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第五話 俺、邪神と遭遇しました。その9

「な、なあ、こうなってしまったのは、なんというか……」



「予想外だった? でも、不思議と罪悪感が湧いてこないわ。何故かしらね?」



「ちょ、どういうことだよ! 幼馴染とはいえ、お前は――」



「フフフフ、由梨さんの方が裏の顔の表面化が強いようね。素晴らしいわ!」



「く、やっぱり、お前の仕業だったのか!」



「お前の仕業? フフフフ、私はアンタたちの内なる思いを表面化させる手伝いをしただけさ。つーか、恩人って言ってほしいところかな? それに忘れた――なんて言わせないよ。優等生だけど目立たない日陰の人間である君たちが、全生徒の頂点に立つ存在である生徒会長と副会長になれたのも私のおかげってことをね。おまけに蔵内クン、君の言うことに忠実に従うモノ共を得た背景を思い出したたまえ」



「そ、それに関しては超感謝しているよ、黒木! し、しかし、君は何者なんだ?」



「それに関してはノーコメントだよ。私はね、タダ純粋に喜んでほしいだけさ。君たちのようなこの私を必要とする人間たちをね~☆」



(ん、モメているようでモメていない……実に奇妙な会話だな)



 と、サマエルを追いかけるかたちで図書室の外へと飛び出した俺は、今いる旧校舎の玄関のところで話し合っている三人組の姿を目撃する。やれやれ、沙希の他にも授業をサボって旧校舎へやって来た生徒がいるとはねぇ――てか、モメてないか、アイツら? いや、違うような感じも……。



「なんだか面白そうね。盗み聞きしちゃおうかしら~☆」



「サマエル、まだ旧校舎にいたのかよ!」



「うん、沙希を見失っちゃってね――っと、なんだか気になる会話が始まったわよ」



「うーむ……」



「てか、あの三人組の顔に見覚えがあると思わない?」



「え、どういうこと……う、アイツらは!?」



 盗み聞きするっていうのは、なんていうか悪趣味だなぁ――と、思ってやめようと思ったんだが、例のモメてる三人組の中のふたりの顔に見覚えがあったりするわけだ。



「蔵内翔真と黒木夜子だ!」



「みるく、お前までついて来たのかよ! ま、まあ、確かに蔵内翔真と黒木夜子だ。んで、もうひとりは坂口の彼女か?」



 むぅ、まさか、こんなかたちで仕置きの対象――蔵内翔真、そして謎の女こと黒木夜子を見かけることになるとは!



「そういえば、坂口に見られたかも!」



「え、えええーっ! それはちょっと困るなぁ。一応、坂口君は彼氏だし、なんとか誤魔化せるといいんだけどなぁ~☆」



「ゆ、由梨! 開き直りが早いぞ! うーん、誤魔化せりゃいいんだが……」



「それには及ばないよ。すでに坂口という人間は――」



「お、おい、黒木、嫌な想像させんなよ!」



「そ、そうよ! 嫌な想像させないでよ!」



 嫌な想像っていうのは、大体、察しがつく――と、すでにそんな嫌な想像が現実のモノになってしまったいることをコイツらは当然、知らないワケだ。


「ま、バレても謝ればいいよ。きっと、彼なら笑って許してくれるはずよ。智弘君ってさ、そこらへんが鈍ちんだし~☆」



「うーん、そうだといいんだが……」



(…………)


 そうか? 絶対に笑って済ませてくれるワケがない。気楽で安易な考えだな、由梨ってコの物言いは――つーか、坂口がついて来なくてホントによかったと思えるよ。彼女の本性を見たら絶対、絶望するなぁ、こりゃ……。



「さてと、そろそろ新校舎に戻ろう。長くここに留まっていたらマズいしな」



「うん、まだ授業中だったりするしね。あ、黒木さんはどうするの?」



「私はもうしばらく、ここにいるよ。ここに留まる事情が色々とあってね」



「ふーん、そうなんだ。んじゃ、私たちは戻るわね」



 蔵内、そして由梨は駆け足で旧校舎の玄関から立ち去る。そういや、コイツらは授業をサボるかたちで旧校舎へやって来ていたんだったな――と、それはともかく、ひとり旧校舎の玄関に残った謎の女こと黒木が、ここに留まる理由とは一体!?



「タダの力なき人間であるあのふたりは立ち去った。さあ、姿を消す術を解きたまえ」



「「「――っ!!」」」



 ちょ、バレてるっぽい!? 黒木って女は、やはりタダモノじゃないようだ!



「む、むぅ、仕方がないわね。インビジブルアーツを解除するわよ、アンタたち!」



「お、おう!」



「し、仕方がないなぁ……」



「フフフ、それでいい。それでいいのだ、子猫ちゃんたち」



「こ、子猫!? うお、クレオパトラみたいな衣装に変化した!」



 むぅ、謎の女――黒木の衣装が、瞬く間に白ブレザーと赤いチェックのスカートという光桜学園指定の学生服が、瞬く間にクレオパトラなど古代エジプトの女王を連想させる優雅で気品に満ちた古風の衣装に変化する……な、なんだ、コイツは!?



「これが私の正装だ。暗黒のファラオとかつて呼ばれていた頃のね……おっと、コイツを忘れるところだった」」



 あ、暗黒のファラオと呼ばれていた!? それはともかく、ギャキィと黒木の目許に赤縁の眼鏡が出現する。お、お気に入りの眼鏡にようだなぁ……。



「暗黒のファラオ!? ア、アンタ……まさか!」



「おやおや、そこの金髪碧眼のコは、私の正体に勘付いたようだねぇ。ま、諸事情があって女性の姿をしてはいるが、私は暗黒のファラオ――這い寄る混沌ニャルラトホテプと呼ばれるモノの化身である。あ、これは私の名刺だ。良かったら受け取ってくれたまえ」



「お、おう……つ、つーか、お前は何者なんだ!」



「ん、君たちが邪神と分類(カテゴライズ)するモノだよ。あ、でも、私的には中立なんだけどなぁ」



 黒木――いや、暗黒のファラオ、そして這い寄る混沌ニャルラトホテプと名乗るモノは、自分は邪神に分類されるモノだって即答すると、ジャキーンと豊満な胸の谷間から名刺を三枚取り出し、それを俺たちにニタニタ笑いながら手渡す……って、おいおい! なんの因果がすっげぇ面倒くさい輩と俺たちは遭遇してしまったんじゃないのか!?

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