第五話 俺、邪神と遭遇しました。その13
光桜学園の高等部に在籍する生徒の一部――主に生徒会に所属する生徒数人が相次いで精神の重篤な障害を負って退学しているって聞く。
あのニャルラトホテプや生徒会長の蔵内が、なんだかんだと一枚絡んでいるんだろうなぁ――と、俺は予想する。喋る馬こと元人間を自称するロードシャドウに行方を訊かれた山内貴志も、そのうちのひとりなのかもしれない。
「なにが起きたのかは知らないけど、彼はこの学校を退学してしまったのか……」
喋る馬こと元人間を自称するロードシャドウは、残念そうにブルルと嘶きをする。
「なあ、その山内ってヤツとの関係は?」
「ん、相棒ですよ、彼と一緒にS県内で行われた馬術大会へ何度か出場したことか……」
「そういえば、山内は騎手になるのが夢だったな」
「知っているよ。私は元人間であると同時に、元競走馬だ。彼と一緒にいると競走馬時代を思い出してね。楽しい気分になったもんさ」
ロードシャドウは元競走馬のようだ。後日、聞いた話によると、四十戦三十七敗とイイ成績を残せないまま引退し、馬主と学園長が知り合いというワケで、そのコネから学園長に買い取られるかたちで光桜学園にやって来たようだ。馬術部で飼われる乗馬用の馬としての余生をすごすために――と、そんな折りに出会ったのが山内貴志ってワケだ。
「元競走馬か! 俺は競馬が大好きだぜ! 秋のG1が楽しみだぁ~☆」
「ハハハ、私はG1に出られるような優秀な馬ではありませんが、重賞への出場は競走馬時代の憧れでしたね」
「ん、それはともかく、アンタが山内を去年の県大会で優勝へと導いた馬なんだよな?
「ですねぇ~☆ 競走馬としてはパッとしませんでしたが、馬術に県大会では好成績を修めました!」
とまあ、競走馬時代はイマイチな成績しか残せなかったロードシャドウは、相棒の山内と共に出場したS市内で行われた馬術の県大会で好成績を修めたことが唯一無二の自慢のようだ。
「ふう、彼の身になにが起きたのか……」
「そいつは俺も知りたいところだ。生徒会長に立候補して間もなくだからなぁ。突然、退学し、精神病院に入院したのは……」
山内が何故、退学し、精神病院へ入院するハメになったのかが気になるところだ。例えば、精神が壊れてしまうような〝見てはいけない〟トンでもないモノを目撃してしまったんだろうか!?
「恐らく人間に化けた化け物がいるんだと思う。山内をそれを見てしまい精神を……」
「おいおい、そりゃお約束の展開だろう、ミケ?」
「ところでアンタたち。あのニャルラトホテプが妙なことを言っていたことを思い出さない?」
「え、なんだっけ?」
「ご主人様、あの財団N絡みのバケモノ――人造獣人が仕置きの対象である蔵内に与えたって言ってたじゃないっすか!」
「お、おお、財団Nに属す〝別の個体〟から預かったっていう人造獣人を蔵内に渡したんだっけ?」
むぅ、そういえば、あの財団Nにもニャルラトホテプの化身がいるっぽいんだったな。まったく、あの邪神に化身は、あっちこっちにいそうだなぁ――と、それはさておき、ロードシャドウの相棒である山内が突然、光桜学園を退学し、おまけに現在、S市内某所にある精神病院に入院中という背景には、俺たちが遭遇したニャルラトホテプ、そして財団Nに属す別個体のニャルラトホテプが間接的に関わっているのは確かだろう。
「はわわわ、人造獣人とはナニかは知りませんが聞くだけで鳥肌が立ちますね」
「人造獣人ねぇ、屍食鬼とか深きものみたいなモノかしら?」
「ん、なんだ、そりゃ? 蛇人間のお仲間みたいな奴らでいいのか?」
「蛇人間? ああ、クトゥルフ眷属邪神群って呼ばれているモノたちの一種ね。そうよ、屍食鬼や深きものはクトゥルフ眷属邪神群の一種で、私はミカエルズソサエティに属している頃、何度も戦ったことがあるわ」
「へ、へえぇ、そうなんだ」
「とにかく、クトゥルフ眷属邪神群って連中の姿を見た場合、一般人は精神が破壊されてしまいほどの精神ダメージを受けるわ」
「う、うむ、それはわかるぞ。初めて見た時はショックがでかかったしな……」
しかし、今考えると俺の精神ってすっげぇ丈夫なんだぁと本気で思うぜ。あのクトゥルフ眷属邪神群と呼ばれる異形のモノの一種と何度か遭遇したり、邪神のニャルラトホテプにも遭遇したワケだし――。
「魔法少女になると精神力も強化されるんじゃないかって俺は思う」
「おお、それは同意できるぜ!」
「うーん、強ち間違っちゃいないとは思うけどね……ん、誰か来たわよ」
魔法少女になると同時に精神力も強化される? と、それはともかく、馬術部の部室兼馬小屋に誰かやって来たようだ。穏行術で姿を消しておくか――。




