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14 火星への来訪者

ヨーロッパ圏とイスラム圏の均衡が崩れた。

日本では乱立するメシアを名乗る者達のエルサレム争奪戦の余波でイスラム難民がヨーロッパに向かいヨーロッパが崩壊する事を恐れていたのだが最初に動いたのはヨーロッパの原理主義者の勢力である。

偽メシアを駆逐するとの名目でエルサレム奪還に向けて侵攻を開始したのだ。

こちらの分析ではこのまま守勢が続くと何れはヨーロッパが維持できなくなると判断して先に動いたのだろうとの事だ。

侵攻が正しい判断かはさておき日本ではヨーロッパの崩壊を恐れていた状況であったから何らかの動きが有る事は想定していた。

ヨーロッパからオーストラリアや北アメリカへの移民も増えていたからそのまま崩壊へとの予測もあった。

結果としてはヨーロッパ側から動いた形だけどさて本当の所は如何なんだろうか?

原理主義者たちがエルサレムに向かう様に日本とロシアは裏工作をしていたのだけどヨーロッパ側からこうもあからさまに動くとは思っていなかった。

難民対策を大義名分としてエルサレムに向けて動き出すと思っていたのだ。

エルサレムを安定化させてヨーロッパへ向かう難民の波に対処するとの形で動くと思っていた。

それが目的は難民対策ではなくてエルサレムの奪還である。

エルサレムに向かうにしてもこれでは完全に十字軍の復活で宗教戦争である。

ヨーロッパの現状はどうなっている?

上手く原理主義者を追い出した形になっているのか?

それとも原理主義者の勢力が優勢で本当に宗教戦争の様相となっているのか?

もし宗教戦争の様相だとするとロシアはヨーロッパを完全に切り捨てる可能性もある。

日本も決断を迫られるだろう。

ヨーロッパがエルサレム争奪戦に参加するなら手を引かないと不味い。

不毛な宗教戦争なんかに付き合うのは無駄だ。




地球で対策会議が開かれる事となって私も参加する事となった。


「ヨーロッパはどーなってるの?エルサレムででも何かあった?原理主義者達がエルサレムに向かうのは良しとして、ヨーロッパが宗教戦争を仕掛けた形になっているのは不味いと思うけど」


「その辺りは会議の冒頭で説明するから質問はその後で」


説明に依ると私が火星に籠って宇宙開拓に勤しんでいるここ三年程の間に、ヨーロッパでは徐々に原理主義者の勢力が優勢になっていって、その状勢変化とともに風潮に付いて行けない者達は続々と海外に移住したらしい。

移住先は主に北アメリカ大陸のカナダとオセアニアのオーストラリアとニュージーランドだ。

幸いにもヨーロッパが崩壊している訳ではないので崩壊の連鎖と言った形にはなっていない。

難民化はしていないので移住先でも何とかなっている様子だ。

ただ逃げ出すだけの資産的な余裕が有るものが逃げ出しているのが現状で逃げたくても逃げれない層もいる訳で日本が懸念していた崩壊の連鎖が起きる可能性は有るそうだ。

海を渡れない者達が残されているので難民化したら陸路でロシアに向かう可能性が高いそうだ。

ヨーロッパは移住とエルサレム侵攻で一部では過疎化が始まっていて過去のヨーロッパではない。

ヨーロッパでも東の正教が強い地域は原理主義者の台頭に伴って同じ正教圏のロシアの勢力圏に組み込まれてしまった。

ロシアは既にヨーロッパが崩壊するものとして動いているのだ。

日本とロシアが裏で画策していた原理主義者のヨーロッパからの放逐は失敗した訳だ。

そして多くの者達がヨーロッパが崩壊する前にあらかじめ海外に移住させておいた者達の元に逃げ出した訳だな。

ヨーロッパ勢力は自らを十字軍としてエルサレム争奪戦に飛び込んで行った形だ。


日本はインドは何とか保つであろうと判断していたが問題なのはシナの蓋をしているウイグルがイスラム圏であることだ。

ヨーロッパの原理主義者にとって重要なのは聖地エルサレムでシナ周辺の事はどうでも良く、シナの勢力にとってはエルサレムなんてどうでも良くシナの包囲網を何とかしたい。

互いにイスラムが邪魔な事を共有していて互いに相手が何をしようと構わない。

イスラムを何とかしたい事が一致していて、今の所はそれ以上の干渉をする気が無くて、互いにたいへん都合が良い関係だ。

それでオーストラリアの原理主義者を通して商売を装って裏で繋がっていたらしい。

オーストラリアの原理主義者は口だけで目立った行動を起こしていないから見過ごされていたって話だ。

このままだとシナ包囲網の一角が崩れるかもと言った状勢な訳だ。

ヨーロッパの崩壊なんて気にしている余裕は有るのかな?

ロシアはヨーロッパとイスラム圏から脅威に晒されている。

此処でシナからの脅威が加わったら保ちそうにない感じが……

日本としてはウイグルがシナに潰されるのも困るけどそれによってロシアが崩壊なんてしたらもっと困る。

シナ包囲網が北側から崩れ始める可能性すらある訳で……

如何したものだか。


日本はシナ包囲網の関係でウイグルを支援はしたいのだが下手な手出しをしてエルサレムで争っている馬鹿を刺激したくもないのだ。

今迄はその辺りをロシアが担っていたのだが日に日に余裕が無くなっている。

日本はウイグルを直接支援するかロシアを支援する事で間接的に支援するか。

流石にシナの向こう側を両方とも支援するとなるとそこまでの力は日本にはない。

そこまでするならシナ包囲は諦めてロシアには後退して貰って防備体制を敷いた方がましだ。

ただそうなるとロシアは納得しないだろうから現実的には日本の勢力圏にあるロシアの東側を支援して防備する事になるかな。


実の所、今の日本にはもう一つの選択肢が有る。

シナの勢力を駆逐して種を絶滅に追い込んで禍根を断つ選択だ。

これならシナの包囲網は必要なくなるし既に種が分岐しているから自種を守る為であれば可能だろう。

ただ宇宙へと生存圏を拡げつつある現状でそこまでする必要性を感じている者はいない。

私が選択肢の一つとして提示した時もそんな労力が有れば宇宙開拓に使った方が種の繁栄に貢献するとの意見が大半であった。

まぁ、禍根を断つのに失敗した場合に面倒なのは確かな事なのであまりお勧めではないか。

シナの覇権争いに加わる形になってシナの朝鮮族の二の舞になる可能性もあるしなぁ。

種が分岐したとは言えシナの血筋を引く者が満州等に存在するから後々面倒そうでもある。


そうして会議がああでもないこうでもないと続く中に火星に居る筈の映美が現れた。


「今日は火星で待機の筈だろ。気になるなら帰ってから話すから態々くる必要はないよ」


「そんな話ではなくて、とうとう火星に来る者が現れたわ。保護しているから戻ってきたら?会議の方は沃土さんに任せておけば良いでしょう?」


火星に来訪者が有ったか、確かにこれは緊急事態だ。


「そうするか。沃土、緊急事態みたいだから火星に戻るわ。会議が終わったら火星に来て」


「早く戻れば?こっちはやっておくから」


「宜しくお願い。皆さん注目」私は立ち上がって話し始めた。


「火星に初の来訪者が現れたそうです。緊急事態なので後は沃土に任せて戻りますから宜しくお願いします。詳しい内容は後日報告します。気になる方は火星に来てください。では失礼」


私と映美はゲートで直ぐに火星に戻り話を始めた。


「来訪者は何処の勢力?どうやって火星に来たの?何人で来たの?それから」


「ストップ。今から話すから静かに聞いて」


「分かった。じゃあ早く話して」


「まず来訪者の勢力は特定できない。そして来た方法は以前想定していた植物が勝手に送り込むやつ。そして次々に送られてくるから何人かは分からない。そしてもう一つ来訪者は皆幼体なの」


この時点で植物が地球から火星に送り込んだ人の幼体は地球の不特定多数の場所から送り込まれていて特定の勢力が意図的に火星に乗り込んで来た訳ではなかった。


「えっ……幼体って何歳ぐらい?話は出来るの?」


「下は三歳ぐらいから上は十八歳までバラバラね。初めは迷子だと思っていたのよ。幼児が多いから。でも喋っている言葉が違って。そうこうする内にどんどん増えていって」


「いつから?」


「二、三日前からみたいね。迷子と思っていたからこちらには報告が上がらなかったようね。殆どが幼児だし。それが十五歳ぐらいのスペイン語を話す娘が現れておかしい事に気付いた人がいたみたいよ」


「スペイン語?何処から来たんだろう?」


「その娘は南米の何処かみたいよ。話によると高地に住んでいた様ね。そんな感じで今も次々と送られて来ている訳なの。幼体だから保護対象でしょう?厳しい尋問も出来ないのよ。で如何しましょう?」


「成体の人は?」


「今の所は報告されていないわ。中学生ぐらいなら何とか話も出来るけど。それ以下だと泣き喚くばかりでどうしようもない事も多くて。小さな子は懐いてしまえば却っておとなしいみたいだけど。で如何しましょう?」


「取り敢えず保護するしかないだろう。その様子だと人種構成とかに傾向は無いんだよね」


「傾向は無い事は無いわね。まず幼児が多いわね。次に女の方が多いわね。それと上がってきた報告ではシナ人はいないわね。喋れない子供達までは確認できてはいないけど」


「女の子が多い理由は分からないけど。幼児が多いのは意志が弱くて送り易いからだろう。他は植物との親和性かな。以前の予想だと植物との親和性の高い種が月か火星に来るのではとしていただろう?まさか植物が人の幼体をどんどん送り込むとは思っていなかったけど」


さて如何しよう。

当然のことながら親は心配しているよな。

でもどこから来たのか見当もつかない。

植物と親和性のある親の子供達だとは思うのだけど推測できるのはそのぐらいだ。

これでは火星に来た勢力を取り込む事も出来はしない。

何処の勢力に属するかも分からない状況だ。

火星で考えていても状況は良くならない。

日本人がいる可能性があるからまずは日本で子供の誘拐とかの騒ぎになっていないか調べるかな。


「映美は日本で子供の誘拐とか行方不明の件を調べてみて、二、三日前からの話だと捜索とかで結構大事になっている気がするな。ニュースになっているかもしれない」


「日本語を喋っていたら迷子だと思って火星で親を探しているかもしれないわね。公表しておいた方が良いわ」


「そうだな……取り敢えず警察には知らせておこう。親が地球にいたら見つかる訳がない」


「そうね。直ぐ動きましょう」


「あと日本以外でも子供の行方不明の件は調べれるだけ調べておいて」


「了解しました。直ぐに調べるわ」


「あと一つ、月には来ていないの?」


「それは調べたけど月にはいない様よ。今の所は火星だけ」


調べて親が分かっても親元に返せるかどうかは分からないけどね。

正直に植物が火星に送り込んだという訳にも行かないだろう。

日本人なら色々と遣り様は有るけど国外は地球の連中に任せるしかない。

外交関係とかが有ってそう単純には行かないだろうしな。

あまり調べずに養子として引き取った方が問題が少ない気もするな。

ただ幼児はそれで何とかなるけどもうすぐ成体となる年齢だとそうもいかないだろう。

例によって殺すと発覚してしまうし。

刻一刻と人数は増える一方だし。

なんて面倒な状況だ。




地球からも直ぐに調査班が来て幼体達について調べていった。

日本人については子供の親に秘かに接触して火星に移住してもらう方向で動いていた。

植物によって火星に送り込まれると言う事は植物にとって送り込み易いと言う事だ。

地球にいたらまた火星に送り込まれる事になるだろう。

親子ごと火星に移住した方がこの先起きる問題も少ない。

なにせ毎日の様に人の幼体が火星に送られてくるのだ。

火星では専門の児童保護部門が創設されて幼体の保護にあたる事となった。


この状況が何故始まったのか調べているのだが時期的に見てヨーロッパの原理主義者によるエルサレムへの侵攻の影響だろう。

人の争いが激しくなる事で植物が多すぎる人の中の送り易い者を火星に送り込んでいるのだ。

成体では意志が強いので植物に親和性を持っていても同意がないと転移出来ないと研究者は予測している。

人が他人を転移させる時も相手の承認なしには不可能だから同じ事だろう。

植物に親和性を持ち意志の弱い幼体は植物が好きに転移させる事が可能だが植物に親和性を持っていても成体の意志に反して転移させる事は不可能と言う事だ。

要は成体でも転移の意志が有れば転移可能と言う事だから火星に成体がいつ来てもおかしくない状況にあるって事だな。


で今一番の問題は火星に送り込まれてきた直ぐにでも成体になりそうな子供達だ。

男は十八歳の一人のみで他は全て女なのだが一部を除いて真面な教育を受けていない様子なのだ。

まぁ、その辺りは今からの教育で如何とでもなるから良しとしよう。

日本語が使えない事も今からの教育次第で何とかなるだろう。

それで成体になった時に如何するか。

日本人なら魔法の基礎教育を受けて火星人ならそのまま鍛錬を続けて一通りの魔法を身に付ける。

火星に住むならそうしないと宇宙開拓に加われないからそうするのが普通だ。

だけど彼等は群れの仲間ではないからこちらから魔法を教授する事に忌避感が生じるためこのままでは魔法教育を受けることが出来ない。

このままだと火星の生活には不適合のまま火星に住む事になる。

親元に帰せるのなら問題は少ないのだけれど帰す方法がない。

それに政治的な状況を鑑みてあと三年は火星の状況を知られる訳には行かない。

結局の所は彼等の意志に任せるほかは無くてこちら側からは条件を提示する事となった。


まずは残念ながら親元に帰す方法がない事を彼等に示した。

火星から地球に帰す方法自体が限られていて現状では無理なのだ。

私達は普通にゲートで転移して地球と火星を行き来しているけど彼等には出来ない。

そして私達を信頼していない状態では彼等を地球に送ろうとしても魔法が発動しないのだ。

彼等には私達と信頼関係を築かないと火星から地球に帰すための魔法が発動しない事を話した。

だけどまずは火星の地下基地にいる事を信じなかった。

地下基地の地表部周辺は既に森林になっていて植物のバリアで大気が守られている。

少し寒いけど地表に出れるから余計に信じなかった。

太陽の大きさや月の無い事を示しても火星を地球の何処かだと信じていた。

幼体では嘘を見抜くことも出来ないしお手上げだ。

これでは信頼関係が築けるわけがない。

それにもうすぐ成体となる者に言葉も通じない群れの仲間でもない者と信頼関係を築けと言ってもなかなか難しいだろうな。

でも帰りたいなら私達の中の誰かと信頼関係を築かないといけない。

まぁ、仮に信頼関係が築けたにせよ最低三年は帰すわけにはいかないんだけど。


次に成体になってから魔法を覚えれば自力で地球に帰る事が可能な事を示した。

ただ魔法教育を受けるには群れの仲間に加わって貰わないといけない。

具体的に言うと成体になったら私の眷族に成れって事だ。

美里や他の日本人の始祖でも問題はないけど火星には私以外の始祖は住んでいないから。

でそこから最低でも三年は鍛錬しないと地球に帰るだけの力は身に付かない。

それに私の眷族になると親からは裏切り扱いされる可能性が有る。

とその前に眷族になれるかどうかという問題が有る。

これは文化圏の違いで慣習等に相容れないものが有ると眷族になれない場合があるからだ。

眷族にならずに魔法使いになる方法は独学しかない。

誰かが使う魔法を盗み見るか自分で魔法を一から創るかして魔法を身に付ける事になるから何年かかるか分からないけど。


最後に彼等が植物の魔法によって地球から火星に送り込まれた事を示した。

理由は植物と親和性を持つ幼体で植物が勝手に転移を行う事が可能だったからと言う事も伝えた。

火星に送り込まれた日本人の幼体を調査した限りは間違いない筈だ。

皆植物好きの家庭に育っていて親の真似をしていた。

それで植物との親和性を利用して植物に地球まで帰して貰う事の可能性を示唆した。

これは日本でも技術が確立してはいないから技術を盗む事も不可能で自分で技術を確立する必要があるけど。

仮に技術が確立していても群れの仲間ではないから教える事は出来ないけどね。

この方法だと自分では魔法を使う必要はないから魔法を覚える必要もない。

ただ未知の技術だからどの様な危険が有るかは分からない。

植物が彼等を火星に送ったのだから植物が彼等を地球に送る事に問題が有るとも思えないけど。

これは自身で魔法を身に付けるのと同じで何年かかるか分からない。


一番容易なのはおそらく日本人と信頼関係を築く事だけど選択するのは彼等だ。

何れにせよ地球にいる事を頑なに信じる者も多いから難しいだろうな。




それにしても増え続ける一方の幼児は如何するよ。

世話をする人手を集めるので手一杯だ。

幼児とは言え信頼関係を構築しないと転移で地球に帰すことも出来ない。

取り敢えずDNAだけでも調べて管理しておくかな。

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