第一話 俺、魔法少女になります。その3
「うわああああっ!」
俺は悲鳴を張りあげながら、ハッと目を覚ます。むぅ、どれくらい気を失っていんだろう? 身体は、もう熱くない……むしろ最高にハイって感じだ!
「約三分ってところかしら?」
「えっ?」
「お兄さん、アンタが意識を失っていた時間よ」
「あ、そういうことね……って、おい! 俺の身体になにをしたんだよ!」
「変身させたのよ。強制的にね」
「お前が気絶していたのは、強制変身に副作用みたいなものだ」
俺が意識を失っていた時間は、約三分かぁ――って、おい! 沙希の奴、俺の身体にナニをしたんだ! 強制的に変身させたって言っていたけど……。
「身長は170㎝くらいだよね? うーん、身長だけは変わりはないわね。ま、女子としてが背が高い方になるとは思うけど」
「はぁ?」
「お前、まだ気づかないのか? 自分の身体の変化に――てか、わらわが人間に変身した時と、そんなに変わらんでかさだな」
「チッ……イライラするわ。でっかい胸を見ると!」
「おいおい、なにを言っているんだ?」
お前たちはナニを言っているんだ? 沙希と狼姫が、またワケのわからんことを言い出す。うう、コイツらと一緒にいると、頭が混乱しそうだぜ!
「これで今の自分の姿を見るといいわ」
「お、手鏡? どれどれ……お、ショートカットの可愛い女のコの姿が映っているな。ん~歳は十七、八歳くらいかな? ヒュー、俺の好みのコだなぁ~☆」
「沙希、コイツ馬鹿だな。まだ気づいていないぞ」
「うん、筋金入りだわ」
「お、おいおい、馬鹿ってなんだよ! 俺はなにに気がついてないんだよ?」
「てか、その鏡に映っているのは誰だ?」
「え、俺だけど……えっ!? ままま、まさか――っ!」
「ふう、やっと気づいたようね。自分の身体に起きた変化に――」
う、嘘だろ!? おおお、俺は――女のコになっちまったようだ! ついでに、年齢が十歳くらい若返ったようだぞ。うへ~マジかよぉぉ!
「信じられなくて困惑する気持ちはわからないでもないわ。でも、これは真実――まぎれもなく本当のことよ」
「む、むうう……でも、なんだろう? 今、俺はすっげぇハッピーな気分なんだ! 最高のハイテンションな気分でもある!」
沙希と狼姫のせいだろうか? いや、そうに違いない! 突然、性転換し、おまけに若返ってしまったことに幸福感、それにハイテンションな気分なのは――。
「あら、それは良かった。さて、そろそろ教えておくわね。元上司と借家の管理人の悪事が何故、公になったかってことを――」
「お、おう! 聞かせてくれ、是非ッ!」
そ、そういえば、あの憎々しいふたりの悪事が、何故、公になったのかってことも気になっていたんだよな。
「みんな出ておいで!」
「み、みんな? わ、わあああ、猫がたっくさん!」
沙希の掛け声とともに、ドッと公衆トイレの周囲に何匹もの野良猫が集まってくる。浪岡自然公園内に住み着いている野良猫だけじゃない。その中には首輪をつけた飼い猫も混じっているぞ。
「さて、このコたちが、例の外道の悪事を公となる情報を警察に流したってわけ」
「沙希ちゃんのお友達? よろしくニャ~♪」
「うわ、猫が喋った!」
「今更、驚くこともないだろう?」
「驚くよ! 俺は夢を見ているんだ!」
「ハハハ、現実だ。よし、噛みついてやる!」
「ぐわ、痛ェェ! うう、やっぱり夢じゃないのかァァ~~!」
猫が喋った! これは夢だ! ――と、思った直後、狼姫がガブリと俺の尻に噛みつく。そして、その痛みがズキーンと全身を駆けめぐる……ハハハ、現実のようだ。しかし、どこで奇妙な横道を進んでしまったんだろうなぁ。