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第六話 俺、不死者を退治します。その10

 そうそう、言い忘れていたけど、光桜学園の旧校舎四階にある図書室内は、沙希が〝とある本〟を媒介に展開している固有結界とつながっている――つまり異界に、俺たちはいるワケだ。



 え、そんな固有結界の中身は、どんな感じかって? そうだなぁ、一言で説明するとサファリパークだ。



 とまあ、サファリパークということで、あっちこっちに世界中の野生動物――主にライオンなど猛獣に種別される動物が見受けられる……ど、どうやら、すべて沙希の使い魔らしい!



 んで、猛獣界(ビースト・ザ・ワールド)という名称があるようだけど、マジでそう思う環境だ……ヒッ! エプロンを身につけた熊がコーヒーを運んできたんですけど!



 ま、それはともかく。



「あああ、思い出しただけで苛々する! あの女のせいでお父さんは死んだ! あの女が生きていたら、この姿でなぶり殺してやるのにィィ!」



 ――と、沙希は自分の近くに生えている一本の木を叩き折る。ちなみに、そんな沙希はホッキョクグマの姿に変身したままなんだよなぁ。



「う、なんだ、アイツ……」



「今の沙希は触らぬ神に祟りなしってヤツだな」



 おいおい、なにがあったワケ? むぅ、とりあえず、触らぬ神に祟りなしって言葉の通りだ。ほとぼりが冷めるのを待つとするか――。



「あのコはね……エレクトラコンプレックスなのよ。ま、話すと長くなるからやめておくわ」



「お、おう……」



 ミーア少佐が悲しそうに沙希を見つめている。そういや、沙希から忌々しい存在と思われている彼女の母親は、そんなミーア少佐の姉だったな。



「さて、叔母様。ここへナニをしにやって来たのか理由は、このプルトンキューブに封印されている特殊な死者を手に入れることかしら?」



「そうだよ、沙希ちゃん! 俺は嫌だって反対したんだけど、ママが騒ぐあまりついつい……」



「フフフ、悠クン、代わりに説明ありがとう」



「あ、ああ、それほどでも……」



「ふむ、アフロディーテがすべてを聞いたけど、腐敗しないゾンビなんでしょう? すごく興味が惹かれるわね」



 うむー、当然だよなぁ、興味が惹かれても――なにせ、中川由梨は腐らない特殊なゾンビのような存在だいねぇ。



「……で、このプルトンキューブに封印されている特殊な死者をどうする気なのかしら?」



「わ、私はその死者を調べて腐らないゾンビをつくりあげようと思っている!」



「私は蒐集品(コレクション)に加えたいなぁと……」



「マ、ママ、悪趣味だよ! ま、まあ、腐らないなら側に置いてもいいかなぁ……」



「ダメよ、そのコを玩具のように扱っちゃいけない」



「皆さん、どうも~☆」



「あ、お前は竜造寺舞夜! それに……誰?」



 ん、猛獣界という某サファリパークを完全再現したような固有結界につながっている図書室にやって来たぞ――む、あの竜造寺舞夜だ。それにフッと長い黒髪を右手でかきあげる背の高い女のコが一緒だぞ。



「哀香! 待ってたぞ!」



「哀香? ハーデスの相棒?」



 竜造寺舞夜と一緒の図書室にやって来たのは、ハーデスの相棒である哀香って人物のようだ。



「沙希ちゃんと舞夜以外は初めてかな? 私は上杉哀香。迷える不死者を冥界へと誘うことを生業としている魔法少女です。さてさて、ここにいるアナタも例の不死者を玩具にしようと目論む魔法少女じゃないでしょうね?」



「ち、違う! 断じてっ……う、動けん、身体が動かん!」



 キッと上杉哀香は、図書室に集まった俺たちに対し、鋭い視線を向ける――が、がああ! 俺は蛇ににらまれた蛙なのか!? う、動けん……身体がっ……まったく動かないィ!



「私はどっちでもいいんですけどね、先輩。ま、興味はありますが。すでに吸血鬼のリュシムが使い魔として側にいますから、不死者はもういらないです」



「うへぇ、吸血鬼の使い魔がいる……だと!?」



 沙希の使い魔には吸血鬼までいるのかよ――う、そういえば、沙希と一緒にいると、たまに奇妙な気配を感じることがあるんだが、もしかして!?



「ふ~ん……ま、とにかく、死者を冥界へと導く者として中川由梨ってコを冥府へ送りたいと思っているのよ。見た目は生前と変わらないし、おまけに生前と変わらぬ生活を送ってはいるけど、彼女は死者――現世(うつしよ)にいちゃいけない存在だからね」



「ちょ、私の使い魔たちは怨霊がばかりです……」



 と、北条瑠々奈が苦笑する。それはともかく、不死者は現世にいてはいけないねぇ――まあ、間違っちゃいないとは思う。



「現世にいる不死者は、肉体があるないに関係なく、そのほとんどが元人間だ。やれやれ、我が生涯に一片の悔いなし――という潔さがない未練の塊なのか、人間は?」



「…………」



 人間は未練の塊だってハーデスが言い出す。それも間違ってはないので言い返すことができないなぁ……。



「俺が仮に死んだら、この世に残りそうな予感……」



 ふう、仮に俺が死んだ場合、素直に冥界へ行くことができるだろうか? そこらへんが心配になってきたぜ。


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