第八話 俺、とある女神の探し物に奔走します。
「君たちィ、残念だったねぇ~☆」
「うるさい! お前が全部逃げたことを隠していたせいだ!」
「人聞きが悪いなぁ子猫ちゃん。この私が隠し事なんかするワケがないだろう? フフフ、君たちが訊かなかったから、あえて言わなかっただけのことさ」
「む、むぅ……があああっ! 腑に落ちないぞ、ゴルァァ!」
「ま、まあ、落ち着けよ、ミケ! 俺たちがナニも訊かなかったせいでもあるんだし……」
「う、ううむ……」
と、俺はニャルラトホテプに対し、怒鳴る――だが、アイツの言うことは別段、間違っちゃいないので八つ当たりに等しく虚しい気分だ。
「しかし、深夜の学校ってマジでキメェな! 学校の怪談とか、そんな都市伝説の元ネタ的な怪現象がホントに起きそうな雰囲気だぜ!
「うむ、それは言える! しかし、なんで、こんな時間に、俺たちは呼び出されたんだか……」
「ご主人様、眠いっすわぁ~……」
「ネコ科の動物は夜が本領発揮の時間だ!」
さてさて、なんだかんだと人造獣人が化けている生徒は、二年B組の生徒である高瀬洋一郎に化けていた個体以外は見つからず――とまあ、そんなワケで俺、みるく、ついでに使い魔のアリスとテュポンは、アイツらの見つけ出すことを一旦、中止し、仕置きの依頼の方を優先するのだった。
「ミケちゃん、眠いよ……てか、こんな時間に外出しているのがパパにバレたら、すっごく怒られるんですけど!」
「深夜の外出はお肌に悪いわ! せっかく、お風呂に入ったのにぃ!」
そうそう、俺たちだけじゃ心細いので愛梨とアフロディーテもさそったんだが、どうもコイツらは乗り気じゃないなぁ。
「フフフ、君たちと一緒にいるとイイ暇潰しになって最高だよ!」
「むぅ、俺としては迷惑なんだよなぁ、ニャル……」
どうでもいいけど、ニャルラトホテプが一緒について来る――ったく、嫌な奴に目をつけられた感じだなぁ、俺は……。
「中庭にやって来たぞ! さて、依頼主は、どこにいるのやら……」
「なあ、どうでもいいけど、あの悪趣味な像はなんだ?」
「あの熊に跨った女神像のこと? アレは考古学者でもある学園理事長が古代ギリシャの遺跡で発見したモノを改修した大理石の像みたいだよ」
「へ、へえ、そうなんだ。じゃあ、元は悪趣味な像じゃなかったワケね」
「う、うん、恐らくはね……」
「でも、鎧兜はいらないと思うっす。まあ、カッコイイ戦乙女って感じっすけどねぇ……」
「うん、余計な飾り物だよなぁ……」
さてと、俺たちは依頼人が指定してきた場所――光桜学園新校舎の中庭へとやって来る。ちなみに、現時刻は午前零時、煌々と満月と星々が輝く深夜だ。
と、依頼主はどこにいるんだろう!? 今いる中庭には、熊に跨ったヘンテコリンな大理石の女神像があるけど、そんな依頼主の姿は、どこにも……。
「ゴメン、ゴメン、遅れてしまった! 依頼書を君たちに渡した僕がいないとダメだよね、やっぱり?」
「む、ヘルメス! てか、もしかして風呂あがり?」
「そうだよ。バスタイムの時間だったけど、君たちのことを思い出してさぁ~」
ブーンという昆虫の羽音が聞こえる。それと同時にミント系ボディソープの爽やかな香りが――ん、バスローブ姿のヘルメスが、いつの間にか、俺の左肩に座っている。
「ヘルメスさんもお風呂あがりみたいっすね。むぅ、あたしは薔薇の香りがするボディソープを愛用しているっす!」
「薔薇のニオイは強烈だから苦手だなぁ……と、依頼主なら、すぐそこにいるんだけど、君たちは気づいていないのかい?」
「え、すぐそこにいる!? ちょ、俺たち以外、中庭には誰もいないぞ!」
「ここにいるぞー!」
「うおわあああ、熊に跨ったヘンテコリンな女神像がしゃべった!」
「ひゃああ、ついでに動き出したよ、ミケちゃん!」
な、なにィィ! 熊に跨った大理石の女神像がしゃべる! そして動き出したぞ! ひょっとして、コイツが!?
「つ、付喪神の類か!?」
「コラコラ、私をそんなモノと一緒にするな! まあ、分霊みたいな存在ではあるが……さて、こんな感じなら、驚くことはないだろう?」
「わ、人間の女のコの姿になった!」
「さて、私はアルテミス。この学校の守護者であり、月の女神で――っと、依頼主ってヤツでもある」
熊に跨った大理石の女神像が、ボフッという軽い爆発とともに光桜学園の制服を着たポニーテールの女のコの姿に変化する。
んで、ギリシャ神話に出てくる月の女神アルテミスと名乗る――ふむ、依頼主というのは、どうやら彼女のようだ。
「ん、どうでもいいけど、そこのふたりから男のニオイがするんだけど、気のせいだろうか? しかし、奇妙だなぁ、見た目は完璧な女のコなのに……」
「き、気のせいですってば!」
「そうそう、気のせい、気のせい!」
アルテミスは男嫌いという話がある女神だった気がする――むぅ、俺が元男だってバレたらヤバそうだなぁ。
「やあ、アルテミス。彼女らが君の依頼を受けた魔法少女だ」
「ヘルメスではないかっ……って、コイツらが? なんだか新人っぽくて心配だなぁ」
「う、心配されてるぞ、俺たち……」
「むぅ……」
「まあ、お前たちでいいわ! んじゃ、早速だが、あるモノを探してほしいんだけどOKかな?」
「あるモノ? 仕置きの依頼じゃないのか?」
「仕置き? まあ、場合によっては、お仕置きをしちゃってもかまわないわ! なにせ、私の大事な弓矢を盗んだ不届き者の捜索を頼める魔法少女がいないか――と、ヘルメスに依頼をしたワケだしね」
「ああ、そういえば、弓と矢をたずさえた女神像でしたよね? あ、それがなくなっているのに、今、気づきました!」
アルテミスからの依頼というのは、大事な弓矢を盗んだ不届き者の捜索のようだ。
さて、愛梨曰く、大理石の女神像の姿の時にたずさえている弓矢がなくなっているらしい――なるほど、それを探してほしいって依頼なのね。




