第二話 俺、外道にお仕置きします。その12
「気のせいかな? 妙に空気が重いんだけど……」
「うん、おまけに変なニオイもする……」
気のせいならいいんだがなぁ、仕置きの標的であるオレオレ詐欺グループのボスである船越陽子+αが潜む雑居ビルの上の階へ進む階段をあがる度、空気が重くなっていく錯覚を覚えるんだが……おまけに、今まで嗅いだことのない変なニオイが充満しているぞ、ここ!?
「お、ここだ、ここだ!」
「ミケちゃん、声が大きいよ!」
「お、おお、悪い悪い!」
「まったく、穏行の術の欠点を忘れたわけ!」
「う、すまねぇ!」
さてと、オレオレ詐欺グループの外道共の事務所の前までやって来る。よし、穏行の術を行使中で姿は見えなくなってはいるけど、声までは消せないんだよなぁ。
「ミケちゃん、事務所の中から大声が聞こえた!」
「あ、ああ、近くで聞いたら鼓膜が破裂してしまいそうな女の金切り声だな」
「ふむ、中に入り込む前に、少し聞き耳を立てましょうか?」
「おう、そうしようぜ」
ズドンッ! と、烈ぱくした女の大声が響きわたる。ひょっとして、オレオレ詐欺グループのボスである船越陽子の声? うーん、とにかく、連中の事務所内に入り込む前に様子を見ておくべきかな。内輪モメでも始めたっぽい気もするしな。
「う、うわ、また耳障りな大声が響いてきたな! つーか、さっきの大声もそうだけど、改めて聞くと、あの大声は悲鳴の類いじゃね? 冷蔵庫とかテーブルの角に小指でもぶつけたのか?」
「あの痛さなら十分すぎるのほどわかる。女神である私でさえ、ギャーと思わず悲鳴をあげてしまうレベルだわ」
「ミケちゃん、その例えは、なんというか……ちょ、あっちゃん、なに納得しちゃってるのよ!」
「あの激痛がわからないの、愛梨? それに忘れた? 昨日、自宅で合体した時、私室の入り口のドアの角に小指をぶつけて悲鳴をあけたじゃん……アレはトンでもなく痛かったわ!」
「ううう、痛覚は共通しているし、そこらへんは仕方ないじゃん! ま、まあ、すごく痛かったけどさぁ……」
「アハハハ、お前らってホントお笑い芸人みたいだなぁ……」
「そんなことは後回しっすよ、ご主人様! 事務所の扉の硝子が一部が割れていて、その隙間から中の様子がうかがえるっす!」
「お、おう、じゃあ、その割れたドアの硝子の隙間から中の様子を覗き見してみようぜ」
とまあ、アリスが、そんな覗き穴的なモノを発見する。ちなみに、大きさは一円玉程度で、手の平サイズの小さな妖精――いやいや、女性型夢魔のアリスでも中に入り込むのが無理の大きさだ。やれやれ、そんなこんなで、大きさ的に中を覗き見できるのはひとりだけだなぁ。
「髪の長い若い女が両手で頭を抱えながら苦しんでいる! アイツが船越陽子なのか? ん、首飾りのようなモノが赤く光っているんだが……」
「ちょ、私にも見せないよ! あ、ホントね。髪の長い若い女が苦しみ悶えているわ……んんん、あの首飾りは、まさか!?」
「あっちゃん、なにか知っているの?」
「近くで見ないとはっきりしないけど、あの首飾りは……魔王種かも!?」
「魔王種?」
「ありていに言うわよ。あれがモノで発芽した場合、持ち主は――魔物化する!」
「な、なにィィ!」
うげぇ、不味いモノを所持しているな、あの女!? てか、赤い光を放っていたけど、ひょっとして発芽が、もうすぐってことを示す信号かもしれない!




