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17 開戦……か?

シナの状勢がどうだったかと言うと……

西ヨーロッパの原理主義者のエルサレムへの侵攻に合わせてシナがウイグルに侵攻を開始した。

ウイグルはイスラム難民の急増への対応で国力が下がっていたから組み易いと考えたのだろう。

シナの北方を支配下に置く朝鮮族出の始祖はウイグルを支配下に置きシナでの権威を高めてシナの覇権に繋げようとしたのだ。

その為にシナの始祖は西ヨーロッパの原理主義者の始祖達と裏で手を結んで軍事援助を受けていた。

西ヨーロッパの原理主義者達はシナから圧力でロシアの力が分散されればと考え、シナの始祖はロシアが西ヨーロッパへの対処で手一杯となるタイミングで侵攻すれば邪魔するものはいないと考えた。

そして後ろ盾のないウイグルであれば簡単に支配下に置けると考えて侵攻したのだがウイグルから反撃を受けて逆に領土を削られてしまった。

そもそもウイグルがイスラム難民に梃子摺っていたのはイスラム教徒を類縁として対処していたからでシナ相手になら気遣う必要はなく殲滅するだけだからな。

シナの始祖の思惑は完全に外れて逆に権威が損なわれる結果となった。

この失敗で対抗勢力に寝返る者が増えて力を落とした始祖に対して満州は機が熟したと捉えてシナの朝鮮族に不法占拠されていた地域に侵攻を開始した。


「満州が失地回復へと動いた様だな。やっと朝鮮族を追い出すわけだ」


満州が遼寧省の瀋陽までを奪還して既に三十年近くになる。

高麗半島は満州に併合されて既に半島国の名残は半島にはない。

旧済州島は耽羅として一応は独立国だが今では完全な満州の属国だ。

耽羅では種の分岐の際に始祖が出なかったため満州から始祖の一人が乗り込んで住人を眷族としてしまったのだ。

日本の始祖にも機会は有ったのだが耽羅の民を眷族にしようとする者が誰もいなかった。

耽羅の民はと言うと殆どの者が始祖のいる高麗半島に移ってしまい耽羅は国とは名ばかりの状態にある。

シナの朝鮮族には何人かの始祖が現れたが勢力を築く前に例の朝鮮族出の始祖に阿る同族の手で殺された。

彼等は出来る限り朝鮮族出の始祖の傍に居たいと半数は自治区とされた場所からは移住していた。

良いように使われていて始祖の直轄地と言う名の最前線近くの危険地域に居住している。

朝鮮族は体良く防波堤の様に使われているのだが始祖様の直轄地との事で満足している様だ。

始祖と同族出身と言う事で威張っているのだが始祖すらも彼等を相手にしてはいなかった。


「それにしても長い間放置していたよな」


満州はシナの朝鮮族による不法占拠地域を緩衝地帯として長い間放置していた。

奪還を計画した頃に種の分岐が有って国内が混乱した事も要因だがいつでも取り返せると優先順位を下げていたのだ。

でその間に何をしていたのかと言うとシナから逃げてきて傘下に下った始祖とその眷族を使ってシナ沿岸の都市を攻略させては属国としていた。

これはシナ周辺の国々は皆同じ様に遣っていてシナの領域は少しづつ削られている。

日本は宇宙開拓を優先している事もあって……違うな、関わりたくなかったのでシナの領域には一切手出しをしていない。


「満州はシナ全土の攻略とか考えているのかなぁ?沃土はどう思う」


「それはないな。満州の始祖達は群れを必要以上に大きくすると纏めきれない事を分かっている。統治も始祖ごとに領域を持って封建体制みたいにしているだろう?適度な群れに分けた方が纏め易いからだ。満州の始祖達は誰も皇帝になる気は無いんだ。ただ始祖が死んだ後はどうなるか分からない。下手をすると群雄割拠の時代に入るな」


「それはあまり関わりたくないな。関わる必要もないし」


「そのために宇宙開拓に邁進しているんだろう?僕らの子孫の大半は地球にいないから関わる機会すらないさ」


「子孫はそうでも今は違うだろう?またシナの朝鮮族の難民が流れて来るんだぞ」


「日本は対処可能だから問題ないよ。問題が有りそうなのは耽羅かな。住民の多くが始祖について高麗半島に渡って過疎地域になったからな」


耽羅は過疎化が進んで難民が押し寄せたら危うい状況にある。

一応は基地が有り満州軍が配置されてはいるが軍の保養施設みたいになっていた。

難民ぐらいは処理できる筈だけど島全域を常時監視するのは無理だから大量の難民が押し寄せたら上陸は可能だろう。

上陸したら居座るだろうから排除が面倒だろうな。


「それは朝鮮族が耽羅に居つきそうって事かな?あまり考えたくはない状況だな。満州にはそれだけは阻止して欲しいよ」




朝鮮族の難民は考えていたほどには流れて来なくて上手く排除出来ている。

朝鮮族はシナの始祖の眷族となっているのだがウイグル侵攻の失敗程度では見限る者は少なかった様だ。

朝鮮族出の始祖は民族の希望の星だからと殆どの住民が陸路でシナ側に逃げたのだ。

シナの朝鮮族の軍隊は三十年前と左程変わらずと言った状況だった様だな。

ちょっと信じ難いが逃走中の一部の者だけが真面な魔法を行使していたらしい。

シナでは魔法使いは戦闘用ではなくて高官の逃走用に配備されているのだ。


二ヶ月程で満州による失地回復は完了した。

二ヶ月も掛けたのは住民の逃走を促し排除するためだ。

種の分岐後の僅かな間で異質さが増していて住民を眷族には出来なかったのだ。

種を乗り換えるにしても性質が似通っていないと魔素生命とは繋がれない。

満州の始祖達とシナの始祖とは性質が明確に分かれてしまったようだな。


満州は遼寧省を奪還後、それ以上の侵攻はしていない。

シナで覇権争いをする二勢力のパワーバランスがこれ以上崩れると覇権が確定してしまう恐れがあり後々面倒になるからだ。

一本に纏まったシナが侵略性向を剝き出しにして周辺に向かうのは目に見えているからな。

負ける事は無いにしてもたいへん鬱陶しい状況となる。

シナ人が覇権争いをしていた方が周辺国には都合が良いのだ。








ロシアの西側の始祖達は東ヨーロッパを勢力圏に収め、ロシアに逃げて来た西ヨーロッパの始祖の勢力を支配下に取り込んで勢力を拡大した。

西ヨーロッパにイスラム難民を押し付けた事でイスラム圏からの圧力は減っていた。

シナのウイグル侵攻も頓挫したのでシナ包囲網も崩れる事は無く、西ヨーロッパからの難民問題の処理を誤る事が無ければ問題はないだろう。


「ロシアはヨーロッパを上手い事処理したね。美里の以前の最悪の予測だとドミノ倒しの様にロシアも崩壊してアジアまで波及する感じだったけどロシアは勢力圏を拡大した。ウラル山脈までの後退は当然と考えていたのに」


「西ヨーロッパは混乱して再編中だけど考えていたよりも踏み止まった始祖の勢力が頑健だったのよ。難民も予想より少なくてロシアが上手く吸収できたし東ヨーロッパの混乱も少なかった」


「イスラム難民の処理が上手く行ったのとシナが弱くてウイグルにのされたからな。西ヨーロッパの再編は時間が掛かりそうだけど邪魔者はいなくなったから大丈夫だろう」


西ヨーロッパにはイスラム難民が流れ込んだ訳だけど以前の様に排除する力はヨーロッパ人には残っていなかった。

国が崩壊して、残った始祖達が夫々の勢力圏を確保して再興中だ。

原理主義者の追い出しには成功した形だしイスラム難民と上手く折り合いを付ければ何とかなるかな?

キリスト教徒もイスラム教徒も過激な奴等はエルサレムに向かって聖地奪還争いの泥沼に浸かっている。

イスラム教徒の聖地にはメジナとかメッカとかも有って争いの種に事欠かない。


「混乱の起因となった聖地を巡る争いは激しくなる一方なんだけどね。キリスト教徒もイスラム教徒も世界中に居るからエルサレムに向かう人は絶えないわ」


「そうだ、一つ疑問が有って聞きたいんだけど良い?」


「どうぞ、分かる事であれば答えるわよ」


「今回のヨーロッパから始まった騒乱だけど転移魔法を活用している様子がないんだけど何故?ヨーロッパには長距離転移魔法の技術を渡していたよね。だったらもう少し上手く侵攻出来たと思うんだけど」


「それはこちらでも疑問に思っていたのだけどどうやら転移魔法の技術の秘匿に成功した勢力があるのよ。種の分岐の際に軍人の始祖がいち早く動いて魔法の秘匿情報を押さえる事に成功したのよ。重要な魔法技術を独占した訳ね。それでその連中が中心となって西ヨーロッパを再編中なのよ」


長距離転移は転移先を認識するための技巧等が色々と必要なため日本以外では一般化されていないが日本はテレビカメラを利用した長距離転移までは技術情報として外交的に利用していたのでヨーロッパ諸国にも伝わっている。

それでヨーロッパで独自に進化した転移魔法が存在する筈なのだがエルサレム侵攻に転移魔法を利用した形跡が無いので疑問に思っていたのだ。

今の話では長距離転移技術を軍事機密として秘匿していたために種の分岐で情報が断絶して魔法技術が一部の勢力にしか伝わっていないのだな。


「軍人の始祖一人で独占は無理だろう?ヨーロッパ各国に魔法研究者はいただろうに」


「軍人の始祖が中心になって動いて重要人物を眷族にしながら情報を押さえたのよ。魔法研究者の始祖も途中から協力して。ヨーロッパでは重要な魔法技術を押さえた始祖のグループが出来ていたのよ。勢力としては数が少なくて政治的には他の始祖に及ばなかった訳だけど転移魔法の秘匿には成功したのよ」


「そうすると原理主義者も居なくなって今の西ヨーロッパは余分な物は剝ぎ落した状態になったって事?」


原理主義者の始祖と眷族はエルサレムに向かい、対抗勢力と成り得る他の始祖とその眷族の多くも難民として西ヨーロッパから出て行った。

西ヨーロッパは魔法技術を抑えた始祖達のものとなった。


「今の所は病巣の削除に成功した患者ってとこね。でも再興に成功したら以前よりも強くなると思うわ」


「近々で宇宙に出て来るかな?」


「それは無理と言いたい所だけど植物を上手く利用すれば可能だと思う。思い付く人がいればだけど」


「幼体の行方不明の原因が植物な事は気付いているから世界中で研究が進むだろうな。時間の問題と考えておいた方が良いか」


「私達はその間に出来得る限り宇宙に勢力圏を拡げるのよ」


「……元からそのつもりだけど君の所は急ぎ過ぎではないかな?健ちゃんに聞いたけどもう十の惑星系を勢力圏としたんだろう?」


「惑星の開拓はまだ火星型の三つだけよ。私の眷族は数が多いのよ。まだ増やせるわ。それに地球型はまだ見つけていないわ。地球型なら直ぐに入植出来るのに」


問題なのは地球型の惑星を見つけた時だ。

惑星に知的生命体がいるかもしれないし惑星の生態系に馴染む必要もある。

慎重に進めないと不味い。

面倒だからと拠点だけ確保して放置する手もあるかな。


「地球型は見つけても直ぐに入植しては駄目だ。知的生命体がいるかもしれないしさ。それに慎重に進めて惑星の生態系に馴染まないと拒絶される。勢力圏の拡大を優先するなら取り敢えず放置も有りだな」


「放置は無いわね。地球外の生命体がどんなだか知りたいもの」


「まぁ、全ては見つけてからの話だ。今の所は環境改造なしで居住可能な惑星は見つけてないしな。……先の話は置いといてアメリカ合衆国の分裂工作は上手く進めている?」


アメリカ合衆国は日本を糾弾して敵とする事で国を纏めようとしている。

ここまでは国内問題で日本に何もしなければたいした問題ではない。

気分は悪いが粛々と反論して外交的に手を打てば良い話だ。

問題はアメリカ合衆国が太平洋の軍事力を増強して日本の領海内に潜水艦を巡回させ始めた事だ。

以前であれば裏工作でも有って日本も承知の上でガス抜きに付き合ったのだろうが今の日本とアメリカ合衆国はそんな関係には無い。

日本は沈めようと思えば沈めれるのだけど戦争になるのでアメリカ合衆国の分裂工作を始めた。

アメリカ合衆国内外の不満分子を煽っているだけなんだけど難民問題なんかを上手く使えば日本に手を出している余裕は無くなる筈だ。


「スペイン語圏での煽りはあと一押しって所ね。アメリカ合衆国内の日本への言いがかりに同調していない始祖達と繋ぎを付けて接触したんだけど軍人さんに対しては不満が溜まっていたみたいでこちらからは何もする必要はないと思うわ」


「日本が何もしなくても崩れるかもしれないな。元々南からの難民対策で世界中の軍を引き上げた訳だし。……潜水艦も本当は日本に沈めて欲しいんじゃないか?」


沈めたのが日本の領海内だったとしても公海だった言い張って戦争に持ち込む事は可能だ。

そして国外に敵を造って国を纏めたいなら戦争をするのが一番簡単な方法だ。


「沈められても構わないとは思っているでしょうね。日本を完全に敵にできるもの」


「民間船をわざと沈めて日本の所為にする可能性は有るな」


「種の分岐前なら無いと断言できたけど、今なら有り得るわね。幼体の行方不明者について日本の所為だと証拠も無しに糾弾し続けているもの。日本の言い分には耳を貸さないし」


「アメリカ合衆国との戦争も有り得るって事か。面倒だな」


「民間人の火星への避難も有り得ると考えておいて。戦争になっても負けは無いけど犠牲は減らしたいから」


「受け入れの準備はしておくよ。ただ火星に避難したら容易には帰せないからな。自分で転移出来るのが前提で社会が成り立っていて転移が使えない者を地球に帰すシステムはない」


火星へ大量の避難民が送り込まれた場合に住居は有るし食糧も充分に備蓄されているから問題はない。

地球からの移住が前提の開拓を進めてきて既に目標は達成している。

ただ自力で地球に戻れないとなると戻すのは容易ではない。

私の眷族の一部は月を中継して転移魔法で火星と地球を行き来する二重生活を送っているのだが他人を大量に転移させるなんて火星では必要ないから誰も訓練していないのだ。

地球に戻したいなら地球でそれなりの訓練をした人が火星に来てそれをする必要が有る。


「それは仕方がないわ。それに戦争が起きたら直ぐに終結するとも思えないしその時点で火星の事が公になる可能性もある。そうなったら避難ではなくて移住に切り替える事も有り得るし」


「アメリカ合衆国の分裂が上手く行く事を祈ろう」


「そうね、戦争は無い方が良いわ」




そう言った訳でアメリカ合衆国との戦争の勃発を心配していたのだが……


ある日、東シナ海でアメリカ籍の○○○号が沈んだそうでアメリカ政府が日本に向けて非難声明を出した。

なんでも自衛艦と並走していたら故意にぶつかってきて沈んだんだそうな。

乗員に犠牲者が五名も出たんだそうな。

そしてそれらしい動画を公開して謝罪と賠償を日本に要求してきた。

動画の内容は

「こちら○○○号、只今東シナ海を北上中、日本の軍艦と並走しています」

「あれが日本の軍艦……しょぼいですね」

「あっ、近寄ってきた。ぶつかる」

衝撃音らしき音の後に逃げ惑う音が入ってから映像が途切れる。

……あまりにもやらせ感が強すぎて笑えてきた。


対して日本政府はその○○○号の沈む動画と自衛隊が魔法を駆使して直ちに○○○号を引き上げる動画と引き上げた○○○号を公開して反論した。

「自衛艦と並走していた○○○号が沈み始めたので人命救助の為に直ちに引き上げましたが、既に無人で要救助者はおらず、乗員は魔法を使って避難済みと判断しました」

「犠牲者は五名と有りましたが……探しましたか?」

「これが引き上げた○○○号ですが明らかに内部から破壊されていて外部から破壊された痕跡は有りません」

「積み荷が爆発したものと判断しましたがアメリカではアイテムボックスを使わないのでしょうか?」

「乗員は犯罪に巻き込まれて逃亡中とも考えられますので身柄保護の為にしっかり探してください」

「○○○号が沈んだのは明らかに自損事故なので謝罪も賠償もその必要を感じません」

要約すると

○○○号には誰も乗っていなかったよ。

本当に人が乗ってたの?

どう見てもぶつかった痕跡はないけど?

今時、生鮮食品でもない危険物を船に直接載せるか?

もし乗員がいたのなら逃げないと危ないよ?

追及はしないから自損事故と言う事にしておきなよ。


日本政府はアメリカ政府の返答を待ったが返答は来ず、アメリカのメディアが流す日本に対する非難が聞こえてくるだけで……公式には何の返答も無い。


このまま戦争に突入か??

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