第三話 俺、ライバル宣言されました。その8
○○県S市に住む市民たちの憩いの場である浪岡自然公園は、東西南北、四つの区画に分けられている。流石に人跡未踏の樹海というレベルではないけれど、下手に入り込むと迷子になってしまう恐れがある鬱蒼とした森林地帯である北区画にあるのが、あのストーンサークルがあるS市内に住む動物たちが日々、BF――ビーストファイトを繰り広げる広場である。
とまあ、そんな北区画を除くと、東西、そして南区画は人の出入りが多い場所である。心霊スポットの姫神塚古墳から出土した品々が展示されている博物館兼図書館があったり、少年野球団の浪岡ブレイカーズのホームグラウンドがあったりするしね。ああ、ついでに、南区画にある広場にはタコ焼きの露天商がいつもいるんだよなぁ。
「へえ、少年野球団の試合があるんだ。なるほど、それで人が多いわけだ」
「うん、浪岡ブレイカーズと浪岡バスターズの試合だね。どっちも名門少年野球団だしね」
「浪岡バスターズには名前は忘れたけど、元プロ野球選手の息子が所属しているっぽいっすよ」
「もしかして、あのホームランバッターの? なんて名前だったかしら?」
「それはともかく、そのふたつの少年野球団は元はひとつの少年野球団じゃなかったか? 俺はガキの頃、所属していたんだ。ちなみに、俺は四番バッターだったんだぜ~☆」
「ふー、そうなのか……って、お前、いくつだよ? ふたつに分かれたのは、なんだかんだと十五年は前の話だぞ? あ、三ヶ月ほどで辞めちまったけど、俺も所属していたぞ」
「幹久は、そろそろ三十路……ぐえっ!」
「そ、それを言うなーっ! 俺は永遠の十八歳だァァ~~!」
「へえ、お前、三十路だったのか! プーックックック♪」
「ミ、ミケちゃんだって、元は……」
「う、それを言うな、それを!」
へえ、みるくはもうすぐ三十路のか、クックック♪ う、そういえば、俺も実際はもうすぐ三十路だったな……。
「雑談は終わり! 写真の男――柳原譲二を探すわよ!」
「お、おう、そうだな!」
アハハハ、年齢の話はともかく、写真の男――柳原譲二を探さなくちゃいけない。んで、クロベエの相棒こと太田辰巳が拉致された場所を発見しなくちゃいけないしな。
「ホントにいるのか、写真の男は……」
「今日はなんだかんだと日曜日だし、案外、公園内をスマホでも弄りながらフラフラしているかもしれないね」
「んじゃ、探してみっか……」
「ん、公衆トイレの前にあるベンチに座っている青いつなぎを着た若い男がいるけど、アイツじゃないな」
「アハハ、そう簡単に見つからないって!」
「わ、わわわわ、今トイレから写真の男が出てきたっす!」
「な、なんだってー! わ、本当だぁ!」
柳原譲二のよく出没する――ある意味、未確認情報だ。故に、そう簡単に見つかるわけがない。今いる浪岡自然公園の西口は人の多い場所しね――え、いた!? 公衆トイレから柳原が出てきた……だと! わ、本当だ! しかし、なんという偶然!
「うっ!」
「どうしたんだよ、ミケ? 急に顔色が真っ青になったけど……」
「わ、わからんか? すっげぇ嫌な気を感じたんだ……邪気ってヤツだ!」
「私も感じたよ、ミケちゃん! あの男が公衆トイレの中から出てきた途端、寒気が走ったし……」
「幹久は鈍ちんだから気づかないだけさ。私も邪気を感じたぞ、あの男から邪気を――」
あの男は公衆トイレの中でなにをしていたのやら? それはともかく、あの男が放つ激しいドス黒くて毒々してて、おまけにねっとりと絡みつく川底のヘドロのような禍々しい気――邪気に俺は気圧されてしまう。
「ん、仲間と合流したぞ。不良仲間って感じだな」
「ミケちゃん、柳原の仲間からも嫌な気を感じる!」
「なにィ! じゃあ、お仲間も邪神人なのか?」
「いや、アレじゃ蛇人間の類だ! 邪神人と化した柳原と結託している連中だろう」
柳原がふたりの男と合流する。あのふたりの男は蛇人間の類だ。柳原が放つ邪気とは毛色が違う禍々しい気を放っているしな。
「ん、さらに妙な女とも合流したわね。黒ずくめのいかにも怪しい女ね」
「あの女は財団Nの……」
「ムムム、茜! いつの間に!」
「沙希ちゃんにアンタたちの手助けをするように言われたのよ」
「フン、まあいい。それよりも厄介な連中が裏で蠢いてそうだな、茜……」
「うん、黒木さん……」
沙希と一緒にいた豹の茜が現れる。俺と愛梨以外は穏行の術を使い一般人には姿を見えないようにしていることは言わずもがな――と、それはさておき、財団Nってなんだ? みるくの相棒で使い魔の黒豹のテュポンの物言いだと厄介な連中らしいが一体、何者なんだ?




