第二話 俺、外道にお仕置きします。その14
「ぶべらっ!」
ドパァァァンッ! と、アイロデューテの鉄拳制裁を顔面に受けた佐藤という殺害した人間の生皮がかぶり、そんな佐藤になりすます異形の存在の一体は、身体の内側から跡形もなく砕け散る。うげえ、バケモノとはいえ、あの死ぬ様はエグいぞ、ヒィィ!
「くそーっ! コイツ、まだ再起不能にならん!」
「ご、ごああっ! 痛い、痛いィィ! だが、そんな攻撃では俺は死なんぞ、クソボケがァァ!」
「じゃあ、お前が泣いて謝るまで殴り続けてやんよ、でやーっ!」
チクショーッ! なんの加護も得ていない俺の攻撃じゃ篠原という人外野郎を再起不能にすることができない。その一方、ギリシャ神話に登場するオリンポス十二神の一柱である愛と美の女神アフロディーテご本人様を自称するアヒルのアフロディーテと合体し、超人と化した愛梨こと魔法少女アイロディーテの場合、ああいう連中の身体に外傷を与えられるどころか内側からも身体を打ち砕くことができる光の加護を得ているのが羨ましすぎる!
「一発一発じゃダメだ! 何度も、何度も 何度も……ぶん殴る!」
「ぐ、ぐえええっ……ギ、ギブアップ!」
「なんだと!?」
「許してくれ! 頼む、許してく……なぁぁんちゃってぇぇ! 死ねぇぇいィ!」
「コ、コイツ!」
「油断は禁物よ、たぁぁーっ!」
「ごぶっ……ぎゃごぉ……はびゃっ!」
ふ、ふう、危なかった! ついつい許してくれって言葉に惑わされて隙をつくってしまったぜ。もしもアイロディーテが篠原という人間になりすます異形のモノに対し、回し蹴りを放ってくれなかったら、俺は――。
「ミケちゃん、油断しちゃダメだよ!」
「お、おう、悪いな!」
「さて、残るは、あの女だけね」
「あ、ああ……」
篠原という人間になりすます異形のモノもアイロディーテの光の加護を受けた一撃によって砕け散る。さてと、残るは人間を魔物へと変化させてしまう悪魔の種こと魔王種の床苗に適合しなかったせいでオレオレ詐欺グループのボスである船越陽子だけであるが――。
「ありゃ放っておいても死ぬわね」
「え、それじゃ仕置きをする必要がないのかな、あっちゃん?」
「ま、今なら、あの首飾りについた種を――魔王種を破壊すれば命だけは助かるかもね」
「ん~……でも、あんな外道、死んで当然! ああいいモノに手を出したんだし、自業自得だよ。放っておいてもいいと思うわ。ミケちゃんも、そう思うでしょう?」
「あ、ああ……」
ボンッという軽い爆発音とともにアイロディーテは、愛梨とアフロディーテに分離する。しかし、アイロディーテに変身している時は妖艶な大人の女性って感じの姿だけど、合体解除し、元の姿に戻った愛梨は、地味で小柄で、おまけに気の弱そうな女のコなんだよなぁ。アフロディーテにかぎってはタダのアヒルである。そういえば、白鳥を自称していたな。
「くっ……やっぱり腑に落ちん!」
「ミケちゃん、なにをするの! ひょっとしてとどめを刺すとか?」
船越は両目をカッと見開いたままビクンビクンと身体を激しく痙攣させている。まるで陸揚げしたばかりに魚みたいだ。んで、アフロディーテ曰く、もうすぐ死ぬらしい――むぅ、なんだか腑に落ちない! あの女をこのまま死なすわけにはいかない! 生かし、罰を受けてもらう!
「俺は人を殺さない! コイツを生かし、その犯した罪を公する――それが俺の行う仕置きだァァ!!」
「あああっ! ミケちゃんが船越の首飾りから魔王種を引き千切った!」
俺は意を決し、船越の首飾りについている装飾品――魔王種を右手で鷲掴み一気に引き千切る! これで、とりあえず、あの女は死なずに済む!




