第六話 俺、不死者を退治します。その15
「こ、このケダモノ共がァァ~~! よくも俺様の身体をバラしやがったな!」
ガシャドクロブラックの巨体は、案外、脆いのかもしれない。
ホッキョクグマに変身した沙希が率いる猛獣たちの体当たりを食らって、全身がバラバラに砕け散ったワケだし――と、なんだかんだと肉が存在しない骨々な身体が原因だろうね。
「フン、俺は不死身だぜ! バラバラにされようが無限に再生できるからな!」
俺は不死身ねぇ――まあ、あっと言う間に元通りの真っ黒な骸骨巨人の姿に戻ったし、それは間違いないと思う。
まったく、この手の再生する敵は面倒くさいな。仮に再起不能にするなら、再生不能になるくらい奴の身体を構成する骨を粉々にしなくちゃいけないのかもしれない。
その他に、あのデカブツを再起不能にするに方法があるとすれば、主である松永キリトを攻撃し、再起不能に追い込むか?
「ガシャドクロブラックは不死身だ! 何度、その身をバラバラにしようが、即座に元通りに戻る!」
と、再びガシャドクロブラックの巨大な頭の天辺にまで跳躍する松永が、俺たちをドヤ顔で見下ろし、右腕を大きく横に振りながら、そう言い放つ。
「へえ、そうなのか? すごいなぁ――が、それを可能としているのは、お前の魔力なんだろう? つーか、無尽蔵ってワケじゃないよな?」
「む、サングラスと赤いマフラーを身につけたジャイアントパンダ!? 何者だ、貴様っ!」
猛獣たちのリーダーであるホッキョクグマに変身中の沙希ほどは大きくはないが、同じ熊の仲間である目の周り、両耳、四肢、背中の両肩の間の体毛が黒く、その他の部分が白い熊――ジャイアントパンダが、ガシャドクロブラックの巨大な足許に行く手を遮るかのごとくドンッ! と、立ちはだかる!
「おい、なんだよ、あのジャイアントパンダは?」
「むぅ、あれはまさか!?」
「みるくちゃん、知っているの!?」
「うむ、あくまでウワサ話……都市伝説みたいなモノかな?」
「そのウワサ話っていうのは、隣町のO市で目撃されたジャイアントパンダの姿をした正義のヒーローのことだ」
「お、おい、テュポン! それは俺が説明しようと思ったことなのにィ!」
へえ、そんな正義のヒーロー(?)の目撃例が、俺が住むS市の隣街のO市を中心に都市伝説のようなかたちで広まっているのか、それは知らんかった。
「ま、とにかく、彼は猛熊戦士ダンパー! 私の使い魔の一頭よ」
「や、やっぱり、沙希の使い魔なのかよ!」
「使い魔と書いて『とも』と読むってところだ! まあ、ここは私に任せたまえ!」
猛熊戦士ダンパー!? それに使い魔と書いて『とも』だぁ? ま、まあ、とにかく、あのジャイアントパンダに任せてみるのもいいかもしれないな。
「パンダ野郎! お前が俺の相手をたったひとりで引き受けるつもりなのか? は、面白ぇ話だ!」
「ああ、私が相手だ、デカブツ君!」
「デカブツだとォォ~~! 生意気な野郎だぜ、うおりゃあああ!」
「フン、当たるものかよ!」
ズオオオッ! と、ガシャドクロブラックの巨大な左足がダンパーを襲う! が、シャッとまるで舞踊を舞う踊り子のように優雅に躱すダンパーは、それと同時にガシャドクロブラックの右足の脛に体当たりをぶちかます!
「ぐ、ぐぅわああっ! 右足の脛にヒビがっ……だが、この程度、無敵の俺には利かぬわぁ!」
「おお、すぐに元通り! だが、これならどうだ!」
バキッ! と、ガシャドクロブラックの右足の脛に亀裂が入る! だけど、あっと言うの間に元通りに――む、無敵と自称しているけど、本当かも!?
「パンダハンマー!」
「が、がああ! 頭突きだと、面白ぇ! だが、無駄無駄無駄ァァ~~!」
ダンパーはガシャドクロブラックの亀裂が入ったもののあっと言う間に再生した右足の脛に頭突きを叩き込む――うお、バキッ! と、右足が脛の部分が折れガシャドクロブラックは仰向けの倒れる! うう、身長十メートルは確実にある巨体なだけに、まるで地震が起きたかのような震動がドンッと地面を伝ってくる!
「ガシャドクロブラックを仰向けの転倒させるとはね。やるじゃないか、パンダ君! だけど、無駄だってわけらないのかな?」
「フフフ、まあ、これも〝作戦〟のひとつなんだがね! そらぁ、頭突きをもう一丁!」
「ぐ、ぐぎゃ! コ、コイツ……お、俺の左足も折りやがった! だが、無駄なのことだァァ~~!」
ダンパーは続けざまにガシャドクロブラックの左足の脛にも頭突きを――むぅ、だけど、再びあっと言う間に先に折れた右足と同様、何事もなかったかのように元に戻る。
「なあ、作戦とか言ってるけど、ナニをするんだ、アイツ?」
「ミケ、アンタの眼は節穴? よーく、見なさい……松永の方を!」
「え、松永を!? むぅ、顔色が悪いな、アイツ……うお、まさか!?」
ダンパーが口にした作戦ってヤツが、松永の顔色を見てなんとなくわかったぞ。
「あの調子だと、終わりが近いな、ミケ!」
「うお、お前もわかったのかよ!」
「私も、私も!」
「私にもわかったわ、ミケちゃん!」
みるくや愛梨、それにアフロディーテにもわかったようだな。さて、ダンパーは跳躍し、脳天から仰向けの転倒するガシャドクロの右胸に落下する。
あの作戦が成功させるなら、ガシャドクロブラックの骨々な身体を破壊しなくちゃいけないしな! だけど、後、〝何回〟、奴の身体の一部を破壊しなくちゃいけないのやら――。
「う、おかしいな……ガシャドクロブラックの損傷個所を修復する度、私の身体から魔力以外の〝ナニ〟かが一緒に吸い取られているような……ガ、ガフッ!」
ん、松永は両手で口許を押さえながら、ガクンと膝から崩れ落ちる――でも、すぐに立ちあがったけど、アイツの身にナニかが起きているっぽいぞ。




