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第七話 俺、メイドになります。その5

 俺たちが生徒会室を離れ二年B組の教室に向かう少し前に、時間は(さかのぼ)る。



「ええと、サマエルさんの席は廊下側の一番前の……って、珍しいわね。高瀬君が登校しているだなんて――」



「うお、マジだ! 高瀬、来てたのかよ、お前!」



「つーか、しばらく姿を見なかったし、退学したのかと思ってたぜ」



「ま、まあ、とにかく、サマエルさんは丁度、空いている窓側の一番後ろの席を使ってください!」



「はーい」



 サマエルは突然やって来た転校生ってところである――お、イイ席が空いているじゃないか! 窓側の一番後ろの席って最高だ! 



 窓際は暖かいし、おまけに外の景色を見れるのでラッキー! 俺なら絶対、最高の席だと思う!



 と、それはともかく、二年B組の担任の教師こと朝倉美晴もといミーア少佐は、滅多、お目にかかれない希少生物を見るような好奇の視線を廊下側の一番前の席にいる痩せこけて顔色が悪い男子生徒に向けるのだった。



「さて、高瀬君、毎日、登校しないと、そろそろ単位が危なくなってきている教科があるわよ!」



「イ、イヒヒ、そうですか? キキキ……」



「うっ……とにかく、明日からヒキコモリなんてやめて登校よ、登校!」



「キキキキ……はい、わかりました……イヒ、ヒヒヒッ……」



 廊下側の一番前の席に座る痩せこけて顔色の悪い生徒――高瀬洋一郎は、不気味な笑い声を交えながら、ミーア大佐に問いかけに返答する。



「ねえ、サマエルさん、君はアメリカのどこから来たの?」



「あー、マサチューセッツ州にあるアーカムって町かなぁ?」



「うお、アンタたちぃ! サマエルさんの周りに集まりすぎ! まだホームルームは終わってないぞ、ゴルァァ!」



 と、ミーア大佐が怒鳴るが、痩せこけて顔色が悪い男子こと高瀬洋一郎を除く二年B組に在籍する男子女子に問わずすべての生徒たちが、ドッと一斉に甘い蜜の引き寄せられた昆虫のようにサマエルがいる窓側の一番後ろの席の集まってしまっている。



「サマエル、かすかにだけど、この教室内に異形の気配を感じる!」



 さて、穏行の術で姿を消した状態のサマエルの使い魔――黒猫のキョウタロウの姿も、当然、二年B組内にも見受けられる。



 と、そんな黒猫のキョウタロウが感じ取った異形の気配の正体は、人造獣人が化けている生徒――高瀬洋一郎の身体から発する瘴気のようなモノだろう。



「キィィ~~! アンタたち、黒板を爪で引っかくわよ!」



「「「ヤバい、それはマジでヤバい!」」」



「ひいいっ! 美晴先生の毎度お馴染みの必殺技が出るわ!」



 ドンッ! と、サマエルの周りの集まっている生徒たちが一斉に口にする――え、黒板を爪で引っかくのがミーア大佐の必殺技(?)だと!? むぅ、そう女子の生徒のひとりが口にしたぞ、今っ!



「ややや、やめろォォ~~! ひゃおおお、がおおお……ぎ、ぎぎぎぎぃぃ!」



 む、ひとりだけキレる生徒が……高瀬洋一郎だ!? とにかく、奇妙な雄叫びを張りあげ、表情に狂気が彩らせながら、グワッとミーア大佐をにらみつける!



「わ、わああ、高瀬君! なんですが、突然、大声を張りあげちゃって……ビ、ビックリしたなぁ、もう!」



「うぐぐぐっ……黒板を爪で引っかくんじゃねぇ! あの音を聞くと、俺の……俺の理性が吹っ飛んでしまう! せっかく、普通に暮らせるまでに自分を抑え込むことができるようになったのにっ! それを台無しにするのか、ゴルァァ!」



「ひゃわあっ! ゴ、ゴメンなさ……って、先生に向かって、その言い草はなんですか、高瀬君!」



「うううう……うっせぇ、アラフォーババア!」



「が、がああん! アラフォーババアって言われたわ!」



 高瀬洋一郎の場を圧殺するようなキレ具合にサマエル以外の生徒は、皆、臆し、沈黙する。



 おまけにアラフォーババアと言われたミーア少佐は、ガクンと意気消沈し、彼女もまた沈黙する。



「お、おい、高瀬、どうしたんだよ? 突然……」



「そうだぜ。お前は根暗だから、絶対に怒鳴らないと思ったのに……」



「突然? それの根暗……だと! ぐうう、この薄汚いアホがァァ!」



「な、なにをするんだー! 許さん!」



「そうだぜ! いきなり、殴りかかるなんて!」



「ね、ねえ、そんなことより、高瀬君ってさ。そんなにたくましかったっけ?」



 高瀬洋一郎の怒りは、なおも続く! 近寄って来た男子生徒ふたりを殴り飛ばし……ん、奇妙な現象が起こっているぞ!?



 や、痩せこけて顔色が悪いそんな高瀬洋一郎の上半身が、いつの間にかムキムキのマッスルボディに豹変しているじゃないかっ!



「サマエル、あの男子生徒は人造獣人かもしれない!」



「え、ええ、キレた拍子に半変態してしまったっぽいわね! みんな、そいつから離れて!」



 コイツぁは不味い状況だ! と、サマエルが窓側の一番後ろの席から立ちあがり、ダッと駆け足で人造獣人という真の姿に変身する一歩手前という感じの状態かもしれない高瀬洋一郎の前に立ちはだかる!

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