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01 種の分岐

真世歴35年のある朝、目覚めた私は真祖に成っていた。

現生人類の魔素生命が分岐して新たな魔素生命が産声を上げた。

古代魔法人が新たな人として分岐して以来8万年以上続いた現生人類から、分岐した新人類が誕生したのだ。


新人類と言っても分岐したてなので大きく変わった所は無い。

新人類が繋がっている魔素生命は新たに分岐した一柱しか存在しない。

人以外の犬も猫も牛等その他諸々のペットや家生種の魔素生命とは繋がってはいない。

繋がりは断たれた感じではなくて新たに誕生した一柱の魔素生命に収束した感じだ。

私の誕生以来の情報も全てこの新たな魔素生命に収束した感じだ


種の分岐も魔素生命との繋がりも今ならまだ元の状態に戻せる感じだ。

……だけど戻す気は無い、だってこの種が消えてしまうじゃないか!

新人類となり何の柵も無い状態に成れたのだ。

まだ新人類の魔素生命に繋がっているのは自分だけで群れの仲間は一人もいないのだ。

真祖は新人類の分岐点で今はまだ好き勝手に出来るけど仲間が増えたらそう簡単には行かなくなる。

暫くはこの余韻を楽しみたいのものだ。


現生人類の魔素生命から新人類の魔素生命に移った人は新人類となる。

でもその人達は何時でも元に戻れると言うかまだ行ったり来たり出来るのだ。

新人類の分岐はまだ確定していないのだから。

真祖の私が戻ったらこの分岐はなかった事になり、新人類の魔素生命は人類の魔素生命と一つになる。

真祖だけは行ったり来たり出来ず、真祖は新人類の方は宜しくねと他人に任す事は出来ない。

仲間が出来て群れとなって真祖の私が死んだら新人類の分岐が確定する。

でもそれで終わりではない。

優位を保てないと古代魔法人に吸収されたクロマニヨンやネアンデルタールの様に成りかねない。

新人類と言ってもまだまだ脆弱なものなのだ。

まあ、それはそれで仕方がない、人はそれを繰り返して繁栄してきたのだ。

私は真祖、分岐点なので私の行動が新人類の行く末を決める事になる。

私は真祖、安易な行動は慎まなくてはいけない。




そもそも人類の分岐については「いつ起こってもおかしくない」と何年も前から様々な人が注意喚起していた。

その頃の私はそれを聞いて『へぇ~そうなんだ。確かに考え方も生き方も多種多様すぎて纏まりが無いからなぁ。そんなものかも知れない』と呑気に考えていた。

そして『もし私が新人類に成ったら……』とか妄想していたのだ。

人類は地球上で増えすぎて一つの種として纏まるには限界が来ていたのだ

良く今迄持ったものだと言うのが新人類に成った私の感想だ。

これからは私以外にも新人類の真祖が続々と出て来る筈だ。


私が新人類の真祖に成って初めてやった事は妻に真祖になった事を知らせる事だ。

妻に話が有るとテーブルで対峙する。

仲間と感じない、これは同じ魔素生命に繋がっていないから当然だ。

妻の方も話が有るそうなので先に聞くことにした。


「私、新人類のマスターに成っちゃった。あなたにも私の魔素生命に繋がって貰って新人類の仲間になって欲しいんだけど………ダメ?」


「えっ、いやそれは、参ったな」


「信じてない?ほら仲間と感じないでしょう?同じ魔素生命と繋がっていないから」


「そうじゃなくて、私も新人類の真祖に成った。仲間になって貰う予定だったんだけど……」


「………えっ」


「如何しようか。一寸想定外だ。美織と美香も呼んでこよう。2人がこうだったら大変だ」


幸い娘達にそんな様子は無く、妻と私を見て訝しんでいた。

同じ魔素生命に繋がっていないので仲間に感じず違和感があるのだ。


「美織と美香には説明しておいて!ネットでも検索してくれると助かる。これが世界中で起きているのか。たまたま家だけの話なのか知りたい。私は大学に行って調べて来る」

私はそれだけ言って、大学の私の研究室に転移した。


大学では特にみんな変わらず、少し訝し気に私を見たがまた何か遣っているんだろうと言った顔をして挨拶していた。

私は取り敢えず上司の教授に相談する事にした。


「先生、お早う御座います。一寸いいですか?」


「お早う、あれ?変だな。また何か遣ってる?」


「その事も含めて、お話が有ります」


「え~と。それで何を遣っているの?」


「実は今朝起きたら新人類の真祖に成っていてそれで相談しに来たんです」


「………そうか繋がっていないんだね。だから違和感が有るんだ。それでどんな感じ?」


「仲間がいない感じです。魔素生命も一柱だけ、繋がっているのも真祖だから私だけです」


「へぇ~興味深いねぇ。君の情報は漏れていないから死亡扱いにはなっていない。猫とか犬の魔素生命は如何したの?」


「情報は収束されたみたいです。猫とか犬は新たに繋がるのは可能な筈ですがまだ試していません」


「試す前に色々と調べてみよう。試す時は私も立ち会いたいな」


「そんな事よりも重要な話が有るんです」


「重要って、過去情報を調べてもそんなに珍しくも無いよ。分岐しても子孫は残せるし、優位な方が統合吸収するだけだ。現状では現生人類が劣位にある訳だ」


「それは知ってます。別の話です。実は妻も新人類の真祖に成っていまして」


「君の奥さんて美里君もかい?それは面白い。美里君にも話を聞かせてよ」


「面白いぐらいなら良いんですけど世界的に同じ状況だと地域によっては不味い事になり兼ねません」


「ああ、そう言う事ね。う~ん、考えすぎではないかな。調べてみるけど」


「考えすぎなら良いんですけど文化圏によっては選民意識を刺激しておかしな方向に人を導く可能性が有りますよ」


「……じゃあ色々回ってみようか。君も来なさい。新人類の真祖がいた方が説得力がある。真祖って君が付けたの?学者内では分岐点とかポイントと呼んでるけど」


「知ってますけど自分の事をポイントと言うのは味気ない気がして……妻はマスターと言ってますよ」


「真祖にマスターかメシアとかよりはましか」


「メシアは無いでしょう」


「でも君が心配しているのはそれだろう?」


その日は2人で情報を集めたが心配していた様な兆候はまだ無かった。

私は日本の魔素生命とだけでも繋がっておいた方が良いと考えて先生の前でそれを行った。


「違和感が無くなりましたね。今日は回っている間も人に睨まれましたからね」


「まぁ、真祖の証明にはなったから良いんじゃないかな。内々に調査する話にはなったし」


家に帰ると妻が待っていて話し始めた。

妻も日本の魔素生命とは繋がった様で朝のような違和感は無かった。


「娘達には私の魔素生命に繋がって貰いました」


「それは無いんじゃないかな。相談して色々決めてからにするべきだろう?」


「悪いけどもう決めたから。それに相談しようにも大学に行ってもいなかったじゃない」


「それは今回の件で懸念が有って飛び回っていたから」


「家族よりも大事?」


「いや、私の懸念が当たっていたら落ち着いてきた世界がまた混乱するかもしれないんだよ?日本も巻き込まれる可能性が有る。そうなったら新人類の真祖に成った私達は特に危険だ」


「嘘は付いていないわね。あなたか私が現生人類のままなら上手く行ったのに何で……」


「今朝、君が望んだように私がそちらに繋がろうか?」


「それは駄目、こちらが飲み込まれてしまう可能性が有る」


「それはそうだけど、こちらも条件は同じでどちらかが吸収されて統合するんだ」


「そんな危険は冒せない。私はこの種の系統を守る使命があるのよ」


「使命って……真祖とかマスターとか言っているけど唯の種の分岐点なんだよ?」


「今朝起きた時に感じたのよ。この種を守らないと!」


「私も守りたいとは思ったけど……」


「あなたは元の人類に戻ろうと思う?」


「いや思わない、だってこの種が消えてしまうじゃないか!種が消えるのは可能性が消える事だ」


「そうでしょう?あなたが簡単に繋がろうかと私に言うのは自分が優位にあると感じているからよ」


「……そうかもしれないな、いや、きっとそうなんだろう」


「この件はこれで御仕舞いね。これ以上話し合っても如何にも成らないわ。娘達の事は悪いと思うけどあなたの方が優位にあるみたいだから譲って下さい」


「あぁ、この件はこれで御仕舞いだ。娘達の事は娘達の意志に任せる」


「あなたか私が現生人類のままなら上手く行ったのに。何でなの?」


「あぁ、せめて同じ日じゃなかったら上手く行ったんだろうにな」


この事が有って3ヶ月程で妻とは別れる事になった。

余りにも辛そうで見ていられなかったからこちらから切り出したのだ。

最近は肉体年齢30代前後の期間が70年間あるので20年も夫婦を遣っているのは珍しいって風潮だ。

でも私にはそんな気は全然無かったのに上手く行かないもんだな。




離婚後も娘達は時々家に転移して来て近況を話していく今一番の話題は弟の事で遺伝的には私の息子なのだが会わせては貰えない。

初めから新人類として生まれてきてとても重要な子供で違う種の私とは接触禁止なんだそうな。

今思うに辛そうだったのは悪阻だったからかもしれないな。

一言ぐらい有っても良かったんじゃないのかな。

今更どうしようもない事だけどさ。







離婚してから3年、私が一人で住む家に下の娘の美香と同じ年の娘が転がり込んできた。

何でも猫と一緒に公園を散歩している私を見ていて気に入ったそうだ。

猫は私の使い魔なので素直に言う事を聞くそれを見ていたのだろう。

この娘は猫と同じ名前で私が猫の名前を呼ぶ度に気分が良くなってきたんだそうな。

最初は猫の話から始まって……


「こんにちは。猫ちゃんとよく公園にいますよね。凄く馴れていますね。全然逃げないし、呼ぶと直ぐに戻ってくる」


「……あぁ、こんにちは。この猫は使い魔だからね。良く言う事を聞くんだ。繋がっているからね」


「使い魔なんですか?魔法ですよね。教えて貰えませんか?うちに仔猫がいるんです」


「別に構わないけど。結構時間が掛かるよ。仔猫だから速いとは思うけど」


「来週も公園に来ますか?友達も連れて来て良い?」


「毎週土日は用事が無ければ来ている。暇だからね」


「じゃあ、明日仔猫を連れてきます。私は榊 美弥と言います。猫ちゃんと同じ名前です。絶対に来てくださいね」


翌日、美弥と名乗った娘は友達と仔猫2匹を連れて公園にいた。

見た目は2人とも20歳ぐらいで友達の方は日本人には見えないけど日本の魔素生命とは繋がっている様だから魔法を教えること自体は問題無さそうだ。


「こんにちは。今日から御教授宜しくお願いします。こちらは友達のマルルです」


「こんにちは。マルルこと丸原 瑠美です。宜しくお願いします」


「こんにちは。今日から宜しくね。早速だけど仔猫達を見せて貰っても良いかな?」

仔猫を1匹づつ渡して貰って確認する。

人懐っこい仔猫ならそのまま了解を貰って整形質魔法を施そうと思ったからだ。

「うん、大丈夫そうだ。君達は整形質魔法は習得済みかな?未習得なら私が施すけど良いかな?」


「「宜しくお願いします」」


「じゃあ、施すから。週1でひと月も有れば充分だ」


その日から週に2回公園で使い魔の講習を行って2ヶ月程で2人とも使い魔にする事に成功した。

まぁ、家でも可愛がっているみたいだし、仔猫だからこんなものか。


「有難うございました。良ければアドレスを交換しませんか?分からない事が有ったら直ぐに聞きたいんです」


「携帯端末は持っていないんだ。必要が無いんで。仕事用の端末は職場にあるけど教えれないし。土日はここに来ると思うから分からない事はここで聞いて」


「分かりました。でも緊急の場合は如何しているんですか?」


「魔法だよ。魔法使いだからね。じゃあ仔猫に何かあったらここで相談に乗るから」


私は『2人とも優秀だったな。使い魔に出来ていたし』とかその日は思っていた。

美弥は翌日の日曜日にも仔猫を連れて一人で来ていてそれからも休みの日には当たり前の様に公園にいた。

気が付くと一緒に買い物をする様になって「あれが好き」とか「これが美味しい」とか「高校ではこれが流行ってる」「……高校生なの?」とか話すようになっていつの間にか家に上がり込む様になった。

いや流石にこれは不味いだろうと話し合ってみたのだが法的には成体になって結婚可能年齢だから問題ないと押し切られてしまった。


「あの~一応独身の一人暮らしなので若い娘が上がり込むのは不味いのではないかな?」


「大丈夫よ~もう成体だし結婚可能年齢だから何かあっても私の責任だし問題はないわ」


「何かあったら問題でしょう?君はまだ未成年だし問題に決まってる」


「今は成体かどうかで決まるから未成年とかは関係ないわ。何かあっても大丈夫」


「君はまだ18歳ぐらいだよね。高校生だって言っていたし問題だと思うけどなぁ」


「ぶー外れです。18歳ではありません」


「でも友達は20歳ぐらいに見えたけど。じゃあもうすぐ18歳か」


「ぶ~ぶ~外れです。マルルとはタメだし、もうすぐ18歳でもありません」


「……何歳なの?」


「16歳。あなたの娘の美香ちゃんのクラスメイトだよ」


「美香のクラスメイトって、どう見ても20歳ぐらいにしか見えないけど、高校生っていうから」


「そうなの、マルルもそうだから仲が良いんだよね~美香ちゃんは魔法が上手いから時々教えて貰ってるんだよ」


「16歳は不味いんじゃないの?」


「大丈夫だよ、メイクすれば20歳と30歳だし並んで歩いても言葉さえ気を付ければ問題なし」


調べたけど確かに一昔前の法律では年齢的に問題だったようだが今では成体であるかが重視されていて年齢は16歳以上なら問題はない。

親は如何なのと聞いてみたら母親は「気に入った男が居たら子供を作って孫を見せておくれよ」とか言っていて父親は母親に頭が上がらないそうで……

因みに母親は33歳、父親は55歳で私と同じ年齢だそうな。

流石に55歳と16歳は不味い気がする。

見た目は30歳と20歳ぐらいだけどそれでも不味い気が……

20歳の娘の美織は「実年齢なんて気にしていたら恋愛なんて出来ないわよ」だそうだ。

16歳の娘の美香は友達と父親なので少し引いていたが「見た目だけなら珍しくないよ」だそうだ。

娘達は美香の友達と言う点は多少気にしていたが実年齢の差は気にならないようだった。

彼女の母親に会ったけど全然気にしていなくて私と同年齢の父親は「私も似たような目に遭っていますから気持ちは分かりますが反対は出来ません」と遠い目をしていた。

彼女の周りに反対している人はいない。


真世歴以降に生まれた世代は老人を見た事が無くて実年齢を聞いても実感が湧かないらしい。

三十歳から百歳までは同じ年代との感覚に成っていて気にしていないのだ。

私はデータボックスにあるから昔の50代の父を鮮明に思い出せるけど彼らにはそんな経験は無い。

私より十歳も下の年代だと親は老けずにそのままの人も多くもう私の様な感覚は無いみたいだ。


3年前のマスコミの離婚騒動の話もしてみた。

私は息子を妊娠した元妻を捨てた事になっていて結構叩かれたのだ。

……知らなかったんですが。

次に妻の妊娠にも気付かない馬鹿って事にされた。

……確かに気付いてなかったけど悪い事なの?

最後は家族に捨てられた学者馬鹿となっていた。

……娘達はよく家に来るけど??

娘達は毎日の様に家に来ていたのにマスコミにはどうでも良い事なのだ。

それに新聞や雑誌等の紙面では嘘かどうか読者が判断できないからマスコミは好き勝手しているのだ。

で話してから「だから君もマスコミに色々書かれるかもしれないよ」と言っても「言いたい奴には言わせておけば良いのよ」で済みだ。


最後に新人類の真祖な事を打ち明けたら早々に私の魔素生命と繋がって目出度く眷族第一号となった。

あぁ、そういえば離婚した妻もこんな感じだったな。

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