第二話 俺、外道にお仕置きします。その13
「おいおい、お嬢がまた苦しみ始めたぞ」
「つーか、最近、多くね?」
「ハハハハ、俺たちのような人間になりすますモノと結託しているし、そこらへんは仕方がねぇさ」
「ああ、なるほど! 俺たちのようなモノと長くいるせいで、そんな俺たち固有の性質の悪ぃ病気が感染しちまった可能性とか否めねぇしな」
と、ボスである船越陽子を嘲り笑うふたりの男の声が、オレオレ詐欺グループの事務所内から聞こえてくる。
「ああ、わかったぞ。お嬢が苦しんでいる原因が、クケケケ……」
「苦しんでいる原因がわかった? うおお、まさか!?」
「うむ、魔王種が発芽する間近ってワケだ。その影響で、お嬢は苦しみ悶えているんだ」
「おお、そうなのか! あ、お嬢の首飾りについた赤い手の形をした装飾品――魔王種が黄色の光を放ちだしたぞ!」
「あの光が青に変色した時、お嬢は人間を越えた存在――俺たちと同類である邪神の眷族へと進化する!!」
「「――ッ!!」」
俺は喉の奥で悲鳴をあげてしまう。おいおい、船越陽子の邪神に眷族化――魔物として新生するのも時間の問題じゃないか!
「が、がああああっ! がああああっ……身体が熱い! 私の身体は一体どうなってしまうのよ!」
「あ、お嬢、ご心配ありませんよ。単に、俺たちの仲間入りするだけなんで、そこらへんご安心を――」
「い、嫌よ! アンタ達みたいな人の皮をかぶった怪物の仲間入りするだなんて、があああっ!」
「ハハハハ、お嬢、それは皮肉っすか? まあ、すぐに慣れますって~☆」
「う、ううううあああああっ! 慣れるわけがないじゃないィィ! げ、げぶはあああっ!」
「おお、魔王の種の色が変化し始めたぞ……あれ? 黄色い光から赤い光にもどっちまったぞ、おい!」
「わお! あ~……こりゃ失敗だな」
「失敗!?」
「ああ、お嬢は適合しなかったんやな。魔王種を芽吹かせるための床苗として――」
「て、適合、うがあああっ! うがああああっ! 熱い、熱い、熱いィィ!」
いくら外道とはいえ、人の皮をかぶった怪物の仲間入りすることだけは拒否したいようだな――が、船越陽子の場合、魔王種の床苗としては適合しなかったようだ。さて、その場合、あの女はどうなってしまうのやら――。
「おい、篠原! お嬢はどうなっちまうんだ?」
「あ、死ぬ」
「あちゃー、当然の結果じゃん。つまんねぇ……」
「ひっでぇ物言いだな、佐藤! ま、仕方ないかぁ……んじゃ、お嬢、俺たちは失礼させてもらいます」
「おい、待てよ! あ、お嬢、生きていたら、また会いましょう! 俺たちは、いつでも〝あそこ〟にいますから――」
「うううう、篠原ッ……佐藤ォォ! ぐぎゃあああああっ!」
なるほどね。床苗として適合しなかったモノは死ぬ運命にあるワケだ。ある意味、当然の結果なのかもしれないぁ。
「さ、瀬戸と黒河と合流して、ここからとんずらしようぜ」
「つーか、お嬢をあのままにしておいていいのか?」
「放っておけよ。薬物過剰摂取の挙句、心臓発作を起こして呆気なく逝っちまったってことになると思うぜ。お嬢は危険薬物の常習者だったしよぉ、ギャハハハッ……な、なんだ、てめぇらはっ! うご、ぐぎゃばっ!!」
「悪いな、テメェらを逃がすわけにはいかねぇんだ!」
「ま、そういうこと! うらああああっ!」
おおっと、逃がさないよ! ボスである船越を見捨ててとんずらと洒落込む子分の男ふたり――人間の皮をかぶった人外野郎が、バタンと勢いよく事務所の出入り口の扉を開けた途端、俺が鉄パイプで、そしてアイロディーテが鉄拳を、そんな人外野郎の顔面目がけて叩き込む!




