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第七話 俺、メイドになります。その4

「生殺与奪の権利は私が握っている!」



「う、うん、わかった! 従うから、そのでかい手を頭の上から除けてくれないかな……」



「OK! それでいいのよ、ウフフフ……」



「…………」



 丸腰の状態で、おまけに真っ黒な荒縄で簀巻きにされた状態じゃOKって言わざるを得ないよな。



 と、ホッキョクグマの姿に変身したままの状態の沙希は、ギランとすべての指から鋭い爪を展開させた白くてモコモコした大きな右手を松永の頭の上に乗せている。



 アハハハ……あ、あれじゃNOって絶対に言えない状況だよなぁ、丸腰で簀巻き状態じゃない万全な状態でも、あの至近距離じゃホッキョクグマに変身した沙希に勝てるわけがない。魔法少女であっても――。



「な、なあ、沙希ちゃん、僕はナニをすればいいのかな……かな?」



「そうね。アンタにも探すのを手伝ってもらいたいのよ、人造獣人を――」



「え、人造獣人が、この学校内の潜んでいるのかよ! うーん、生徒に化けているなら、ちょっと不味いなぁ……」



「不味い?」



「う、うん、僕は一応、アレを開発した財団Nに所属しているからさ。アレの詳細なら……っと、不味いって言ったのは〝とある音〟が発動条件だったりするからだよ!」



「は、発動条件? ど、どんな音でナニが発動するんだよ!」



 そういえば、今は男の姿に戻ってはいるけど、松永は財団Nに属す魔法少女だったな。



 そんなワケで人造獣人の詳細を知っていても当然かな? 



 さて、松永が言う〝とある音〟を聞くと人造獣人が化けている生徒の身にナニが起きるって言うんだ?



「もしもだけど、誰かが黒板を爪で引っかくとしよう。その瞬間、近くに人造獣人が化けた生徒いたら発動してしまうんだよ、獣化が!」

 


「な、なんだと!?」



「うっわぁ、黒板を引っかく音って最悪だよな! あの音を聞いただけで寒気が走る!」



「なるほど、〝とある音〟の正体というのは、あの地獄の旋律と言っても間違いがない耳障りで歪な音のことだったワケね」



「あの音に関しては、この私でもヤバいねぇ! SAN値ってヤツがガリガリ下がってしまう!」



「え、邪神のお前なら、あの音が大好きなのかと……」



「失礼だな! この私でも、あの歪な音の旋律だけはゴメンだ!」



 沙希の言う通り、黒板を爪で引っかく音は、まさに不快を極めに極めた地獄の旋律だ! 



 と、邪神であるニャルラトホテプも苦手なのか、意外だ、意外すぎる!



「なんだかんだと、突然、獣化する恐れがあるわね……困ったわ」



「でも、大丈夫なんじゃね? 誰も好き好んで黒板を爪で引っかくワケがない」



「ああ、ミケの言う通りだぜ!」



「ところがどっこい! 黒板を爪で引っかくことで注目を集めようとする迷惑を極めた奴がいるのよ!」



「「な、なんだってー!」」



 ちょ、おま……だ、誰だよ! あの地獄の旋律を注目を集めるために利用するのは! げ、外道~~って言いたくなるぞ、おい!



「叔母様よ……」



「叔母様? あ、ああ、ミーア大佐か……うお、そういえば、二年B組の担任の教師でもあったな!」



「うへぇ、あのおばさん! 狂っている!」



「叔母様は、あの音を快感に思う変人なのよ。だから、困っている……」



「に、人間は恐ろしいねぇ、クククク……」



 ニャルラトホテプにも恐ろしいと言われるミーア少佐こと沙希の叔母、美晴……確かに言える! 黒板を爪で引っかく音を不快ではなく快感に思えるだなんて――。



「なんだかんだと心配だわ。二年B組の教室へ戻るわよ――てか、ヘルメスを先に向かわせている。人造獣人が化けている生徒……高瀬洋一郎を監視させるために! ああ、アンタもついて一緒に来るのよ、町松永!」



「う、うん、わかったよ、沙希ちゃん!」



「そういや、ヘルメスがいつの間にかいなくなっていると思ったら、そういワケか……」



 人造獣人が化けている生徒の名前は高瀬洋一郎という男子生徒だ。ちなみに、ニャルラトホテプから手渡されたリスト帳に記載されたデータによると、件の高瀬洋一郎はヒキコモリで滅多に学校に来ない奴なんだが、何故か今日に限って珍しく登校して来たとか――。



 沙希は、ソイツを監視させるべくヘルメスを一足先に二年B組に向かわせたようだ。まったく、抜け目がないなぁ。



「そういえば、サマエルやミーア大佐いるし、仮に獣化しても対処できそうだな」



「ええ、でも、なるべくなら公にしたくないのよね。ああいう〝存在〟を一般人である級友たちには――」



「うむ、難しい問題だな……」



 サマエルやミーア大佐が二年B組にいる以上、仮に高瀬洋一郎が獣化しても、すぐに対処できるかもしれないが、沙希の言う通り、あの化け物の存在をナニも知らない同級生たちに公にしたくない気持ちはわかる。



 それはともかく、俺たちは職員室を離れ二年B組の教室へと向かう――ん、ニャルラトホテプまでついて来たぞ。アイツは確か黒木夜子と名乗り、三年生に在籍しているはずなんだが……。

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