第四話 俺、人造神とやらを手に入れました。その4
「うわあああっ! 商品が……商品が……だ、誰の仕業だ! 誰のォォ~~! ん、このニオイは!?」
と、大声を張りあげた直後、SMの女王様のようなセクシーな格好をした背の高い女は、ヒクヒクと鼻をひくつかせている。穏行の術で姿を消している俺たちを〝鼻〟で追跡しているのか!?
「上手く姿を消していても体臭は消せなきゃ意味がねぇんだよ、オラアァァァ!」
(えええ、俺って汗臭かったりする!?)
ちょ、まさか体臭でバレた!? と、その刹那、SMの女王様のような格好をした背の高い女は、どこに隠し持っていたのかは、あえて触れないでおくけど、ビシャッと皮の鞭を振りまわす――あ、危ねぇ! 紙一重のところで、女が振り回す鞭が直撃するところだった!
「が、がふっ……」
(ああ、沙希先輩の仲間の猫ちゃんに、あの女が振りまわす鞭が……わあ、穏行の術が解けた!?)
く、俺はなんとか躱すことができたけど、沙希の仲間の猫の一匹に鞭が直撃する――むぅ、穏行の術が解けてしまう! ああ、そんな猫が捕まってしまった!
「クククク、この街にいる住んでいる獣は抜け目がないねぇ。まさか姿を消す術を使うとは……」
「ひ、ひぃぃ!」
「ほう、喋れるんだ! すっげぇな、おい! あたしが住んでいたB市にはいなかったぞ、喋る猫なんざぁ……ぐぎゃん!」
「御託はいいわ。そのコは大事な仲間だから離してもらおうかしら!」
「むぅ、最初からブン殴っておきゃよかったのに……」
沙希が穏行の術を解除し、SMの女王様のような格好をした背の高い顔面目がけて猛然とした勢いで鉄拳を叩き込む。まったく、最初からブン殴っておきゃよかったのに――あ、沙希は未だにホッキョクグマの姿のままである。そんな沙希にブン殴られたSMの女王様のような格好をした背の高い女は……あ、気絶しただけだな。タフだなぁ、コイツ!
「この女、普通じゃないぞ、沙希!」
「ええ、わかっているわ。どうやら身体能力増強化の手術、或いはなにかしらに薬物によって強化された輩ってところね」
「ふむ、魔法少女ではないのに、ホッキョクグマ化した沙希の攻撃を受けて気絶で済んだあたりを考えると納得できるね」
「うえー、邪神人以外にも厄介なのがいたのかよ!」
「ま、とりあえず、鋼鉄の鎖で手足を拘束しておこう。ここには、〝その手〟にモノがたくさんあるよ。つーか、この女は草野麻衣……色々とイジメられたから簀巻きにして拘束してベランダから吊るしてやりたい気分だ!」
「それは後回しでいいわ。今はタツがどこにいるかを聞きたい」
気づけば、ヘパイストスが鋼鉄の鎖をどこからか持ってくる。んで、SMの女王様のような背の高い女こと草野麻衣を、そんな鋼鉄の鎖で簀巻き状態に拘束するのだった。どうでもいいけど、この女に対し、なにかしらの恨みがあるっぽいな。
「タツ? ああ、ペルセポネーのことでしょう? あのコがいる場所に案内するよ」
ダッとヘパイストスが駆け出す。よし、追いかけてみよう。
「う、ううう……」
「む、あの女が気絶から立ち直りつつあるな」
「流石は強化人間ってところね」
「沙希ちゃん、獣人化現象とか起こしそうな雰囲気だね。人狼に変身したりして!」
「ふえ、人狼ってヤツ? 狼姫みたいなモノか?」
「おい、わらわをそんなモノと一種にするな!」
「アハハ、人犬の間違いじゃない、アンタの場合?」
「ぐ、ぐぬぬ、わらは犬ではない! 齧るぞ、ゴルァァ!」
「まあまあ、ここは僕に任せてくれ。丁度、睡眠香も持参していてね……っと、これでよし! だけど、効果が薄いから、すぐに目覚めちゃう可能性が高いかなぁ。精々、五分が限界かな?」
く、頑強なのは厄介だな。沙希の熊パンチを食らって昏倒していた草野が、なんだかんだと意識を取り戻しつつあるワケだ。とまあ、そんな草野をヘルメスが持参した睡眠香とやらを使って眠らせるのだった――え、効果が薄い!? なんだよ、使ってもあまり意味がない代物じゃないか!
「ま、とにかく、あの女は眠っている間にタツを救うわ! 仮に獣人化現象を起こすことができた場合、身体を拘束している鋼鉄の鎖を引き千切ることなんて朝飯前だろうしね」
「うえ、そうなのかよ、狼姫? ついでに茜?」
「おい、なんでわらわに訊くんだ! ま、まあ、わらわの場合は容易なことだけどな!」
「わ、私だって鋼鉄の鎖くらい引き千切れるわ……って、私は獣人じゃないわ!」
「アハハハ……ま、まあ、この部屋から離れよう。タイムリミットは、とりあえず五分なワケだし!」
ヘルメス曰く睡眠香の効果は精々、五分――その間に太田辰巳他、今いるアトランティスの3502号室に囚われている連中を救出しなくちゃいけないな。




