- 8 使い様では不意打ちも -
- 8 使い様では不意打ちも -
俺は垣間 蒼斗。
日本原産の男子だ。
今年で18歳になる。
今、俺は、
銀髪の女の子に押し倒されている。
数分前
*
「その命、差出せ…ッ‼︎」
視界を妨げる事なく、顔に巻かれたスカーフが先ず最初に気になった。そうこうしている内にスラリと抜かれた剣は光を反射し、鉄の屈強さを誇示する。
鍛えられた鋼は、疾風の如き速さで振り抜かれる。大振りの一撃は息の根を絶つに不足の無いものではあったが、短剣の切っ先をぶつけられ、軌道が変わると同時に喉笛を逃す。
「逃がすか…‼︎」
短剣いや、カトラスに近い独特な形状をした装備を持つ少年は振るわれた猛威を軽くあしらい、春の日差しの中、華やぐ街の群衆を無造作に掻き分けて姿を眩ます。
「なんで命を狙われてるんだ俺は⁉︎」
今は相当まずい状態なのは直ぐに理解できる。
取り敢えず、裏路地に入って奴を撒こう。
入り組んだ路地を暫く走り続け、持久力の限りの最善を尽くす。
立ち止まり、レンガの外壁へ手をついて束の間の休憩を挟む。
ここまで来て、追ってくる様子はない。あまり得意ではないが魔力のサーチで分かる通り、こちらに向かう存在は確認できない。
「一体…なんだって言うんだ。」
「教えてやろうか?」
背筋が凍る。
魔力の気配は全く無かったのに…
いつの間にか背後を取られている。
どういう事だ…
「お前が走りだしたその瞬間、私は貴様の背中に魔術を仕掛けた。
その魔術があれば貴様の居る場所にいつでも転移出来る。」
「…っ⁉︎」
成る程、魔力を持つ者は俺の様に訓練でサーチが可能になる。だが俺自身に魔術が行使されていれば、魔力の反応が自分自身と重なり感じる事が難しい。
最も、俺はサーチ自体が不得意だからだと言うのもある。
シルネや他の進行者なら自身の魔力と他の魔力くらい簡単に区別できそうだ。
こんな事言ったら、また修行メニューが増える。
やめてくれ。
最近、何かに目覚めそうなんだ…‼︎
「まだ追いかけっこでもするか…?
フフ…無駄なのはもう分かった事だろう」
「馬鹿言えよ、お前を殴ってでも聞きたい事が増えただけだぜ」
「生意気を言える立場…かッ‼︎」
先程の不意打ちとは大違いな勢いで襲い来る。
全体重をかけた一撃は重い。
だが、それは隙が生じる。
躱せればだが。
「うぉっ…クソッ…‼︎」
既で躱したが大きく態勢を崩す。
これは最早、殺してくれと言っている様なものだ。
勿論の事、これを逃すなどある訳がない。
「………隙ありッ…‼︎」
降り下ろした得物を、そのまま斬り上げる形で致命傷を与えた。
筈である。しかし手ごたえを感じてはいるが、肉を斬り裂いた感触とはとても遠い。
何だ…⁉︎ 岩を相手に技を披露した事はないぞ?
確かに垣間蒼斗という男。
人間ではある
一撃を防いだ片腕が変質しているだけだが。
「な、何だその腕はッ…⁉︎」
「こういうスキル何です…よっと」
動揺したその隙に一撃を叩き込む。
防御性、攻撃性ともに優れた怪物の一部。
蒼斗は使いづらい物も何とか使いこなせるまでに成長していた。