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第五話 俺、邪神と遭遇しました。その5

 ○○県S市にある開校から数えて今年で百年を数える名門校として知られる一方、数年前に起きた凄惨な殺人事件の舞台としても有名な中高一貫校こと光桜学園の現学園長と、その父親である理事長は、親子そろって新し物好きという困った人物のようだ。



 築二十五年ほどしか経っていないまだまだ十分すぎるほど使える校舎があるというのに、新たに新校舎をつくってしまったワケだし――。



 あ、そうそう、学園長と理事長親子は古いモノが大嫌いである。新校舎を建てる際、汚くて古臭いって理由から、光桜学園の敷地内に鎮座していた祠を壊してしまったとか――ちょ、罰当たりだな、おい!



「む、話しかけてきたのは、アレだ!」



 シャッとみるくが身につけている黒い宝石のついた首飾(ネックレス)りから使い魔の黒豹こと使い魔のテュポンが飛び出し、今いる倉庫であると同時に粗大ゴミ置き場のような場所でもある三年B組の教室内に無造作に置いてある〝ナニ〟かに飛びかかる。



「ん、鏡? ずいぶんと年季が入った鏡だなぁ」



模造品(レプリカ)だとは思うけど、コイツは銅鏡って呼ばれる古代の鏡だぜ」



「コ、コラ、君たち! 私をどうする気なんだァァ~~!」



「うお、銅鏡が喋った!」



 ん、テュポンがなにかをくわえている――銅鏡だ。ずいぶんと年季の入ったモノだな……え、喋った!? テュポンが口にくわえている銅鏡が今、喋ったぞ! まさか、さっきの声の主ってコイツ?



「テュポン、とりあえず、そいつを離してやってくれ」



「OK、離すとするか――」



「あうう、まったく、神であるわしを口にくわえるとか罰当たりな奴め。まあいい、ガラクタの中から引っ張り出してくれたし、今回だけは許そう」



「え、鏡さんは神様なの?」



「俺は付喪神かと思ったぜ」



「ムムム、とにかく、わしは分霊ではあるが正真正銘の神だぞ、君たち!」



「ん、鏡が空中に―――うお、蛾みたいな羽が生えた小人に変身したぞ!」



 テュポンの口から離れた意思を持ち喋る銅鏡は、フワリフワリと空中に舞いあがる――と、同時にポン! という軽い爆発音とともに、頭に櫛状の触覚が生えた蛾のような地味な色をした一対の羽が背中に見受けられる十二単という平安時代の貴族の女性の連想させる優雅な格好をした手の平サイズの少女の姿に変身する。蛾の妖精さんって感じだな。



「わしの名前じゃサワメだ。元光桜学園の守護神といったところだろうか――」



 フッと前髪をかきあげながら、蛾の妖精さんはサワメと名乗る――ん、元光桜学園の守護神を自称しているけど、もしかして!?



「鏡さん……いえ、サワメさん。アナタは学園長と理事長親子が新校舎建設の際に破壊してしまったという祠に祀られていた神かしら?」



「ムムム、俺が訊こうと思ったのに……」



「大当たりよ。わしは、あの馬鹿親子のせいで悠久の年月を鎮座していた祠を破壊され、おまけに他のガラクタと一緒に、ここに放置されていた哀れな神様ってところだろうか?」



 むぅ、サマエルに先に言われてしまったけど、訊こうと思っていたことがビンゴだったとは!



「そっかぁ、じゃあ、知ってるかもしれないな、ミケ?」



「え、なにを?」



「おいおい、件の宝の在り処だよ! つーか、サワメさん、件の宝――黒魔術殺人事件という殺人事件が光桜学園で起きたことを当然、知っているだろう? その主犯格が隠したっていう人知を超えた禁断の叡智を得られるっつうモノが、どこにあるのか知っているよな?」



「そんなモノはない」



「「「え、えええ~っ!」」」



 ちょ、即答かよ! なんだかんだと、デマ――確証がないのに広まった都市伝説や学校の怪談のような話だったのか!? 件のお宝の話は……。



「あの事件は神であるわしでさえおぞましい事件だと思ったよ。それに、まさかあの娘が……おっと、それはさておき、件の人知を超えた禁断の叡智を得られるなんてお宝の元ネタは、この部屋に無造作に置いてある使えそうで使えない楽器などいずれ廃棄される予定でありながら、長年、放置されている古くなったモノだろう」



「ほ~ら、あたしが発見した根拠が的中っすね!」



「うーん、こうも簡単の件のお宝のまつわる謎が解けてしまうなんて……つまらないわ!」



「アハハハ、つまらないというか、なんというか……萎えた」



 サマエルは口を尖らせながら、つまらないって言う――というか、俺的に萎えた。こうもあっさり謎が解けてしまったしね。



「そういえば、件のお宝を守る悪魔がいるって話もあったな」



「ああ、あの話は嘘ではない。この旧校舎には悪魔かは知らんが名状しがたきナニかが蠢いていることは確かかなぁ? 神あるわしが言うんだ、間違いない!」



「うへぇ、なにが〝いる〟のかよ、ここには!?」



 件のお宝は存在しない――が、その一方で、俺たちが今いる旧校舎内にはナニかがいるようだ。名状しがたきナニかが……。

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