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第三話 俺、ライバル宣言されました。その14

「あ、熊さんがお空を飛んでいる!」



「うーん、見られちゃったか……」



「沙希ちゃん、穏行の術を使うの忘れているよ!」



 おおっと! ホッキョクグマの姿に変身したままの状態で空を飛ぶ沙希の姿を女装少年デュオニュソスが住む超高マンションことアトランティスの二十九階の2901号室の真上の部屋――三十階の3001号室の住人の三歳か四歳くらいの小さな男のコに目撃されてしまう。おいおい、穏行の術を使い忘れたのかよ!



「ボウヤ、私は熊の姿をした天使です。だから、空を飛ぶことができるのよ」



「わー、すごい、すごい!」



「だけどね。このことは誰にも言っちゃいけないよ」



「え、どうして?」



「それは私は天使だからよ。んで、そんなボウヤが、お父さんやお母さんに、私のことを話しちゃうと、すぐに神様に見つかってメチャクチャに怒られちゃうんだ。勝手に天国から出ちゃダメだぞーってね」



「ありゃー、天使さんも大変なんだね!」



「まあ、そういうことだから、絶対に秘密だよ!」



「うん、わかったよ! 熊天使さん!」



「…………」



 おいおい、熊天使なのかよ、お前は! うーむ、純粋な子供の心を弄ぶ嘘にしか聞こえないんですけど! まあ、そんな嘘でも吐かないと3001号室のお子ちゃまが騒いで大変なことになりそうだしね。なにせ、今の沙希は空を飛ぶホッキョクグマなワケだし――。



「おい、さっさと行こうぜ!」



「わかっているわよ。それじゃあね、ボウヤ~☆」



 沙希は3001号室のお子ちゃまに別れを告げると、疾風のような勢いで舞いあがる――あ、あるぇ? そんなホッキョクグマの姿に変身した沙希の背中には翼が見受けられないんだが? て、天使を自称したクセに矛盾しているなぁ。



「うわ、ベランダに妖精さんが!?」



「え、ベランダに妖精さん?」



「うん、鳥籠に閉じ込められた妖精さんがたっくさん!」



「ちょ、どうしよう、あっちゃん!」



 ん、先に柳原のアジトと化している三十五階へと移動した愛梨とアフロディーテのそんな相槌が聞こえる。しかし、ふたりが合体した状態だと、まるで一人漫才をしているかのような会話だ。



「そこは3501号室だね。わあ、ベランダは妖精さんでいっぱいだ……よし、私が助けてあげるとしよう!」



 うお、デュオニュソスが超強靭な指の力だけで三十五階の一室――数多ある鳥籠の中に閉じ込めれている妖精さん(?)が見受けられる3501号室のベランダに這いあがってくる。



「ちょ、助けるだって!? うお、誰か来たぞ!」



 使い魔のアリスのおかげで黒い翼と山羊のような角が生えた悪魔っ娘のような姿になってしまったとはいえ、飛翔能力を得た俺もデュオニュソスに続くかたちで3501号室のベランダに――だけど、その刹那、3501号室に住人と思われる大柄な男が、ヌゥとベランダに姿を現すのだった。



「あの部屋の住人!? ひょっとして柳原譲二?」



「いや、違う。恐らく、あの男の部下ね。それに、あの男はタダの人間のようだわ」



「あ、ああ、邪気を感じないしな」



 大男はタダの人間のようだ。蛇人間等のクトゥルフ眷属邪神群と呼ばれる異形のモノなら、その身体から禍々しい気を――邪気を放っているワケだしね。



「ん、誰かいるのか? は、まさかな……うっせぇぞ、騒ぐんじゃねぇ!」



「むぅ、あの大男、鳥籠の中にいる妖精さんに八つ当たりを始めたぞ! わ、金属バットを振りあげた!」



 流石はセレブ御用達の超高層マンションなだけあるなぁ、アトランティスの3501号室のベランダはは広い。畳八畳か十畳はありそうだ。んで、そんな広いベランダのあっちこっちには鳥籠が数多、見受けられ、その中には手の平サイズの小さなの妖精さんが何体も押し込まれている――う、大男が金属バットを振りあげ、鳥籠の中の妖精さんたちに八つ当たりを始めたぞ!



「おい、河谷! 商品を傷つけるんじゃねぇぞ! 少しでも傷がつくとくそみそに値段が下がるんだ!」



「お、おう、スマン、兄貴!」



 ん、兄貴? 何者の一言が大男の妖精さんたちに対する八つ当たりを制止させる。ん、次の瞬間、大男はガタガタと身を震わせ始める。むぅ、顔色も青白くなっていく――ん、小柄な男がベランダにやって来たけど、まさか、コイツが!?

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