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今日から学校と仕事、始まります。①莞

映画を見よう

作者: 孤独

月に一度くらいの頻度で、人の家を借りての集まりがある。


「あらー?私達がビリなわけ?」

「珍しく早いな、……広嶋」

「うるせぇよ。藤砂。別に珍しくもないだろう」


集まる人数は6人。それぞれ楽しもうとする者、しょうがない者と分かれている。

特にこの6人はちゃんと綺麗に分かれた6人ではない。女という生き物が4人。男という生き物が2人。

大人という年齢を背負うのが5人、子供という年齢を背負うのが1人。


「今回もミムラの家を借りての集まりね!」

「今回のテーマは映画ですよ!映画!大きなTVを福引で当ててきましたから!」


無論、女が中心にこーゆう集まりをやろうと言い出したのだ。男の立場はとても弱い。やってらんねぇーっと、嫌な顔をする広嶋。一方でポーカーフェイスを貫いている藤砂がいた。

6人それぞれ観たい映画を決めて、2本ほど観て楽しもうとする企画だ。

女性陣。山本灯、沖ミムラ、阿部のん、裏切京子。この4人は楽しそうにTVを弄ったり、お菓子やビールの用意を始めた。



「全員、映画のBDかDVD、もしくは観たいものを決めてきた?」


この時のまとめ役である灯はすでにDVDを片手に確認していた。彼女が持っているのはハリウッド映画かつ、純愛物だ。いかにも女性らしい。

しかし、灯は”超人”かつ野蛮人(本人の前では言ってはいけない)な度を越えている暴力女である。その暴力女の彼氏というのが藤砂である。


「当然ですわ!」


灯の言葉と、取り出しているDVDに対抗するべく。裏切京子が持ち寄った映画は、野球が題材となっている映画だった。


「広嶋様ー!一緒に野球の映画を観ましょう!大の野球好きですわよね!?」


猫に餌をやるような仕草でDVDを揺らす裏切であったが、広嶋は辛辣な言葉を吐いた。


「創られた試合は嫌いなんだ。野球は生に限る。まず、却下だ」

「そ、そんな!!」


親愛する人のことを思って持ち寄った映画であったが、まだ自分が彼のことを知り尽くしていないことに愕然としてしまった裏切。DVDを落としてそのまま跪いてしまった。

その裏切を悲しそうに見つつも、同じものを持ってこなくて良かったとホッとするのはミムラ。



「私は日本のホラー映画だよ?」


怖い映画はあまり好きではない。だが、みんなで驚ける作品といったらこーゆうものだ。

ミムラだって広嶋のことを少し想っているため、合いそうなものを選んだ。しかし、広嶋はミムラの映画に無言でいて自分の持ってきた物を見せ付けた。



「アニメでも観るか」

「え?……ア、アニメ?」


それはなんていうか、オタクだったの?っと疑いたくなる言葉だった。

しかし、そーゆう質問をしたら殺されるという回答を突きつけられるだろう。大人4人は冷静にそのアニメを確認した。


『子供向け』


まさか!?


「あー!のんちゃんと同じ映画です!広嶋さんとお揃いです!」

「じゃあ、1つはこれでいいだろう」


楽しい集まりの中。唯一の子供(ミムラの居候)である、のんちゃん。泣き虫であるが、純粋な可愛さと危なっかしさを持つのんちゃんを手助けしようと、DVDを持ってきた広嶋。

こーゆう集まりではどう考えても、口が五月蝿くて拳をつい出してしまう灯が、十中八九強い。次点で裏切だ。

のんちゃん1人の意見はきっと折れるだろう。子供にはよく分からない大人向け映画など観ても、のんちゃんは辛いだろう。


「広嶋、……空気を読んで訊いて良いか?」

「なんだよ」


かわいそうなのんちゃんのために用意してきた広嶋であったが、……。いろんなものを犠牲にしているとのんちゃん以外の女性陣は思っていた。

藤砂がその気持ちを代弁するため、確認をとる。


「それは、……ちゃんとTSUTAYAで借りてきたのか」



子供向けって……ていうか、少女向け?


「あ?何が言いたい。当たり前だろ?」

「いや、……店員。驚いたりはしなかったのか?」

「顔を見ていないが」



凄い勇気(興味なし)であるが、広嶋のことを想っていた裏切とミムラにはちょっとショックな光景であろう。


「ひ、広嶋様が少女ものを……?え?なんで用意するの?」

「の、のんちゃんのためだよね?自分のためだとかだったら………」



ミムラは忘れようとビールを飲み始め、裏切はショックを超える痛みを求めてハバネロを口に放り込んだ。


「ところで藤砂は?」

「灯ので良い、……それ以外ないだろう」

「さすがラブラブ馬鹿野郎共。お前等は異世界にでも行っていろ」


『広嶋くんもね』っと、私怨染みた気持ちで広嶋を睨むミムラと裏切であった。

いくら子供だからといって、広嶋はのんちゃんに甘すぎる。厳しく接しているようで間接的に助けすぎだ。



「上映するものは決まりね」

「藤砂。お前が来た理由って、このためか?」

「想像に任せるが、……100%正解だ」


さすが、灯。汚い。作られた純愛映画など、見る気はなかった広嶋は早々に眠ってしまった。

一方で1本目ということもあって、灯と藤砂はもちろん。ミムラと裏切、のんちゃんも魅入った映画だ。



「ううっ、良い映画ですわねー」

「私もこーゆう愛をしたいです」


ミムラ、裏切。予想に反してとても温かい恋愛映画に、涙を流してハンカチを使ってしまった。用意した灯、賛同した藤砂はハッピーエンドと同時に仲良く肩を寄せ合いながら寝てしまった。

そして、次に始まったのんちゃんが用意した映画。その時間ピッタリに目を覚ます広嶋は、のんちゃんを揺すってあげた。


「おーい、始まったぞ」

「すー……」

「おーい」

「すー……」



のんちゃん、寝てる!自分で用意した映画が始まるというのに寝てしまっている!よく考えればもう午後の11時だから、眠ってしまう時間だ。

虚しそうな雰囲気で始まる子供っぽいOP。それに目と耳を向ける広嶋であったが、それよりも厄介なのが両隣に現れた。


「ねーねー。広嶋くんが勧めるアニメってどーゆうのなの?」

「教えて欲しいですわ、広嶋様ー」

「…………のん。起きろ。なんか、俺があらぬ誤解をされている」

「すー……」

「起きろーーー!お前が見たいって言うから俺が、そーなるようにしただろうが!!金だって出しただろ!!」

「すー……」


のんちゃん。起きない。今頃、幸せな夢でも見ているのだろう。

一方でまったく楽しくない現実にいる広嶋。


「童心に帰ったみたいで楽しそうなアニメだねー」

「広嶋様のオススメでしたら、ちゃーんと観ますから」

「いや。お前等の観たい映画にしてもいいぞ。俺は見る気がない」



ダーメ!!


「広嶋くんはのんちゃんに甘すぎるよ!」



なんやかんやでのんちゃんが観たいアニメを視聴する3人であったが、子供のアニメも馬鹿にできない。かなりハートフルなストーリーにミムラも裏切も興奮しながら魅入ってしまった。しかし、広嶋にとってはもっとも合わないアニメを視聴することに心が苦しかったとか。

翌日、のんちゃんはグッスリ眠れたことを気持ちよく広嶋やミムラに話していた。イラッとした広嶋の顔をミムラは見逃さなかった。



………………………………


そして、これは映画会が始まる前の話。



「広嶋さん、どーして同じものを2つも選ぶんですか?のんちゃんはこのアニメが好きですけど」

「良いから黙ってろ」


TSUTAYAでDVDを借りていた広嶋とのんちゃんであるが、


「お子さんですか?随分と可愛いですねー。お父さんも大変ですよねー」

「どう考えても俺は20代だろ。とっとと会計しろよ。喋るんじゃねぇよ」


2つ用意するために、のんちゃんを呼んでいた広嶋であった。


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