第三話 俺、ライバル宣言されました。その10
「財団Nが関わっているとは厄介ですね」
「お姉さ……いえ、女将! 行方不明になっている妖狐の仲間は、きっと!」
「あっしの親父のタヌゾウも、その財団Nって連中に捕まっているはずでやんす!」
「ま、とにかく、これは連中に捕まってしまっている仲間が誰なのかをまとめたリストだ。それに写真も何枚か撮影してきたよ」
俺たちは一旦、地下旅館の小狐丸に戻る。さて、沙希の相棒のひとりである某緑色の妖精さんを連想させる可愛らしい小妖精のヘルメスは、財団Nに捕まった仲間の名前が記されたリストと写真を数枚、持参する。
「ふむ、今のところ捕まっている仲間は妖狐が数頭……それに妖精たちってところね」
「妖精の類? ヘルメスのような?」
「僕は妖精じゃないよ。ま、近い存在かもしれないけどね」
「ご主人様、あたしも妖精っすよ!」
「む、お前は女性型の夢魔だろ! 悪魔の類じゃないのか?」
「悪魔じゃないっす! 女性型夢魔は夜の妖精っす!」
「ところでミケ、お前は知らんのか? けっこういるんだぜ、妖精は――」
「浪岡自然公園の北区画にある姫神塚古墳のどこかに妖精界につながる次元の門らしいわ。ま、そこから妖精たちがチラホラと現界にやって来るってワケね」
「姫神塚古墳の周辺で見かける幽霊の正体は、恐らくは妖精界からやって来た妖精の類だと思うわ」
「知らなかった。そんなの……」
「み、右に同じく……」
あの心霊スポットとして有名な姫神塚古墳には、そういう秘密があったのか!? 初耳だぜ、コイツァ驚いた!
「さて、クロベエの相棒である太田辰巳を捕らえ拉致した柳原譲二は、好事家な魔術師や財団Nのような連中に捕まえた妖精たちを売りさばくビジネスを始めたらしいわ」
「むぅ、そりゃいかんな! 太田辰巳を助けるついでに妖精たちも救ってやらんと――」
「そうだね、ウワサじゃ買い取った妖精さんを解剖している科学者が財団Nに所属しているらしいね、沙希ちゃん!」
「理科の授業で行う蛙の解剖実験とか、そーゆーレベルのモノじゃない気がするぞ!」
「うん、太田さんってクロベエさんの相棒も下手すりゃ生きたまま解剖実験されちゃうかも!」
「い、生きたまま解剖される!? あああ、寒気が走ったわ!」
うへぇ、生きたまま解剖実験!? そう愛梨が大袈裟なことを言うけど、ありえない話ではないと思う。財団Nのような連中にとって魔法少女は絶好のサンプルだと思うし――。
「そういえば、柳原のアジトもわかったんでしょう、ヘルメス?」
「うん、もちろんさ! この写真に写っているよ」
「どれどれ……ん、随分とでかいマンションだな。三十階は確実にありそうだな」
「あ、ここはアトランティスじゃないかな、愛梨?」
「う、うん、間違いないよ、あっちゃん!」
「ア、アトランティス!?」
「ミケちゃん、なんか別のモノを想像しちゃってないかな? アトランティスっていうのは、ヘルメスさんが持ってきた写真に写っている超高層マンションの名前だよ」
「そ、そうなのか! アハハハ、俺は失われた大陸の方を想像しちまったぜ」
「奇遇だな。俺もだぜ」
アトランティスって聞くと、誰だって想像してしまうもんさ。古代ギリシャの哲学者のプラトンが著書のティマイオス、クリティアスの中に記述しているかつて大西洋に存在したという伝説の失われた大陸のことを――と、愛梨やアフロディーテが言うアトランティスとは、愛梨の自宅の近所にある超高層マンションの名称のようだ。
「ここって家賃がくそみそに高いって有名だよね、沙希ちゃん」
「ついでにガードもすっごく堅いみたいね。ウワサじゃ中に入るためには、何重にも仕掛けられたセキュリティのロックを解除しなきゃいけないらしいわ」
「うーん、それは大袈裟すぎだと思うけどなぁ」
「仕方ないわ。セレブ御用達のマンションだしね。ま、とりあえず、知り合いが住んでいるから中には普通に入らせてもらえるんだけどね」
「な、なにィ! あのマンションに知り合いがいるのかよ! お前も何気にセレブな女のコなのか?」
「ミケ、羨望の眼差しで私を見ているでしょう? 残念ながら、あくまで知り合いが住んでいるだけよ。私の家は、どっちかというと貧乏な方よ。父親の年収が大体、八百万円くらいだしね」
「う、どこが貧乏なんだよ! 俺なんか年収二百万弱だぞ……く、なんか悔しい!」
「ま、とにかく、アトランティスへ出張るわよ。あそこに住んでいる知り合いには話をつけてるあるから――」
ぐぬぬぬ、すっげぇ格差を感じる。ま、まあ、とにかく、沙希の知り合いがいるっぽいのでガードが堅そうなセレブ御用達の超高層マンションことアトランティスの中に容易に入れそうだしね。




