第五話 俺、邪神と遭遇しました。その4
登場人物紹介
・サマエル――外国からやって来た魔法少女。得意技は大蛇に変身すること。
まったく、無計画に探したところで、件のお宝が見つかるワケがないんだ。当然、無駄に時間だけが過ぎ去っていくばかりである。
「ここは旧校舎ってわりにはきれいな建物ね」
「まあ、旧校舎っつって築二十五年ほどだしな」
「築二十五年? ふーん、ウワサには聞いてたけど学園長と理事長親子は本当に新し物好きのようね。ここはまだまだ十分すぎるほどに使えるレベルの建物だというのに新校舎を建ててしまうなんてもったいないにもほどがあるわ!」
「ああ、それは同意できるねぇ」
「さてと、今の時間は私たち以外、誰もいないようだから、件のお宝を探すついでに変身勝負をしない?」
「へ、変身勝負だぁ!?」
もったいない――と、光桜学園の旧校舎の有様を嘆く一方でサマエルは、今の時間帯、俺たち以外に誰もいないことをいいことに変身勝負とやらを挑んでくる。
「変身か、上手くなれるかはパッとしないけど、コイツを使えば一応……」
「ああ、ヘルメスからもらったコレを使えば変身できたな!」
「ん、それって骨? なるほど、媒介変身できるのね、アンタたち――んじゃ、私から変身するわよ!」
「わ、わお、大蛇に変身した!?」
何度か試してみたけど、ヘルメスからもらった骨があれば俺は変身できる! え、どんな動物の骨かって、それはだな――おわああ、サマエルが先行するかたちで真っ白な鎌首をもたげた大蛇に変身する! その大きさは雄に三メートル! 人間の子供なら丸飲みできるレベルだァァ~~!
「フフ~ン、私の変身を見てどう思う?」
「す、すごく、大きな蛇だ! そ、それに比べて俺とみるくは……」
「う、うむ、ヘルメスからもらった骨はウサギとイタチの骨だからなぁ。捕食される側って感じだぜ、ヒィィィッ!」
何度か人間から別の生き物に変身する――という体験をしたことはあるんだが、そんな変身の媒介となる〝骨〟を用意したヘルメスに対し、文句を言いたいぜ! もう少しマシなモノを用意してくれよってな! ちなみに、みるくが黒いウサギ、俺は白いイタチの姿に変身する。
「あら、可愛らしい姿じゃん~☆」
「ま、まあ、そうだろうなぁ……」
「ああ、大蛇に比べればな!」
「それって皮肉? あ、そうそう、この姿になるとさぁ、何故かアンタたちのような小動物を見かける無性に食べたくなるのよねぇ、シャアアアッ!」
「「わ、わああああーっ!」」
おいおい、冗談で言っているんだよな? むぅ、とにかく、真っ白な大蛇に変身したサマエルは長い舌をチラチラとチラつかせながら、明らかに捕食の対象である動物のウサギとイタチに変身した俺とみるくを威嚇する。
「冗談よ、食べるワケないじゃん♪」
「「…………」」
ホントか、ホントかよ、おい! ならいいんだが、蛇ににらまれた蛙状態の俺とみるくは金縛りに近い状態で喋ることすらできなくなってしまう。蛇の眼には視線を合わせたモノの身体を弛緩させる魔力が宿っていそうだ。でかいとさらに――。
「まったく、弱虫ねぇ……よっと!」
よ、弱虫っていうか、あんの巨大な蛇ににらまれたら誰だって俺やみるくみたいに――と、サマエルは元の金髪碧眼の白人少女の姿に戻る。
「ご主人様、ここになにかしらのお宝が眠っているって言われる根拠がわかったっす!」
「お、おう、ご苦労だったな、アリス!」
「ムムム、すでに使い魔を使って件のお宝を探らせていたワケ! 抜け目ないわね!」
「まあね。あの話を聞いて即、行動させたってワケだ」
サマエルと変身勝負と並行するかたちで、俺は使い魔のアリスを使って件のお宝を――黒魔術殺人事件の主犯格が、今いる旧校舎のどこかに隠したという手に入れたモノは、人知を超えた禁断の叡智を得られるというナニかを探らせていたってワケだ。
「その根拠ってなによ?」
「あ、こっちっす!」
「ん、三年B組の教室?」
「まあ、とにかく行ってみようぜ」
ん、アリスが俺たちを図書室のすぐ近くにある教室――三年B組の教室へと案内する。そこに件のお宝にまつわる根拠があるようだ。
「ここは古くなった楽器なんかを保管してある倉庫? でも、使えるのか微妙なモノばっかりだな」
「うん、みんな廃棄される予定のガラクタっすよ。あのコントラバスなんて弦がない上、ネックが折れちゃってるっす」
「ん~ガラクタか、これ? 手入れすれば、まだ使えるぞ? 金管楽器のトランペットとかクラリネットなんて、まだ使えるレベルじゃん」
「ま、そんなこんなで人によっては〝お宝〟っすよ。こんなモノでも――と、これがあたしが見つけた件のお宝にまつわる学校怪談が出回った根拠だと思うっす!」
三年B組の教室は廃棄予定の古くなった楽器などが無造作に置いてある倉庫ってところだな――うーん、確かに手入れすれば、まだ使えるレベルの楽器なんかがけっこうあるな。捨てるのはもったいないレベルかもしれない。人によってはお宝に十分、お宝として認識できるモノだ。
「ねえ、君たち……」
「うお、声! 誰かいる!」
「でも、姿が見えないぞ!」
わああ、誰かいる!? でも、三年B組の教室内には、俺たち以外、姿も見えない……ん、不可視の何者かがいるのか? まさか幽霊の類?




