポイント出の陸軍士官だ。

愛国心が強い感じだよなぁ。


「あなたより三歳も上だとそんな感じなの?」


「海外に展開していたアメリカ軍の撤収も苦々しく思っていたかもしれない。覇権国家だったからなぁ」


「私にはそんなイメージは無いかな。小学生の時にアメリカ軍が日本から撤収した筈なんだけどお覚えていないもの。お肉が好きなだけ食べられるようになった事は覚えているけど」


「半世紀ぶりだろう?アメリカ軍のアジアへの本格的な軍事展開は」


「戦争が始まればそうなるわね。今は民間の輸送船の護衛程度しかしていないから」


「アメリカにも左程余裕は無いと思うんだがなぁ。国内を纏めるのに都合が良いとは言え難民の件も有るし躓いたら逆効果だよ?」


「私の眷族なんかはアメリカの茶番劇を見て『本気ですかね?これ』と言ってどう対応したら良いか聞きに来たもの」


日本では世代交代が進んでアメリカ合衆国と友好国だった頃を実体験していない者達が殆どだ。

アメリカ合衆国に対しても覇権国のイメージは持っていなくて日本への糾弾が始まらなければ大半の者が意識する事も無かっただろう。

シナからの脅威が大きくてその対策に手一杯だった頃から最近まで一般人にとっては影の薄い存在だった。

私もアメリカ軍の撤収と自衛隊の南シナ海への派遣は鮮明に覚えているけどそれ以前の事はさて??と言った感じだからなぁ。

宇宙開発の関係で進んでいるイメージは有ったけどそれも昔の話だ。

月に来るかなとか崩壊して貰っては困るとは考えていたけど敵対するとは考えていなかった。

アメリカ合衆国もそれなりに世代交代が進んでいる筈なんだがその意識の変化となると……軍人の意識は覇権国家の頃のままかもしれない。

ウエストポイントもまだ残っているから士官教育もそのままの可能性がある。

過去の栄光を取り戻すなんて考えの奴が量産されているかも……


「軍事面は防衛省の方々にお任せして我々は民間人の避難の話だ。準備は進んでる?」


「今は待機状態ね。取り敢えず火星に避難するのは転移魔法が使える人とその家族よ。あとは順次一般人も避難させるわ。どちらも戦況次第だけど」


「アメリカの決断次第か。分裂工作は如何なっているの?」


「その辺りのタイミングは南米の始祖に任せているの」


アメリカ合衆国のヒスパニック系の始祖はヨーロッパからの難民受け入れでメキシコの難民も受け入れろと揉めている。

既にこの始祖がメキシコとの国境沿いの難民の殆どを眷族にしているからこれは当然だろう。

それまではアメリカ軍の派遣による実質的な領土化で宥められてきた訳だがヨーロッパからの難民の受け入れで不満が噴出した。

彼等が暴走する条件は整っている。

それで日本と繋がりのある南米の始祖が接触して裏工作をしている訳だ。


「アメリカ軍がアジアから撤収した時より状況が悪い気がするけどなぁ。だってアジア諸国の何処もアメリカ側についていないんだよ。撤収の時は出来れば残って欲しいとの声も有ったのに」


「国外の事なんて考えていないわよ。国内を纏めるためなんだから。ヨーロッパからの難民を受け入れたのが不味かったわよねぇ」


「あれの所為で日本への非難は止まらないし、メキシコの難民も騒ぎ出したしな」


「ロシアは上手く遣ったのにねぇ」


「日本を敵にして国内の軋轢を逸らそうなんて上手く行くと本当に思っているのかなぁ」




その日は何事も無く終わり、日本で日付が変わってからアメリカ軍の攻撃?が始まった。

まずは衛星に向かってミサイル攻撃が有ったのだが、この手の兵器が今では無効な事は承知の上だろうから本気かどうかが分からない。

これでは空砲を撃っているのと同じだ。

国内向けのポーズなのか日本への威嚇なのかと首を傾げているとアメリカ合衆国から日本へ正式に宣戦布告がなされた。

理由は幼体の行方不明者の件でアメリカ大使は必ず連れ戻すと息巻いていた。

日本は遺憾の意を表明し、幼体を攫ったのは日本人ではない事とその幼体が日本列島の何処にもいない事を言明した後に宣戦布告前の攻撃?を非難した。

先日の○○○号の件は日本への非難すらも無かった事になったらしくアメリカ側からは一言も言及がなかった。

日本は○○○号の件を追及しない事で戦争の回避を暗に求めたのだがアメリカ人は追及しないと相手は弱気だと受け止めるんだよな。




開戦と言う事で日本人は避難計画に沿って火星への避難を開始した。

私は地球の事は美里達に任せて、火星に戻って避難に伴う混乱に対処する事にした。

と言っても遣る事は時々避難している方々の前に顔を出すだけなんだけど。

真祖なのでそれだけでも意味が有るらしいのだが結構な時間がとられる。

避難に関しては転移魔法が使える人達については特に大きな問題は無かった。

彼等は火星に避難しても自力で地球と行き来が可能だ。

仕事もそのまま続行が可能だから多少不便ではあっても戦争だから仕方がない。

ここまでの火星への避難は避難施設への疎開と言う形にしていた。

問題なのは転移魔法が使えない一般人達だ。

彼等が火星に避難したら仕事は続けられないから社会的な混乱が大きい。

会社によっては存続不能となるだろう。

地域密着型の店舗なんかも住民がいなくなれば破綻する。

それで日本本土への直接攻撃が確認されるまで避難行動は停止となった。

日本各地の地下に大規模な避難施設を建設済みな事は国民なら誰でも知っている。

避難となったら取り敢えずその地下施設に収容してそこから火星に避難する事となった。

火星開拓は未だ公けではなく一般人には怪しい噂程度の話だから希望者を募集とも行かなかった。




開戦と言う事で自衛隊はまず衛星軌道上の敵国の無人衛星を全てアイテムボックスに回収した。

日本はスペースデブリの清掃を一国で長年に渡って行ってきたからこの程度は楽なものだ。

次に太平洋の敵軍を排除し始めたのだが……

基地も艦船もバリアと同じ類の魔法で防御しているから通常兵器による攻撃は通じない。

兵站線を破壊しようにも輸送に船舶は使っていない。

転移魔法を使えば本土からいくらでも瞬時に物資の補給が可能だし、アイテムボックスが使えれば荷物はいくらでも兵が携帯できるから備蓄倉庫すらない場合が有る。


日本でもアメリカ合衆国でも兵は魔法の鍛錬によって飛べるから海上での軍事活動が可能だ。

日本だと艦船は集団行動をとるための移動基地として運用されている。

艦隊戦は艦船を破壊すれば転移による兵の増員が不可能となって勝ちなのだが長距離兵器はバリアで防がれて通用しない。

このため洋上での白兵戦となるのだがこれが決着をつけるのが中々容易ではないのだ。

まず当然の事ながら銃器等の飛び道具も爆弾もバリアで防がれて通用しない。

それで刀剣等や棍棒が使われるのだが双方とも飛んだり転移したりで当てることすら中々出来ないのだ。

例え一人二人の達人がいても何万人もの相手が出来る訳もなく戦局には影響はない。

達人がいても真面に遣り合わずに逃げに徹していれば負ける事はまずないし。

結局は碌に死傷者も出ない内に決着も付かずに双方ともに引く事になる。


残るは敵地に乗り込んで白兵戦か破壊工作なんだが双方ともそこまで踏み切っていない。

白兵戦は艦船での戦いと同様の結果になるのが目に見えている。

破壊工作なんてそもそも現地に協力者がいなくて出来るものではない。

種の分岐以降は現地人に紛れ込もうにも種が違うと直ぐにばれるし現地人も自分の種を裏切る行為は出来ないしで協力者なんて用意できないのだ。

太平洋での戦闘は膠着状態となった。


アメリカ側は日本本土への攻撃はまだ行ってはいない。

幼体の行方不明者を必ず連れ戻すと明言した以上無闇矢鱈と日本本土を攻撃する訳にも行かないのだろうが上陸作戦が何れは実行される筈だ。

彼等の非難声明によると幼体の行方不明者は日本が拉致して日本本土で幽閉されているのだから。

だがそんな事実は無いので日本本土に対象者は一人もいない。

対象者がいるのは火星だからな。

仮に日本上陸に成功して探し回っても行方不明者は一人も見つからないのだ。

日本を敵にして国を纏めるのが目的だとしてどう事を収めるつもりだろう?


「健ちゃん。地球から戻って早々で悪いけど地球の状況を宜しく」


「いえいえ、それが仕事ですから。何からにしましょうか」


「まずは太平洋の戦況だろ。火星に避難民が来るかどうかに影響する」


「日米は太平洋では膠着状態のままです。変わりは有りません。動きが有ったのはハワイですね。ハワイの現地人の始祖がハワイ州を掌握して独立を宣言しました。日本は承認済みです」


「へっ、それでハワイの基地は?黙ってはいないだろう?」


「独立自体は合憲ですからね。それに陸軍はともかく海軍はあの陸軍士官の始祖の言うことは聞きません。アメリカ本土の始祖達も分裂しましたからね」


「じゃあ分裂工作が上手く行ったんだ」


「日本が何もしなくても分裂した可能性が高いですね。だからこそ日本を敵にする必要が有ったんでしょう」


「ふ~ん。そうなの?何もしなくても良かったのかな?」


「それは有りませんよ。日本が巻き込まれていましたからね。ただ火星への避難は無くても良かったかなとは思いますね。個人的にはですけど」


「それは戦争が終わってからする話だな。それに火星への移住はともかく惑星開拓を進めるに当たって君達は人手が必要だろう?どのみち近々に動く必要が有ったさ」


「それはそうですが少し拙速に過ぎたかなと。少しづつ進めていたんですよ。社会的な影響を最小限に留めようとしていたんです。戦争だから仕方がないんですかねぇ」


「それは火星開拓の時の私の眷族も同じだな。一度に動くと目立つからね」


私の眷族の火星移住は時間を掛けて少しづつだったし、地球の住居はそのままで行き来していた者も多かったので目立ってはいなかった。


「地球では疎開と言う事で何とか誤魔化していますけど上手く行きますかね」


「戦争の成行き次第だろ。アメリカ陸軍の動き次第ではまだ一般人の火星への避難も有り得るだろ。分裂は進んでいるとしてどんな状況なの?」


「ヒスパニック系の始祖がまず反旗を翻して国内外で暴動が起きてメキシコ側から難民が流入してと内乱状態ですね。他の始祖も各々の判断で自分と眷族を守ろうとしていますよ。陸軍を掌握していた始祖も陸軍士官の多数を眷族にしていただけで兵卒は他の始祖の眷族が多数です。同族殺しはしませんから軍では止めれないでしょう」


「種の分岐前なら国を優先する事も有り得たけどね。海軍と空軍を押さえたのは陸軍士官の始祖とは別な訳?NASAは?」


「全て別ですね。でも一つでも完全に押さえた勢力は無い様です」


「元々人種も文化もバラバラだからな。それが活力の源泉でもある訳だけど。纏め難い原因でもある。日本を敵にして纏めようとしたけどその程度では国内の軋轢は誤魔化せなかった訳だな」




自衛隊とアメリカ軍の太平洋での戦闘はハワイの独立によって停戦状態となった。

アメリカ本国はと言うと内乱状態なんだけど争いは今一度国を一つに纏めようとする陸軍士官の始祖と互いの勢力圏を定めて無理に纏めずに別々の国で良いじゃないかとする始祖達との争いだ。

どちらでも良いから争いを止めないと外から付け込まれるぞと部外者としては思うのだが。

このままシナの様になるのかな?

だとしたら敵対勢力はシナの様に囲い込む事にしたい。

少なくとも太平洋側には友好勢力を置きたいものだな。

未だに正式な講和は成されていないのだがさて如何したものだろう?




北米ではカナダをも巻き込んだ形で始祖達による再編が始まった。

そして五年以上に亘って勢力争いを続けた。

アメリカ合衆国の勢力は大きくは東西に分かれて、陸軍士官の始祖を中心としたアメリカ合衆国の統一に拘る勢力は東側の十八世紀以前のアメリカ合衆国の独立時より狭い五分の一程の領域を支配してアメリカ合衆国を標榜している。

日本は北米が再編中も宇宙の勢力圏を拡げた。

日本とアメリカ合衆国の講和が成される事はなかった。

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