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第七話 俺、メイドになります。その8

「この脳みそ野郎! 俺に眠りを妨げ罪を数えやがれェェ~~!」



「お、おい、暴れんな! まったく、お前が目を覚ますとロクなことがない……」



「な、なんだとぉ! フン、まあいい、今はあの脳みそ野郎をボコる方が先だな!」



「その前に、さっきの一撃でグチャグチャになってしまったぞ……」



俺――美樹原健司こと魔法少女ミケの右足は、面倒くさい寄生生物に寄生された状態である。



 とまあ、そんなワケで〝ソイツ〟が目を覚ましている間は、完全に自由を奪われてしまう。



 迷惑な寄生生物の名前はアロンダイト。アーサー王伝説に登場する湖畔の騎士ランスロットの愛用の剣の名前を冠する財団Nとかいう悪の枢軸的な連中によって人工的につくられた神である。



「う、うおお、いつの間に!? げげぇ、グチャグチャになった脳みそ野郎の肉片がべっとりついちまったぞ! 気持ち悪いから拭いてくれ!」



「えええ、嫌だよ! 触りたくなんかない!」



 脳みそ野郎――先端の目玉がある触覚、トンボのような翅、そして鋭い牙が生えた口が見受けられる人造獣人の本体は、先ほどのアロンダイトの攻撃を受け、グチャグチャに砕け散ってしまっている。



「フフフ、馬鹿だねぇ。本体が直接、攻撃しなけりゃ勝てたかもしれないものを……」



「お、おい、お前は味方なのか、それとも敵なのか? そこらへんはっきりさせろーっ!」



「ハハハ、私は味方さ~☆ さて、財団Nの連中は肉体を奪う種類も開発しているようだね。松永君、当然、知っているだろう?」



「知らなかった、そんなの……」



「ほう、財団Nに所属する君でも知らないことがあるんだねぇ、クククク」



「と、当然さ! アレを開発したイシュタルってヤツは秘密主義者なんだ。ブラックガシャドクロが魔力と同時に生命力も吸いあげるモノだってことを教えてくれなかったし……」



「まあ、とにかく、人造獣人を一体、斃すことができたわね」



 なんだかんだと、財団Nに属す魔法少女である松永であっても知らないことばかりのようだ。



 ま、とにかく、人造獣人を一体、斃すことができたワケだ――って、光桜学園の生徒に化けた人造獣人は、後、何体いるんだろう!?



「む、本体と分離した人造獣人の肉体が爆発したぞ!」



「証拠隠滅だな。あのイシュタルならやりかねない……」



「イシュタルって何者なんだよ、松永!」



「ま、とにかく、元の二年B組の教室に戻るわよ、みんな!」



「お、おう!」



「そういえば、戻る前に山田たちの記憶を操作しなくちゃいけないんじゃないかな、沙希」



「山田? ああ、鈴木君のことね? さて、記憶の操作の件については、私のそれを思いついたところだったわ」



 俺たち、そして沙希の使い魔のゾウさんことアイラヴァータの背中の上にいるクラス委員の豊崎を除くと、二年B組の生徒たちは、皆、気絶した状態なんだよな。



「記憶の操作なら、この私に任せたまえ、クククク……」



「いや、アンタは任せると危険な気がするから却下! この私にだって記憶の操作くらい簡単よ! この本を使えばね」



「ほう、死霊秘法(ネクロノミコン)を使うのか?」



「そうよ。この本を使って〝彼〟を召喚すれば、アンタになんか頼らずに、クラスのみんなの記憶を操作できる」



「彼? その本をナニかを召喚することもできるのか?」



「フフフ、みんなにイイ夢を見ていた――とまあ、そんな記憶操作になるとは思うんだけどね」



 記憶の操作かぁ、沙希は死霊秘法とかいうボロっちい本を使ってナニを召喚する気なんだろう? お、そんな死霊秘法が光り出したぞ!



「うお、死霊秘法とかいう本から光る球体が飛び出した!」



「お、おい、光の球体がペンギンに変化したぞ!」



「うお、みるく! いつの間に!」



「ハハハ、俺は不死身だぞ。肉を食えば、どんな怪我でもすぐに治る!」



 さっきまで気絶していたはずのみるくが、いつの間にか目を覚ましており、ガツガツとほんわりと湯気のあがる骨つき肉を食べている。



 とまあ、そんなみるくのことはさておき、死霊秘法から飛び出した光る球体が一羽のペンギンの姿に変化する――ああ、ちなみに、ペンギンはペンギンでもフンボルトペンギンだ。



「沙希ちゃんに呼ばれて参上いたしました。ヒュプノスと申します。皆々様、よろしくお願いします!」



「は、はあ、よろしく~」



「んじゃ、早速、頼むわ、ヒュプノス」



「ん、私はナニをすれば? ああ、そういうことですか……では、早速!」



 ペンギンはヒュプノスと名乗る――ん、そういえば、ペンギンの姿をした死神がいたような気がする……あ、ああ、ハーデスとタナトスだっけ?



 あ、ああ、そういえば、ヒュプノスはタナトスの兄弟神だったような? んで、眠りを司る――と、そんなヒュプノスがクワッと嘴を開きピンク色の煙を吐き出す。



「な、なんだ、その煙は!?」



夢幻煙(ドリームスモッグ)よ。あの煙を吸った者はイイ夢を見ることができる」



「そ、そうなのか……って、猛獣たちを使って二年B組の連中を一か所に集めみたいだな」



 へ、へえ、夢幻煙ねぇ、寝起きにはイイかもしれないな。俺も夢の中でくらいイイ思いをしたいしなぁ……。



 と、沙希の使い魔である猛獣界の住まう猛獣たちが気絶している二年B組に生徒たちを一か所に集める――お、夢幻煙が彼ら彼女らの身体を覆い尽くし、その姿が見えなくなってしまう。

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