第四話 俺、人造神とやらを手に入れました。その7
財団Nって連中は人造獣人と呼ばれるモノを製造しているようだ。んで、そんな人造獣人を製造するために素材というのが、俺たち人間、そして犬猫等の獣である。まあ、獣人というのは人間と獣の混合生物だし、ある意味で妥当な素材だろう。
「むぅ、人狼に変身できたのか……面白い!
「うお、狼姫も巨大化した! 巨大ワンコだ!」
「だ~か~ら~! わらわは犬ではないと何度言えば! ったく、その話は後回しだ。今はあの狼女を叩き潰す!」
グルオオオーッ! と、裂帛した咆哮を張りあげる狼姫の身体が、次の瞬間、ズモモモと三倍ほど巨大化する。それと同時に狼姫は、人狼――要するに狼の獣人と化した草野という女に対し、飛びかかる。
「こ、このワン公! おらああああっ!」
「ギャインッ! コ、コイツ!」
突撃してくる人狼こと草野と飛びかかる狼姫が、真正面から激突し、ズドンという破裂音とともに両者ともに無駄に広いリビングの床をバウンドしながら吹っ飛ぶ! が、草野の方が素早く体勢を立て直し、ダッと再び猛然とした脚力を活かし、瞬く間に狼姫に対し、獣人化したことにより凶刃と化した右手の五指を横薙ぎに振りまわす!
「当たるものかっ……が、がああっ! 貴様ーっ!」
狼姫は後退し、回避するが――ザンッ! と、胴体に五つに放射線状の傷が! 真空波が発生し、攻撃を躱したつもりの狼姫の身体を引き裂いたのか!?
「狼姫、大丈夫?」
「ふん、この程度、すぐに治る傷だ!」
すぐに治る――むぅ、確かに、その通りの展開だな。狼姫の胴体を蝕む五つの放射線状の傷が、あっと言う間に消えてしまう。す、すごい再生能力だ!
「仕方ない。コイツを叩きのめしてから脱出するわよ! 白熊烈拳!」
今度は沙希が草野に対し、鉄拳を――ホッキョクグマの剛腕から繰り出されるタダの人間なら即死レベルの凶拳を叩き込む!
「が、があああっ! このォォ~~!」
「あらら、頑丈ね。流石は獣人ってところかしら?」
「おい、どうでもいいけど逃げた方がいい! そいつは硬すぎる!」
「ハハハハ、内藤さんはすっげぇ改造を私の身体に施してくれたもんだ! 感謝しなきゃねェェ~~! 次はお前だぁ!」
「え、俺? うわ、ちょ、おまっ!」
ヒュー、流石は獣人かもしれない。ホッキョクグマに変身している沙希が打ち放った即死レベルの凶拳を受けても大したダメージを受けていないし――って、おい、俺が次のターゲットかよ! 沙希や狼姫を無視するかたちで俺を狙ってくる! ぐうう、ギランと輝く草野の獲物を狙う狼の凶眼が俺を射抜き金縛り状態となってしまう……う、動けん!
「ご主人様、逃げるっすよ!」
「逃げるだぁ? あの狼野郎をぶちのめそうぜ!」
「ぶちのめすっつったって……が、があああっ!」
アリスは逃げようって言う。その一方でアーロンは戦おうって言う。うーん、どっちの意見を採用するか――と、迷ってしまったせいかはともかく、動けないんだ! と、その刹那、草野が俺に向かって突撃してくる! そして強烈な体当たりを……あ、あれ、ひょっとして俺はベランダの外まで吹っ飛んだ!? わぎゃー!
「ああ、ミケちゃんがベランダの外まで吹っ飛んだわ!」
「く、気絶しちゃってたら空を飛べないじゃない! 助けるわよ、愛梨!」
正解です。俺は草野の体当たりを食らった時点で意識が失ってしまったわけだ。とまあ、そんな俺を救うべくアフロディーテと合体した愛梨が――アイロディーテが3502号室のベランダから飛び降りるのだった。
「沙希、早く早く!」
「ふむ、3502号室内にいるのは、私と狼姫だけのようね」
「ああ、皆、飛行の術を使えるし、脱出成功ってところだな」
「んじゃ、私たちも脱出するわよ!」
「おう!」
沙希と狼姫以外は3502号室のベランダから飛び降り、脱出に成功する。しかし、人間の姿をしているゴルゴン三姉妹はともかく、アライグマのヘパイストス、それにメーディアのペットの熊ことクマゴロウなど3502号室に囚われていた獣たちが空を飛んでいる姿は、実に滑稽で奇妙だ。
「貴様ら、逃がさん!」
「あの狼女が追いかけて来たぞ!」
「あの女が飛行の術を使えないことを祈りたいわね!」
沙希と狼姫もベランダから飛び降りる――と、同時に草野もベランダから飛び降りる!
「沙希、ビンゴだ! あの狼女は飛行の術を使えないようだ!」
案の定、草野は飛行の術を使えないようだ。その場合、当然……。
「ぐ、ぐぎゃああああっ! あたしは空を飛べんのだァァ~~! ぐううう、覚えていろよ、クマ公を筆頭としたクソ共ォォ~~!」
「あちゃ~……すごい勢いで落下しちゃったね」
「ああ、空を飛べなきゃタダの狼ってところだからな」
ドギューン! と、そんな捨て台詞を吐きながら、草野は勢いよく落下していく。さてと、俺たちは空を飛ぶことができるけど、その一方で狼女の草野は空を飛ぶことができない――うっわぁ、地上三十五階建ての超高層マンションことアトランティスの最上階から地上に転落したら、いくら堅牢な肉体を持つ人造獣人の草野であっても……おえ、どういう結果になるか、そのことを想像したら寒気が走ったぜ。




