第一話 俺、魔法少女になります。その4
「信じられないとは思うけど、ここにいる猫ちゃんたちは、元は人間よ」
「そ、そうなのか……」
「あんまり驚かないわね」
「そりゃ、もう慣れたよ。俺の身体が性転換し、若返ったし、おまけに喋る犬猫はいるし……」
「おい、私は犬じゃないぞ、狼だ! また齧るぞ!」
「うわあああ、やめろー!」
信じられないっつーか、俺としては、もう慣れたよ。しかし、俺の周りにいる猫たちが、元は人間だったとはねぇ。
「さて、お次は使い魔かしら?」
「沙希、コイツの相棒も決めてやれよ」
「うん、そうね。でも、誰がいいかしら?」
「そういえば、打ってつけの奴がいなかったか?」
「あ、ああ、彼女ね!」
「おいィィ! 使い魔だと相棒だの勝手に話を進めんなァァ~~! その前に、男でおまけに二十九歳の三十路直前のオッサン街道まっしぐらな俺を魔法少女としてスカウトした矛盾点を説明しろよな!」
おいおい、話を勝手に進めんな! その前に語ることがあるだろう? 肝心要の物事――男の俺を、そして二十九歳という三十路間近の俺を魔法少女にスカウトした矛盾だらけの理由がァァ~~!
「それもそうね。んじゃ、ありていに説明するわよ。〝コイツ〟の姿を見ることができたからよ」
「コイツって狼姫ってワンコのこと? え、どういうこと?」
「おい、わらわはワンコではないぞ! フン、まあ、とどのつまり、普通の人間にゃ姿が絶対に見えないわらわの姿を〝見る〟ことができたからだ」
「な、なにィィ!? てか、ワケがわからんぞ!」
うーむ、沙希と狼姫が言っていることは理解不能だ。ま、とりあえず、狼姫の姿は普通の人間には見えないってことだけはわかった――ん、てこたぁ、俺は特別な存在だったのかも!?
「わらわは穏行の術を行使し、姿を見えなくしている。お前は、それを見破る眼力を持っているわけだ」
「穏行の術っていうのは、行使したモノの姿を一定時間、消す魔術よ。これでわかったでしょう? アンタをスカウトした理由が――」
「む、むぅ……」
「ああ、性転換、そして若返らせたのは、おまけってヤツね。つーか、男のままじゃ力を100%発揮することができないしね」
ううう、性転換と若返りは、おまけだったのかよ! ま、まあ、男のままじゃダメだよな。それに少女って年齢じゃねぇし……。
「ああ、その指輪を身に着けているかぎり、十八歳の少女の姿に固定されるわ」
「そ、そうなのか!」
「ええ、それが永遠十八歳の魔力でもある」
す、すげぇ……こ、これが魔法少女の力なのか!? ――って、納得するんじゃない、俺! ふう、この先、俺はどうなってしまうんだろうなぁ。