表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

88/278

第六話 俺、不死者を退治します。その21

「人鳥円陣の中心にある水晶の台座は不死者を冥府へと誘う(ゲート)を開くための触媒よ!」



「ま、俺がいなかったら、アレをいくつも用意しなくちゃいけないし、おまけに巫女(ペンギン)の数もアレだけじゃ全然、足りないんだよなぁ」



「ん、どうでもいいけど、プルトンキューブが割れて中身が!」



 轟ッ!! と、烈光を放つハーデスやタナトスを筆頭としたペンギンたちの円陣の中心にある水晶の台座の上に置いてあるプルトンキューブが、パンッという甲高い音とともに砕け散り、その中に封印されていた中川由梨が、外に――。



「う、うう~ん、ここはどこ!? わ、ペンギンがたっくさん、可愛い~☆」



「フフフ、お目覚めかしら、腐らないゾンビさん」



「え、ゾンビ!? ちょ、失礼なことを言うわね! 私はあんな気持ちの悪いモノと一緒にしないでほしいんだけど……あ、あれぇ? 身体が動かない! なにが起きているの……がはっ! 苦しい……く、苦しいィィ!」



 身体が腐敗しないとはいえ、由梨さん、アンタはゾンビと同じ存在です。



 さて、動けない――と、由梨は苦しそうにもがき始まる。



「ゆ、由梨っ!」



「坂口くんだっけ? 人鳥円陣の中に入っちゃダメよ! 入ったら多分、幽霊であるアンタの場合、その仮初の身体が砕け散って、真っ先に冥界へ転移させられてしまうわ!」



「まったく、わしは冥界なんぞに行きたくなんかないぞ! お前と一心同体と化しているわしのことも考えろ!」



「うううう、由梨ィィ~~!」



 そういえば、坂口の身体は、腹に貼りついた光桜学園の守護神であるサワメによって維持されている仮初の身体である。



 が、哀香曰く、人鳥円陣(ペンギンサークル)の中に入り込んだ場合、そんな仮初の身体が砕け散ってしまうとか――。



「そ、その声は坂口君なの? た、助けてよ、助けて……ぎ、ぎぎぎっ!」



「由梨が苦しんでいる! お、俺はどうすればいいんだァァ~~!」



「あのコは不死者だから苦しんでいるのよ。アンタも、あの円陣の中に入ると同じ地獄の苦しみを味わうわよ」



「う、ううう、痛いのは嫌だ! わかった、ここで見ているよ……」



「さ、坂口君、助けて……助けて……助けろよ、ゴルァァ~~! アンタは私の彼氏だろう? さっさと助けろ! うぎぎぎ……た、助けるのが使命だろう! うがああああっ……なにをしている、クソ野郎! 早くしろよ、このヘタレがァァ~~!」



「ゆ、由梨……」



 む、パンッと由梨の中でナニかが弾け飛んだかのように突然、口調が暴力的なモノに代わり、坂口に対し、罵詈雑言を言い出す。



「本性を現したわね! これで心置きなく冥府へ移送できるわ!」



「ふ、ふざけんなァァ~~! 私にはまだやらなきゃいけないことがたくさんあるんだ!」



「ま、わかるわ、その気持ち――が、私の見たところだと、アンタの腐らない身体にも限界が近づいているようね」



 それと同時に、内に秘めた生者の血肉を求める不死者(アンデット)としての本性が覚醒したかのように、グワッ由梨の表情に狂気が彩る。



「私の身体に限界が? はぁ、ワケのわからないことを言ってんじゃねぇ! 何故、何故……何故、私がこんな痛い目に遭わなきゃいけないのよ!」



「それはアナタがゾンビが吸血鬼の仲間である不死者で、おまけに調べたところ……殺人もやっちゃっているわね! ま、その罰と思ってほしい」



「ううう、さっきからワケのわからないことをベラベラと! この私のどこがグチャグチャに腐ったゾンビだって言うのよ! それに吸血鬼だぁ? 私は人間の血なんか吸わねぇっつーの! 馬鹿か、お前ら!」



「むぅ、まったく自覚がないみたいね。ああいうのが知らず知らずのうちに周りの人間を不幸にするタイプだわ」



「マ、ママも近い気がする。俺はママの趣味に巻き込まれたワケだし……」



「悠ちゃん、なにか言った?」



「い、いや、なにも言ってないよ、ママ!」



 ミーア少佐と娘の悠子のやりとりはともかく、哀香に対しての返答を聞いている限りじゃ、由梨は不死者としての自覚がないみたいだ。



 うーん、それはそれで厄介だぞ。確かに、ああいうのは知らず知らずのうちに周りを不幸にしていそうだし、おまけに由梨の場合は腐敗箇所が見られないだけでゾンビみたいな存在ってワケで――。



「フン、この私の身体に限界が来ているとか、殺人をやっちゃったとか? そんなワケのわからないことを言う根拠はなんなんだよ、クソがァァ~~!」



「身体の現界? そうね、それを示すモノ――首筋を伝う蛆虫が物語っているわよ」



「え、首筋を伝う蛆虫……ヒッ! ううう、またコイツ! 一体、どこからっ!」



「アンタの身体から湧いたに決まっている! 恐らく、身体の内側から腐敗し始めているのよ。蛆虫は、そこから……」



「う、嘘だァァ~~!」



「嘘じゃない! 蠅は腐ったモノに敏感な昆虫よ。故に、アンタが知らないうちに……」



 由梨は左の首筋を伝う蛆虫を勢いよく右手で叩き潰す! うわ、身体の中身から腐敗が始まっているのね。



 んで、蠅はそんな由梨の身体の内側の腐敗をいち早く察知し、その身に潜り込んで卵を……うう、想像すると怖いなぁ。



「ああ、殺人に関してだけど――お、門が開いたようだ」



「な、なに! うがあああっ!」



 ズギュウウウンッ! と、人鳥円陣の中心にある水晶の台座の周辺の地面が真っ黒く変色し始める――冥界の門は開かれたってヤツ!?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ