第六話 俺、不死者を退治します。その18
「お、おわあああっ! キリトが気絶してしまった! これじゃ俺様の身体が損傷した場合、誰が修復するんだよ! お、おい、起きろ、起きろォォ~~!」
だが、返事がない。松永は完全にノビてしまっている。
しかし、沙希は松永に対し、一体、どんな魔術を仕掛けたんだろう?
「ねえ、ミケ。人間がもっとも恐れる動物がナニかわかる?」
「え、なんだよ、それ?」
「鈍いわね。それは熊よ!」
「え、熊!? ま、まあ、確かに熊と真正面から遭遇したら怖くて足が竦むとは思うが。別段、最恐ってワケでは……」
「あら、その物言いだと、熊以上の怖いモノがいるって言いたそうね?」
「く、熊って怖いなぁ!」
「フフフ、わかっているじゃない~☆」
熊は確かに恐怖の対象だと思うけど、もっとも恐ろしい存在ではないと思うんだが――ま、まあ、沙希は、そう強く思い込んでいるようだから、これ以上、下手なツッコミを入れるのをやめておこう。
「さて、デカブツさん。相棒を死なせたくなかったら、そのまま眠らせてあげては?」
「な、なにィィ!? フン、そういうワケにはいかねぇな! おい、キリト、起きろ! 奴らを叩き潰すのには、お前の魔力が必要なんだ!」
ガシャドクロブラックは最低な奴かもしれない――というか、相棒である松永キリトが、現在、どんな状態なのか理解していないっぽいし……。
「クソがァァ~~! 何故、気絶したままなんだァァ~~! 起きろ、起きろォォ~~!」
シーン、無反応です。松永キリトは完全にノビちゃっていますよ、ガシャドクロブラックさん。
「アイツをノックアウトにするには、今がチャンスじゃないのか?」
「あのデカブツに踏み潰されて地面にめり込んだ状態のアンタが、それを言っても説得力がないんだけど……」
「サマエルの言う通りね。ま、でも、今なら……面白いことを考えちゃったわ! んじゃ、ここはひとつアナタの手伝ってもらおうかしら、北条瑠々奈さん」
「う、うわああ、なんですかー、熊さん!」
「フフフ、そう怖がらなくてもいいわ。んじゃ、私の背中に乗って!」
「は、はあ、それじゃ失礼します……」
俺はガシャドクロブラックを踏んづけられて地面にめり込んだ状態だ……うう、情けねぇ。そして動けないんですけど!
まあ、そんな俺がなにを言っても説得力がないよなぁ――と、それはさておき、沙希が瑠々奈になにかしらの協力を要請したぞ。
んで、ホッキョクグマの姿を維持したままの状態でいる沙希の背中に瑠々奈が、ヒイイッと悲鳴をあげながら、恐る恐る乗るのだった。
「く、熊さん、なにをするんですか? わたくしはどんな協力を?」
「熊さんじゃない! 沙希ちゃんと呼びなさい!」
「ヒ、ヒィ、沙希……ちゃん!」
「それでよ~し……っと、私の仲間から聞いたわよ。アンタはあのデカブツと同じ巨大骸骨の使い魔を保有しているんでしょう?」
「ま、まあ、そうですけど、私の場合、使い魔を合体させて――」
「ふむ、それだけわかればいいわ。んで、魔力はどれくらい回復しているの? 仲間の話は魔力が全部なくなって自爆したそうじゃない」
「う、うう、とりあえず、二十五%ほどは……」
「ふむ、まあ、十分ってところね。んじゃ、早速、件の使い魔の合体させた巨大骸骨を召喚してもらうわよ」
「え、ええ、ガシャドクロをですか!? うーん、アレを召喚すると、またわたくしの魔力が空っぽになってしまいますゥゥ~~!」
「その心配には及ばないわ。アナタは今、ホッキョクグマに変身した状態の私の背中に乗った状態よ。不足分の魔力なら、そんな私から吸収されるわ。私たちはリンク中だからね」
「あ、ああ、なるほど! 私を背中に乗せた理由は、そうだったワケですか……と、失礼します! ガシャドクロ召喚……ええっ!? でも、アレは巨大な骸骨熊じゃないですか!? お、おかしいですね。私のガシャドクロは巨大な人間の骸骨巨人なんですけど!」
毒をもって毒を制す? いやいや、デカブツにはデカブツをもって制す? 沙希が考え出した対抗ってワケ!?
さて、瑠々奈の使い魔は元ボクサーを自称する山田を筆頭として人間の動く骸骨たちで、そいつらが合体して誕生するのが骸骨巨人のガシャドクロなんだが、どこでどう間違ったのかはわからんけど、ドンッとそびえ立つ雄々しきモノの姿は、巨大な熊の骸骨だ!
ひょっとして瑠々奈がホッキョクグマの姿を維持したままの状態でいる沙希の背中に乗っているせい? うーん、ありえそうでありえない展開だ!
「うおおお、巨大熊骸骨! 面白ぇ! かかって来いやァァ~~!」
「お、おい、黒い方はやる気満々だぞ!」
「フン、望むところよ! ガシャドクロホワイト、あの真っ黒コゲをフルボッコにしちゃいなさい!」
「おう! てか、なんで俺は熊の骸骨なんだよ?」
「それはどうだっていいじゃない。人間の骸骨よりカッコイイわよ」
「「えっ!?」」
「カッコイイだろう?」
「「は、はいィィ~~!」」
「それでよし! じゃあ、行けガシャドクロ……いや、クマドクロ!」
えっ!? 俺もそう言いたくなったんですけど! とにかく、瑠々奈の使い魔ことガシャドクロ改めクマドクロは、首を横に振りながら、腑に落ちなそうにガシャドクロブラックに立ち向かっていく!




