- 1 鉄製 -
ガチャ転生 英雄方程式 / 強能力待遇異世界行き
- 1 鉄製 -
手始めに、
問 題 で す 。
私は18歳2ヶ月になる高校男子生徒、垣間 蒼斗です。
突然なんですが、この私はパ◯ティが好きだ! 特に観るのが好きだ‼︎
あの一眼見ただけで胸を撃ち抜かれる衝撃は、さながら至高の輝きを何かしら放っているからなのだろう。ただの布きれに見えるか?
否、断じて否ッ‼︎あれをただ肌を包む布きれに思えるなら貴方、人生損してるよ‼︎
今まで何に興奮をおぼえてきたの⁉︎
むしろあれ以上にリビドー滾らせるものがあるなら、ぜひ教えてほしいね!
そう、私、もとい俺は純全たる普通の男子高校生であった明言しておこう。
*
この上記の文から、俺がどういう人間なのか、貴方は認識した。
そう、どういう人間なのか?
それが貴方に宛てた問題です。
どうぞお答え下さいといわれても、答え用のない事は、重々承知の上です。
ですから、解答あわせは私の与太話に付き合って頂けた後、そういう仕組みになっています。
え、なに、お前の趣味とか無駄話なんか聞いても得しないって?
……しかしながら話しておかなくては、本題に入れないので
そうです。私がした一部始終、異世界の話。
異世界モノは、お好きですか?
◆
苦しみは無かった。
黒く、薄暗く、何も無い、そこは何だか夢の中の様な不思議な場所だった。
この場所に来る過程に、苦しみは無かったのだ。そのはずだ。
ここは何だか居心地が悪く、いつまでも居てはいけないと、頭はそう認識していた。
辺りを見回して、何か無いだろうかとキョロキョロしていると、目の前に薄ぼんやりとした。光が目に入って、反射的に凝視する。
熱く見つめている内にみるみるその光は近づいて来た。
確かに、
ゆっくりと、
獲物を仕留める前の、息を潜める猛獣の様に…こちらへ近づいて来ている。
何故か分からないが、その光に恐怖を感じ無かった。
こんな異様な場所で、異様な光に当てられて、何も違和感が無いと感じている。自分でも妙なのは分かっているのだが、不思議と身体が伝えてこない––––– “ 危険だ ”と、
しかし、その光に何一つ疑問が湧かないわけじゃない。
もしあの光がこちらまで来たらどうなるのか?
分からない。
先ずここはどこで、あの迫るものは何なのか?
分からない……
そう何も分からない。
取り敢えずは、あの光から遠ざかるべきだろうか?
得体が知れないので、距離は取るべきだろう。
向かっている光から逆方向に進む。
すす …む…?
待て、
ここが『何なのか』理解していない。
というのも、これは何処かの部屋なのか?身体に床か壁かに触れている感覚も無い……というか、身体全体から “ 何も感じていない ”…
ここが部屋の中。
そうだとすれば何処かに出口でもあるのか?
いやしかし、身体に感覚が無いのも突っ込みどころだが、そもそも、
ここは空間なのか?
とか考えている内に、光はその輝きを一層強くして、視界を覆っていく。
光に包まれると暫くしないで、身体に感覚を覚えた。
手を握るなどの動作で神経が生きている事を確認する。
そもそも、手がある。ちゃんと。
当たり前の事だが、さっきまで感覚もないし、視界はぼんやりしていて、明るさが分かる程度だった。
それが今はっきりとして、さっきまでの抜け落ちた感覚が嘘の様だ。
辺りを見回してみれば、とても暗いが、前方に何か独特な雰囲気をした鉄性の両開き型らしい、大きい扉を見つけた
あとは特に何もないが、周りに壁があるかも暗くてよく距離が掴めないし分からなかった。
確かな事は、数メートル先にあった扉の存在だけである。何故かあの扉の周りだけが薄ぼんやりだけど拝見できた。よく目を凝らせば見えてくるかもと思い、辺りをキョロキョロと見回して––––––––
「やあ、こんにちは!」
「へぇあ⁉︎」
いきなり背後から声を掛けられ、つい変な声が出た。
「君だね。キーが担当する子!」
「え?なんすか?」
「え?なんすか?じゃなくてさ〜」
いきなり話し掛けて来たこの人は髪を後ろで束ねた長身の女性だった。とても整った顔立ちで、Yシャツとジーンズ姿の美人さん。その人は続けざまに、
「ここに来たんだから、軽いレクチャーぐらい受けたっしょ?」
バシバシと俺の肩を叩きつつレクチャーとか言ったこの人。
いやいやいや、知らないっす。
レクチャーって何が?
ここが何処かも知らないんですが…
あまりの素っ頓狂な態度を察してかこの人は、
「…そっか、まぁいいって、あたしが教えたげるよ」
と言ってくれたので何とかなるだろう…多分。
何か分かるだけでもいい。
この人は自分の自己紹介からここが何処で自分は何しに来たかも教えてくれた。
この長身の美人さんは、名をキーさんと名乗った。キーさんは此処で働く道先案内人だそうだ。
軽い態度から、嘘を教えられてる気がするが…悪い人そうには見えない。
「えと、キーさん?」
「はい?」
「あの、因みに僕の死因はなんですか?」
「君の死因かぁ…」
キーさんの言ったことが本当なら…
恐らく…
その質問をした時、キーさんは困った顔をしたが、暫く考えて口を開いてくれた。
「君はね、元いた所で何があったか知ってるよね?」
やっぱりそうか、そうだ。薄々感ずいていたが、俺は死んでいて、此処がその先に続く、死後の世界の入り口であるという事を。
「そう、君がいた所では『人間』が増え過ぎて、死ぬ数も、生まれ変わる数も多くて、困ってしまってさ。」
キーさんの話ではこうだ。
元いた世界で人が増え過ぎて、正直仕事が忙しくなり過ぎたから、そっちから別の世界に魂を持っていこうとしたそうだ。
なので神様がちょっとインフルエンザをいじくって、出来たウイルスをパンデミックさせたのだとか。
なにそれ、凄い身勝手が極まりない…
開いた口が塞がらないが、事実、ワイ死んでるし…今更なにか言っても無駄だしな…
「色々言いたい事あるの分かるけど、本当にすまなかったって思ってます。」
キーさんは頭を下げた。
うん、死んでから言われても。怒っても不毛だし…
「でもね、君には行き先を選べるんだ。18歳死亡でしょ?ならまだ間に合うね!しかもオプション付きだ。」
はい?
「さぁさあコッチだよ!」
キーさんは僕の手を引いてこっちだと誘導する。
何という事なくそのまま引っ張れて行く事にした。考えても分からない事は、直接、目で見た方が良い。
*
「さて、君は今何歳だい?改めての確認。」
「……18です。」
こうしてキーさんに連れてこられた俺は、今、あの扉の前に立たされている訳だが。
扉は見たところ鉄製で、独特な彫刻が施されている。
「質問いいですか、キーさん?」
「ん〜なんだい?こっちはセッティング大変なんだから手短要求ね〜」
がちゃがちゃと音を立てながら面倒くさそうに返答したキーさんに眉をしかめながら、俺は質問する。
「ここが死後の選択場、人生再スタートの分かれ道なのはわかりました。」
でも、と続け––––––––
「その、なんで生まれ変わり先を良く教えてくれないんですかね?」
「行ってからのお楽しみ、で納得して欲しいなぁ」
納得いってないからこの質問をしたんだけどなぁ…。
ま、あっち行ってから教えるから大丈夫と、
キーさんは言いながら勢い良くなにかのスイッチボタンを押した。
その途端、目の前の扉が重苦しい音を立てながらゆっくりと可動を始めた。
開き始めた門の隙間が少しずつ大きくなるにつれ、その間から、目も開けられない程の凄まじい風が押し寄せる。
「もう、君の背後には何者も居ないけど、前を向けば、向け続けていれば、頼りになる者も1人ぐらいは居てくれるよ!君の行く所はそんな世界だっていうヒントを与えておくね!これって規則違反なんだけどさ!」
意気揚々と語る、出会って間もない友人が、二度と会えないんだと言葉にしなくても伝わってきた。
「がんばれよ新人、歩け!君の求めた物の全てが、君を求めるようになる‼︎」
じゃあな垣間くん… 耳元でそう聞こえた後、俺は–––––––––––
*
「ん、え、確率確変⁉︎ うそでしょ⁈、でも5%よ…夢じゃないよね、本当よね‼︎」
凄まじい風に混じって、喚き声が聞こえてくる。湿った霧に身を包み僕の視界は目の前の少女に釘ずけとなった。
暫くして、
「こんにちは、私の最初のメンバーさんっ!」
途端に雷光の如く明るい光を俺の眼球が捉えた。
だが、直ぐにその光はなくなり、目の前の非常に端整な顔立ちの、純粋そうな少女と顔を合わせるのだった。
*
これがはじまりである。
最初に口にした言葉をここで反復しようと思う。
俺は、純全たる男子高校生であったと。