第二話 俺、外道にお仕置きします。その11
「美神流……飛天脚よ!」
「は、はあ……」
俺を踏み台にして上空に跳びあがり、そして対象目がけて急降下するラ○ダーキックみたいな蹴りには、そんな名前があったのね。てか、美神流って流派があったのか!
「くくく、黒河ァァ! が、がふぅっ……」
「武器さえあれば、俺だって――っ!」
スキンヘッドの大男改め蛇人間が、ダッと踵を返し逃げ出そうとする。異形の人外とはいえ、分が悪いと判断するあたりは、俺たち人間と同じなんだなぁ――だけど、逃がさないよ! 俺は丁度いい具合に地面に落っこちていた鉄パイプを拾うと、そんな蛇人間の脳天の目がけて振りおろす! ふ、ふう、ギュルンと白目を剥いて再起不能だ……このまま動くなよ、絶対に!
「がぎゃぎゃがあああっ! 死ねィィ!」
「うわああ、蛇人間が立ちあがった! チクショー、まだ再起不能じゃなかったのかよ!」
「が、がふぉ……おごご……」
へ、蛇人間が不気味な大声を張りあげながら、ガバッと勢いよく立ちあがり、両腕を広げた状態で飛びかかってくる! コ、コイツッ……ま、まだ再起不能じゃないのかよ! だが、そんな俺に対し、すぐに救いの手を差し伸べるとばかりにアイロディーテが、シャッと胸に谷間に隠して持っていた刃渡り二十㎝ほどのナイフを投擲し、それが蛇人間の額にクリーンヒットする。わ、何故かは知らんけど、蛇人間がドンッと吹っ飛んだぞ!
「危なかったわね。つーか、コイツらを完全に再起不能にする場合、普通の武器じゃダメよ、ミケ!」
「ミケちゃん、危なかったよ! あっちゃんがアサメイを投げていなかったら――まあ、ミケちゃんのことだから心配ないとは思うけどさ~☆」
「おいおい、心配してるのか、それとも心配してないのか、なんだか微妙な物言いだなぉ、それ……」
「ま、とにかく、私の専用武器のひとつ――美神刃が刺さったモノは、ああいう人間になりすましている不浄な輩だった場合、その身を浄化するわ!」
「うわああ、蛇人間の身体が真っ白く変化していく!」
へえ、あのナイフは美神刃という専用武器なわけね。んで、蛇人間のような不浄な身体を浄化する作用がある……だと!? ああ、蛇人間の身体が真白くなっていく!
「ああ、心が洗われていく……うごっ!」
「わ、蛇人間の身体が崩れ落ちた!」
「当然よ。浄化されたわけだし――」
「浄化かぁ、なんだか幸せそうな最期を迎えていた気がする」
蛇人間は崩れ落ちる前に、パアアアッと幸せそうな笑みを浮かべていた気がする。幸福感を味わいながら逝けたってところかな?
「な、なあ、アイツらって何者なんだ?」
「蛇人間や蜥蜴人間のことかしら?」
「私もそれを訊きたいわ、あっちゃん」
「うむ、じゃあ、ありていに語るわ。アイツらはクトゥルフ眷属邪神群と呼ばれる邪神の仕える異形の走狗ってところね。蛇や蜥蜴に類似した特徴があるけど、爬虫類とはまったく別物だと考えていいわ」
「アイツらは邪神に仕える連中ってことなのか!?」
「ま、そういうことよ。一度、言えばわからない? んで、沙希から聞いてない? 魔法少女の使命のひとつとして、アイツらのような不浄な連中な叩き潰すことだってことを――」
「「き、聞いてないかも……」」
き、聞いてないぞ! 魔法少女に、そんな使命があったなんてことを――沙希の奴、肝心なことをなんで教えないんだよ!
「ね、ねえ、あっちゃん、もしかして標的のボスは邪神が顕現した存在だったりするわけ? 人間になりすます蜥蜴人間や蛇人間を従えていたわけだし……」
「さあ、そこまではわからないわね。人間の中には奴らと結託している魔術師もいるしねぇ」
「そ、そうなのか! と、とりあえず、再び穏行の術で姿を消そう。そして、オレオレ詐欺グループのボスである船越陽子に仕置きだ!」
標的のオレオレ詐欺グループのボスである船越陽子は邪神が人間の姿に顕現した存在なのか? それともクトゥルフ眷属邪神群に属すモノどもと結託している魔術師なのか? そこらへんを見極めなくちゃいけないな。よし、なんだかんだと、連中の巣窟と化している雑居ビルの上の階へ行くぞ!




