第二話 俺、外道にお仕置きします。その8
「つ、ついに来てしまったぞ!」
「うん、ここが標的の外道共が巣食うという雑居ビルだね、ミケちゃん!」
「ご主人様、偵察なら任せてほしいっす!」
「しかし、アンタたちまで来るとはね。まったく、物好きもいいところだわ」
「仕置きのお手伝いです!」
「右に同じく! 私も手伝います!」
俺とアリス、愛梨とアフロディーテ、そして元人間を自称するマルチーズの田中と依頼人――いや、依頼猫のサーシャは、S市の繁華街こと浪岡商店街アーケードの路地裏にある外道共の巣窟と化している雑居ビルの前までやって来る。
「あ、誰か上の階から降りてきます!」
「むぅ、外道の巣窟の中に入る前に一難ありそうな予感がするぜ」
「ミケちゃん、師匠から教えてもらった穏行の術を使いましょう!」
「お、おう、そうだな! 妖狐流呪術の初心者用教本を持ったな? 上手く消えろよ、俺の姿――っ!」
俺は地下旅館の小狐丸の女将――改め、綾音師匠から授かった妖狐流呪術の初心者用教本を肩からぶらさげる鞄の中から取り出すと、そんな妖狐流呪術の初心者用教本に記された自身の姿を見えなくする術のひとつである穏行の術を発動させる呪文を唱える。一応、綾音師匠から短時間だが訓練は受けたつもりだけど、行使するのは、これが初めてなんだよなぁ。上手く周囲の風景と姿が一体化してくれることを祈っておくかぁ!
「おお、姿が消えていく! 穏行の術は成功したようだぞ!」
「シッ! 姿は見えなくても声は聞こえるのよ、ミケちゃん!」
「お、おう、そうだったな! 悪い悪い~テヘ☆」
穏行の術は姿を見えなくすることができる一方、声や足音などはシャットダウンできないという欠点があるんだよなぁ。
『ん、テレパシーで話せたりしない?』
『あ、ホントだ!』
『使い魔のあたしのおかげっすよ、ご主人様! あ、そういえば、アフロディーテさんも使い魔っすよね?』
『私は使い魔じゃないわ! 愛梨との関係は母娘みたいなものよ! そこらへん間違えないでほしいわ!』
『わあ、魔法少女ってすごいんですね! 私も人間になりたくなりました。小狐丸の女将に人化の方を教えてもらっちゃおうかな~♪』
テレパシーと知っての通り、言語、表現、身振りなんかを介さず、直接、自分の意思を相手に伝達できる俗に言う超能力の一種である。ま、そんなテレパシーを使えるようになったのは使い魔のアリスのおかげらしい。さて、アフロディーテ曰く、愛梨とは母娘的な関係らしい。アヒルと人間の母娘ってヘンテコリンな組み合わせだな。
『そんなことより、皆さん! いかにも性質の悪そうな男がふたり上の階から降りてきましたよ」
超能力の一種であるテレパシーを使えるようになったことはともかく、オレオレ詐欺という名の犯罪行為を働く外道の巣窟と化している雑居ビルの上の階から、小柄な金髪男とスキンヘッドの大男が降りてくる。どっちも強面で粗暴な性格をしていそうだ。歳は二十歳かそこらだろうか?
「おい、とんずらするってマジかよ!」
「もうやっていけねぇよ! お嬢は……悪魔だ!」
「ああ、それはわかる! 最近のお嬢は前にも増して毒婦って感じのクソ女になっちまったしなぁ」
「きっと、アレを手に入れたせいだ! タダでさえおかしな思考の持ち主だっつうのに……」
「キ、キ○ガイってヤツだなっつーか、この間の金は、まだお嬢に渡してねぇし、それは半分に分けてふたりでとんずらと洒落込むか?」
「なんだよ、まだ木村って婆さんから騙し取って八十万円をお嬢の渡してなかったのかよ! よし、そいつを早速、分けてくれよ。俺はコイツを使って実家がある沖縄にでもとんずらさせてもらうぜ!」
『なんですって――っ!』
『く、コイツらだったのか!』
と、そんなふたりの男の話し声に、俺たちは耳を傾ける――ん、愛梨とサーシャの様子がおかしいぞ!? 声色に怒りが彩っているような気がするけど、一体どうしたのやら?
『おいおい、どうしたんだよ?』
『あの男が言っている木村の婆さんっていうのは、私の飼い主である春子お婆ちゃんのことなんです!』
『なるほどね! あのふたりの男を仕置きすれば八十万円を回収できそうね』
『ああ、そうだな! まずは、あのふたりの男に仕置きだ!』
さて、あのふたりの男をまず先に仕置きする必要がありそうだ。それと同時に、春子お婆ちゃんとやらから騙し取った八十万円を回収させてもらうぜ!




