- 9 フラグになるのかもなぁ -
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「くそっ…⁉︎時間がない、ここはひとまず預ける」
「あ、待て‼︎ おいっ…この喰らえぇぇぇええええええ…‼︎」
狭い路地を埋め尽くす程に巨大化した腕(正しくはスキルによって変質したものだが)を収縮し、片腕とサイズ揃えた。
こうして見ると、ただ単に灰色の包帯で包んだだけの腕。
しかし、これは多くの冒険を阻み、終わらせてきた怪物からスキルで模造したもの。
その効果は相手の出方で形態を変える。
腕は背を向けて逃げる者に向かって弾丸の様な速さで伸びる。
伸び続ける左腕だけでなく、右腕にも魔力を通し、軽く拳を握る。
(筋力影響増加…瞬発的ダメージ増加…基本ダメージ増加………よし…‼︎)
持ち得る攻撃バフを全反映した瞬間に、伸びる左腕が前方をにげる敵の襟を掴んだ。
さて、これで詰みだ。
伸びた左腕を一気に引き戻す。
伸縮自在な腕に引っ張られる形でこちらへ飛んでくる奴。
「うぇええ…首締まる首締まるっ‼︎」
「そりゃ背後から襟を掴まれればな
………覚悟はいいか?」
高速でやってくる奴にタイミング合わせて…
「いっちょ喰らえやぁぁあ‼︎‼︎‼︎‼︎」
「うぇええ…て、て、転移…っ!」
は、転移?
手元の敵は消え、ただ戻り続ける腕。その瞬間に気づく。背後の魔力。
「ふ、ふ、ふふふ…驚かせやがって、きょ、今日はこのぐらいにしといて…ぶほぁっ……⁉︎」
この瞬間、掴んでいた奴が消えた事でその分の重さを失い急速に加速した左腕が自分に戻ってきた。
その反動で体ごと吹っ飛ぶ俺。
俺の背中に仕込ませた魔方陣で背後に飛んだ奴。
転移した奴に俺はそのままクリーンヒットしたのだった。
◇
キリモミ回転するとは…
目が回る。
ああ…気持ち悪ぅ…
ん、でも手が非常にフィットする。
この表現は俺が抽象的に表したのではない。
つまりは力の抜けた掌の中になかなかフィットする理想的な丸みがあってだな。
その、なんかあったかくてだな。
その、柔らかくてだな。
その、小さくてだn…
「小さいは余計だぁぁぁぁあああああああああああ死ねぇぇぇええええええええええ‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎」
その瞬間ぐるんと身体が転がる感覚があった時には目が良く効く様になった。
その第一望目は、巻いたターバンがずれ、目に涙を溜めた金髪の娘が馬乗りで俺の喉元にナイフをあてている状況だった。