第六話 俺、不死者を退治します。その3
「なにもない草原って感じね」
「ああ、だが、油断できねぇ!」
どこのどこいつが固有結界なんてモノを発動させて、俺たちをその中に取り込みやがったんだ!? だけど、なんだかんだと、悪い感じのする場所じゃないぞ……ゆ、油断しちゃダメだ、俺!
「草原のど真ん中に花畑があるぞ! ん、誰かいる!」
「きっと、この固有結界の主よ!」
魔法少女歴が浅い故に、固有結界ってヤツがどんなモノかについてはイマイチだけど、現実世界に強引なかたちで異界を構築するって感じでいいんだろうか? ん、それはともかく、花畑が見受けられる……ん、誰かいるぞ!? 固有結界を展開している術者である魔法少女か!?
「ごきげんよう、皆さん」
「むぅ、ゴスロリ娘……いや、魔法少女か、お前は!?」
「如何にも、ワタクシの名前は北条瑠々奈。アナタたちが捕獲したレアモノをもらいにやって来ました」
草原の花畑にいたのは、白とピンクで基調されたフリルがいっぱいついた可愛らしいゴスロリな格好をした北条瑠々奈と名乗る女のコだ。歳は十七、八歳くらいだろうか? てか、やっぱりレアモノな不死者――中川由梨を狙う魔法少女のようだ!
「な、なんだとォォ~~! 許さん、由梨は渡さんっ!」
「あ、坂口、待てーっ!」
「こんな奴、僕が倒してや……ギャ、ギャゴォーン!」
「む、地面から腕が……な、なんだ、あれは!?」
「ほ、骨っ! うわあああ、骸骨が地面から湧いて出た!」
「コ、コイツ……死霊使いか!?」
いきなり飛びかかるなんて無謀だ! とばかりに、坂口が北条瑠々奈に飛びかかる! ああいう輩から彼女である由梨を守りたいのはわかるけど――うおお、地面からズドーンと天に向かって打ちあがる花火のように両手に赤いボクシンググローブを装着した骸骨が勢いよく湧き出し、坂口の顎目がけて右拳を突きあげる……ク、クリーンヒット! 坂口はグルンと弧を描きながら吹っ飛ぶ!
「一応、紹介しておきます。彼は骸骨戦士の山田です。見ての通り、元ボクサーです」
「あ、どうもどうも~☆ 山田です。こんな肉のないスカスカの身体ですけど、昔はボクサーをやっていました!」
「うおおお、骸骨が喋ったァァ~~!」
両手に赤いボクシンググリーブを装着した骸骨は山田と名乗る。その不気味な姿とは裏腹に明るい性格のようだ――って、おいおい! 骸骨が喋ったぞ!
「アンタは死霊使いなワケ?」
「ビンゴ! 瑠々奈は死霊使いだ! なにせ、彼女は死んでしまい亡霊として彷徨い歩いていた俺にスッカスカの骸骨の身体を与えてくれたワケだしな!」
「ちょ、山田! ワタクシを差し置いて、ベラベラ喋らないでくださいよ! まあ、死霊使いであることには間違いないんですけどね」
北条瑠々奈は死霊使いなのか!? 動き回る山田という元ボクサーを自称する骸骨を従えているあたりから、なんとなく予想はできたけど、まさかビンゴだったとは――。
「さて、大人しく、プルトンキューブを渡してもらえません? 私はさっきのコと違って逃げたりなんかしませんよ? 出ていらっしゃい、我が使い魔たち!」
「ふうー、やっと出られたでござる」
「地面の隠れるということは、意外とキツいことであります」
「お、アイツらですか? ボコボコにしちゃってもいいんですよね?」
「ほ、ほんげー! 骸骨がたくさん出てきた!」
ムムム、北条瑠々奈がパチンと指を鳴らすと同時に、バゴン、ガゴンと花畑から山田と同じ骸骨兵士が四体、飛び出してくる!
「拙者の名は木村権兵衛! 今から数百年の昔、関ヶ原の合戦で戦死した武士でござる!」
「北条少佐殿の召集に応え馳せ参じた骸骨兵士の玉沢一等兵であります!」
「私はお甲、こう見えても紅一点なんですよ! あ、生きていた頃は吉原の遊女でした、ウフ~♪」
「ぼ、僕は松本っす! 受験に失敗して自殺したけど、こうして骸骨兵士として蘇らせてもらった浪人生です!」
むぅ、ご本人たちはカッコイイポーズなんだと思っているようだけど、絶対そうは思えないヘンテコリンなポーズを決める四体の骸骨兵士たち……なんだか緊張感のない連中だな。本当に死者なのかって思いたくなるぜ。
「俺たちのことは白骨戦隊ボーンファイブって呼んでくれ!」
「む、お前らは某特撮ヒーローかよ!」
「うん、丁度、五体いるしね……って、緊張感のない奴らだな」
「なによ、コイツら……イラッ!」
うーむ、コイツらを見ていたら確かにイライラするかもしれないなぁ――っと、サマエルが問答無用とばかりに、骸骨兵士の一体に必殺の大蛇拳を叩き込む!
「おおお、お前、いきなりブン殴るとは卑怯でござる!」
「そうだ、そうだ、卑怯でありま……ぐえー!」
いきなりブン殴られた――と、大蛇拳を食らってバラバラになった骸骨兵士の一体がサマエルに対し、抗議を……むぅ、その刹那、もう一体がカシャーンとサマエルの鋭い回し蹴りを食らってバラバラになる。
「木村、玉沢、なにをやっているんです! 情けない声を張りあげていないで、あのコたちに立ち向かってください!」
「まったく情けない奴らだ!」
「むぅ、骨々な身体は一度バラバラになると面倒でござる! 組み立てるまでが特に……って、情けないとか云々、言う前に拙者の身体を元に戻してほしいでござる!」
「そうであります! 山田殿、私の身体も元に! しかし、私は死んでて良かなぁと常々、思い始めたであります。こんな全身がバラバラの状態で生きていられるモノはいないでありますからなぁ。不死者って最高であります!」
「ね、ねえ、そんなことより、みんな……合体しない?」
「あ、あれですか、お甲さん? 上手くいくかなぁ……」
「合体か……よし、やるぞ、お前ら!」
流石は不死者ってところだ。サマエルの攻撃を受け、骨々な身体がバラバラになったとはいえ、再起不能にはならず――ん、合体!? バアアアッと元ボクサーを自称する山田という骸骨兵士を筆頭とした五体の骸骨兵士たちの骨々な身体が光り出す……な、なにが起きるんだ!?




