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第六話 俺、不死者を退治します。その22

「門が開かれたわ。抵抗せず冥界(あっち)へ行くことをオススメするわ」



「じょ、冗談じゃないィィ~~! た、助けろ、助けろよ、坂口ィィ~~! テメェ、せっかく、この私が彼女になってやったんだぞ! 助けるのがァァ……当然だろうがァァ~~! 八つ裂きに……八つ裂きにするぞ、ケダモノがァァ~~!」



「…………」



 坂口は無言のまま由梨を見つめる。それに対し、由梨は罵詈雑言を吐きながら、悪鬼羅刹のような形相で彼をにらみ続ける。



「由梨、今、わかったよ。お前の本心が……そして、君はお父さんを殺しただろう?」



「はあぁぁ~~? お父さんを私が殺した? そんなワケがないでしょう! お父さんは心臓発作で……」



「心臓発作? そう見えたんだと思うが恐らくは知らず知らずのうちに、お前が父親の生命力を吸いあげていたんだと思う。不死者は他人の生命力を奪いながら、その肉体を維持している場合があるからね」



「そ、そんな! じゃあ、私は……私は……う、うごご……が、がああ!」



 衝撃の事実(?)を哀香が告げた直後、ズドンッ! と、由梨の両足に膝のあたりまで黒く変色した地面の埋まる。冥界の門に飲み込まれたってところか!?



「かかかか、身体が埋まる、埋まるっ……い、嫌だ! ううう、あががっ……助けて……助けっ……」



「ゆ、由梨……」



「さあ、フィニッシュだ! みんな歌うぞ、死者の安寧を願う讃美歌を――っ!」



 人鳥円陣を構成するハーデスとタナトスを筆頭としたペンギンたちが、その姿からは意外するほどの美声で死者の安寧を願う讃美歌――鎮魂歌(?)を歌い始める。



「おおう、ペンギンたちが歌を! しかし、意外すぎるほどの美声だ!」



「あ、ああ、そんなことより、由梨の身体が、さらに地面にめり込んでいく……」



 ハーデスがフィニッシュと口にしているので冥界送りの儀式は、そろそろ終りを迎えるのかもしれない。



 ズブズブと由梨の身体が冥界へと引きずり込んでいる冥界門の吸引力が一気にあがり、一瞬で彼女の首から下が地面に埋まる。



「お前が言い分は冥界(あっち)で聞いてやる。大人しく冥界へ行くんだ」



「い……嫌だ……っ! 私は……私には、まだ……やることが残っ……てい……る! さ……さ……坂口く……ん……」



 友里の身体が完全に地面に開いた冥界の門の中に消え失せる――と、しばらくの間、沈黙が続くが、



「坂口君、今ならアナタも冥府へ送ってあげるわよ」



 哀香のそんな一言が沈黙を裂く――で、どうしたい? と、問われた坂口は、



「俺は冥界には行かない! 俺はヒーローになりたい!」



 え、ヒーローになりたい!? とにかく、坂口はそう返答するのだった。



「俺はラーテルだ! 仮初の肉体だけど、強靭な動物となったんだ! あのデカブツの攻撃にも耐えた身体を使って悪を懲らしめたいんだ!」



 ライオンの牙にも、コブラの毒に強い――とまあ、仮初とはいえ、そんなラーテルとなった坂口の胸中でヒーローになりたいという願望が生まれたんだろう。



「よし、私が鍛えてやろう!」



「ダンパー!」



 ドンッ! と、ダンパーが言い放つ――そういえば、そんなダンパーは俺が住んでいるS市の隣町に該当するO市だったかI市で活動するヒーローみたいな存在だったな。



「ダンパー、俺をヒーローにしてくれ!」



「うむ、了解した! だが、覚悟しておくんだ。私の訓練は厳しいぞ!」



「おう、望むところだ!」



「まったく、仕方がない。わしもつき合うとしよう。わしもなんだかんだとヒーローってヤツになってみたかったからな!」



 坂口の仮初の肉体――ラーテルの剥製が、本物のラーテルと化した過程には、腹に貼りついている古い銅鏡の姿という状態のサワメのおかげでもあるワケだ。



 そんなサワメもヒーローに憧れていた!? 一応、神様なのに、ちょっと意外かも――。



「さてと、事件解決っと!」



「うーん、そうなのかな? なにか忘れている気がするだけど……」



 事件解決――と、沙希が口にするけど、俺はナニかを忘れているような気がするんだが、それがイマイチ思い出せないのが苦々しいなぁ。



「おい、ミケ、忘れてないか? さっき坂口が仕置きした蔵内が、あのニャルラトホテプからアレをもらったことを!」



「ア、アレ?」



「人造獣人よ! 蔵内翔真は仕置きを依頼した坂口本人が仕置きをしちゃったけど、まだアレは残っているわ!」



「う、うおー! 忘れていたぜ! がああ、なんで、そんな大事なことを! お、俺の馬鹿ぁー!」



 そ、そうだ、忘れていたけど、あのニャルラトホテプが蔵内翔真に与えた配下――人造獣人の存在を!



「やあ、君たちィ~☆」



「わ、ニャルラトホテプ! つーか、なんで、ここに!?」



「ニャルラトホテプ!? 邪神が……猛獣界へ! く、それはともかく、なんで〝あの女〟の姿をしている!」



「お、おい、どうしたんだよ、沙希!」



「なんで死んだ私の母親の若い頃の姿をしているんだァァ~~! ううう……うがああああっ!」



「あ、あああ、言われてみれば、確かにニャルの姿は若い頃の沙英姉さんそっくりだわ!」



「え、そうなのママ?」



「うむ、沙英姉さんの妹の私が言うんだ。間違いないわ!」



 うお、気づけば、背後から首に手を回すかたちで、あのニャルラトホテプが、俺に抱きついている!



 と、そんなニャルラトホテプの姿を見た途端、沙希がホッキョクグマに変身し、けたたましい咆哮をはりあげる。



 そういえば、沙希は母親のことを恨んでいたはずだ。



「まあまあ、落ち着きたまえクマちゃん……よっと!」



「あ、あうあう!」



「う、沙希が気絶した!?」



「フフフフ、私はトラブルに遭うのが嫌いだ。そんなわけで眠らせたのさ! ああ、ちなみに、この姿は私を古代エジプトの〝とある遺跡〟から解放してくれた恩人の姿だ」



「そ、それが沙英姉さんってワケね?」



「フ、名前まではわからないけどね。さてさて、蔵内クンは、そこにいるラーテルの臭腺による攻撃によって再起不能の状態だ。そんなわけで私が彼に与えた人造獣人共が野に解き放たれてしまった」



「な、なんだってー!」



「さて、どうする? どうする、どうする、君ならどうする~☆」



「も、もちろん倒すに決まっているわ! ミケ、みるく、行くわよ!」



「お、おう!」



「うむ、やるしかないよな!」



 まったく、面倒くさいな! だけど、蔵内の支配から解き放たれた人造獣人をどうにかしないといけない! 俺はサマエルとみるくとともに猛獣界の外へ飛び出すのだった!

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